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死は救済 天国 地獄

作者: 剥離


空中を旋回する鴉、目の前を横切った愛されフェイスの黒猫、引いたおみくじは大凶──なんて不吉の盛り合わせみたいなことがあった日だって僕が期待するような出来事は起きずに簡単に過ぎ去って、おかげさまで今日の始まりはいたく平凡だった。あぁ嫌だ、いつになったら僕は救われるんだっけ、と思いながら呆然と駅のホームに立ちすくんでいたら電車を一本乗り逃してしまい、もしこれがあの世行きだったなら惜しいことをしたなと嘆息する。僕は取り立てて何の宗教も信仰していないし、だから死んだあとのことなんてわからないけれど。こんな生き地獄を耐え凌ぐような毎日では、きっと死は救済だと、むしろそれ以外に方法なんて無いんだと、何となく考えてしまうのは必然だろう。なんてことをもしこの場で口さがない他人に伝えたら、じゃあそこの線路に今から飛び込めばいいじゃん。なんて言ってくることは想像がつくけれど、おまえらはそうしたらそうしたで電車が遅れて最後まで他人様に迷惑をかけやがってだの何だのと文句を言うくせに。揚げ足取りばっかりしてんじゃねえよ、頼むから早く死んでくれ。

というか──そもそもの話、僕の毎日が何故こんなに地獄めいているのかと言えば、それこそ他人様たちのせいなのだ。どいつもこいつも馬鹿ばっかり! 僕が口を開かなければ大人しそうなやつだと侮って、かといって喋れば遠巻きにしてきて、もう大学生、みんな20代だというのに10代のころから変わらぬ幼稚さなんだから反吐が出る。

でも、こんな煩わしさをやり過ごすばかりの僕の命に、ひとつ価値があるとするならば。

『おまえさえいれば、この場所だって天国なのかな』

憂鬱に眺めていたスマートフォンの画面の上部に、ときどき届く通知があることだ。送ってきている相手は、もう2年は毒親に監禁されている親友。

『待ってろ、今に地獄に連れ出してやるから』

この返信は僕にとって誓いなので、これを違える気はなく、本当に近々、どんな手を使ってもこいつの家に押し入ってやろうと考えている。

そして多分、僕はこいつを置き去りにするのだ。

──こいつならきっと、この地獄を愛せるだろうと信じて。

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