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6.第8次公開実験の報告

 アルス時間で2024年4月28日、予定通りに第8次公開実験は実施されました。


 フォギング・セル観測システムによる情報抽出誤差は従来の観測システムと同等、またはそれを下回る値に抑えられ、USO世界深部に対する観測を実現しました。

 表層の観測中には発見できなかった多くの事象データを取得し、セクター2、セクター3による解析の結果、世界構造に関する重要な知見を得ることができました。

 従来、ある時点を境として急激に世界学的エントロピーが減少する事象について、それ自体が流転的終末形式の、すなわち世界そのものが生来持つ必然の滅亡であると認識していました。しかし、それを引き起こしうる要素の特定が難航し、別の要因による滅亡が繰り返されている、とする言説が徐々に支持されるようになっていきました。


 今回の観測実験では、観測者不在点(ポイント・ネモ)となっていたループ上の最終時点付近へのアクセスに成功しています。事前の予想において、そこには確率の揺らぎだけが残された完全な無が広がっているとされており、実験の結果、その予想が概ね実態を正確に捉えていたことを確認しました。

 それだけではなく、このような状況を繰り返し発生させている要因も、同時に捕捉することに成功しました。要因Xは、数億年から数十億年周期で対象世界を流転させ、肥大化させたのちにほとんどすべての可能性を収穫する寄生型の上位存在です。

 このような振る舞いは平時において世界自体のシステムに対する干渉をほとんど見せることなく、収穫期に初めてその動作が顕在化すること、そしてその短い顕在化期間において内部定義空間を瞬時に覆い尽くす事象強制力の強さから、ライタールーム方式による観測が拒絶されていたものと考えられます。


 観測台はこれらの事実を基に、対象を大規模エントロピー食性生物「ウロボロス」と同定し、対策プロジェクトを発足、この任務の中軸を成すチームとして、USOタスクフォースを改組します。彼らは脱出不可能な同状況から世界を救出する技術の開発にも着手し、その重要なモデルケースとして、当該事象への対応に当たります。


 上記の経緯により、USOタスクフォースは「プロジェクト・エステン」と改称し、同名のプロジェクトの主軸研究チームに指定されました。チームの責任者として、セクター2管理官ルネ・スヴェストルを兼任させ、オブザーバとして最高意思決定機関ヴォルテクス構成員、主軸観測者を配置します。

 当プロジェクトの最終目標は、重要警戒対象「ウロボロス」討伐手段の確立です。


Project Østen (プロジェクト・エステン)

・"Østen"は"Ø"のフォネティックコードです。「円を切る」文字であることから、本プロジェクトの目標に相応しいものとして選定されました。

・また、"Østen"はノルウェー語で「東」を意味し、時間線上の未来を示す方角を冠することにより、このプロジェクトが「ウロボロス」によって奪われた未来を取り戻す手段に辿り着くことを祈願します。

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