それは美しく、優しい
マンションの10階、時刻は0時13分。コンビニに行こうと扉を開け、エレベーターに向かおうと右に曲がった。
少し遠くに人影が見えた。
手すりに体重をかけ、登ろうとしている女性だった。咄嗟に声をかけ、君が死んだら悲しむ人が必ずいる。死ぬ前に、家族や友人などに相談してはどうか。と言ってみた。 女性は泣きながら、ありがとうと僕に言って去っていった。
思いとどまらせることが出来たようで本当によかった。
自宅マンションから飛び降りようとしていたら、運悪く人が出てきて、見つかってしまった。口を開けば「君が死ねば悲しむ人が〜」とか、「家族や友人に〜」とか、綺麗事ばかり。このまま飛び降りを強行したところで失敗するだろうと思い、適当に同意したフリをして帰ってきた。
案の定、家のドアを開けた瞬間に親がドタドタと音を立てながらやってきて、包丁を投げつけてくる。「俺の飯は。風呂は。酒は。タバコは。どこへやった。」
別にどこにもやっていない。飯は食いたければ作ればいい。風呂は入りたければ湧かせばいい。酒もタバコも自分で買ってくればいいだろう。
「… 今からやります、ごめんなさい」
「許されることだと思ってるのか!!!お前はいつも-----
うるさい、、、うるさい、、うるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさい
先日、唯一の友達が交通事故で亡くなった。
母だって私が小さい頃に逃げてから、どこに行ったかも分からない。
コイツが寝たら、適当に外に出よう。誰にも邪魔をされない場所で、首吊りでもしよう。出来れば苦しみながら死にたくは無かったけれど。