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カザルスの処分と危険なマリー


「……で? ちょっと良い感じになったから、王太子妃教育にかこつけてエルシア嬢を城に住まわせる事にしたと」


 ケインはクロードの自室と隣り合う客室を指差す。


 

 明日のエルシアの引っ越しに備えて、侍女達が掃除やら家具の設置やらに忙しく隣はドタバタと賑やかだ。



 呆れた目でケインはクロードに言う。


「はぁ~~、殿下。念の為に言っておきますが、同意なくエルシア嬢を押し倒したりしたら犯罪ですよ。いくら敏腕側近でも庇いきれませんよ」



 眼鏡の端をクイッと上げて注意するケイン。



「そんなことするもんかっ。人を何だと思ってるんだ!」


 思わず反論するクロードであったが。



 ケインが懐から出してきた稟議書を見て、押し黙る。



「うっ……そ、それはっ」


「権力のある男は怖いですよねぇ、殿下。恋敵は辺境に左遷ですか」



 そこには、カザルスが隣国との境を守る警備管理監督者として1年間の任期に当たることが記されていた。


 だが、クロードの名誉のために付け加えると、これは彼だけが決めたことではない。




 公爵がお披露目パーティーの後、謁見の間にて正式にカザルスの弟を次期当主に変更すると申立てた。


 その際、カザルスの今後の身の振り方について王家と公爵家で協議が持たれたのだった。




「……仕方ないだろう、誰も要らないと言うんだから」


 クロードは決まり悪そうに呟く。



 跡取りになれなかったカザルスが、貴族として生きる道は三つだ。



 一つ目は、当主の弟を兄として支える道。


 これは、次期当主の弟から却下された。

 おまけに自分が公爵になったら、兄は勘当する予定だと言う。



 二つ目は、恋人であるマリー男爵令嬢に婿入りする道。


 これも、男爵から断られた。


 勘当された元公爵子息など、扱いにくくて迷惑だそうだ。


 あれだけカザルスに執着していたはずのマリーも、異論は唱えなかったと言う。




 そして、三つ目が自らの功績を得て貴族として叙爵される道。


 その方法として、諍いの絶えない辺境の地が選ばれたのだった。



 勿論、もっと容易に叙爵してやる方法もある。

 ――例えば、クロードの側近にして大きな仕事を任せるとか。



(……だが、俺はそんなお人好しじゃない)



 それに、クロードは思う。


 カザルスはあの自己中な性格を直せたら、それなりに使い物になる。


 だからこそ、命懸けの荒治療のつもりだった。


 任期を1年間にしたのは、クロードなりの優しさだ。



 ――まぁ、わざわざ勤務先を辺境にしたのは、エルシアから遠ざけたいという理由が大きいが。



「まぁ、恋敵は自滅するなり、まともになるなり勝手にするでしょう。それよりも気になるのはマリー男爵令嬢ですね」



 そんなクロードの考えはお見通しのケインは、話題を変える。



「……あの女は男爵に軟禁しろと伝えろっ」



 そうなのだ。


 マリーはカザルスが公爵になれないと知ると、あんなに執着していたはずなのにアッサリと見切りをつけたらしい。



 それは、まぁいい。


 問題なのは、標的をクロードに変え、彼に会おうと城の前で待ち構えていることだった。



『エルシアより、マリーのが女として上よっ』



 おまけに、道中でそう叫んでいるのだから頭がおかしくなったのかもしれない。



「分かりました。エルシア嬢も、伯爵家にいるより城の方が安全ですしね」


 ケインの言葉に頷くクロード。



 そこに、控え目なノックの音がする。


 コンコンコン


「あの、殿下とケインさんに引っ越しのご挨拶に参りました」


 扉を開けると、そこには恥ずかしげにはにかむエルシアがいた。


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