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第4話 入れ替わりの生活:蓮二の場合

 ぽけーっと1、2時間目の授業を受けて、ようやく2時間目の放課。

 授業中は誰かに話しかけられる事も無いので、つつがなく授業を終える事ができた。


 というわけで。


「おトイレに行ってきますわ悠花さ〜ん?」


「ちょちょちょ、ちょっと待ちなさいよ」


「はい?何かしら?」


「一旦そのキモい喋り方をやめなさい。と、トイレ?貴方正気?」


「正気も正気だよ。どうせあいつも俺のイチモツをーーー」


「やめろ!」


「いでぇぇぇっ!!!?」


 全力で鳩尾にパンチ喰らわしやがったぞ!?


「待て、待てよ!」


「キモいキモいキモいキモいキモい!最低最悪ゴミ男!」


「待てって!だから、これは了承の上なんだって!」


「は、はぁ!?何言って………」


「来い、来い!」



 俺は悠花の耳元に口をやった。



「あいつにはあいつ、俺には俺の生活があるんだから、トイレ行かなきゃならないのは俺もあっちも同じだってこと!」


「それでも、なんとか我慢して……」


「甘い事言うなって!美礼が漏らす事になるんだぞ!?」


「うぐぅっ………!それは、ダメね……」



 俺と悠花は離れた。



「………わかった、確かに私の考えが足らなかったわ……まぁ、何も知らない事にしておくわ………今後のために……」


「な?な?………では、ごきげんよう?悠花さん?」


「………美礼はそんなんじゃ無いってば」


 と、俺は悠花を後にして教室を出て、トイレに向かう事にした。

 まぁ、トイレに行っておかない事には何も出来ないからな。聞くところによると、女子って割と我慢できないらしいし。




 教室を出て曲がった先に、女子トイレがある。


 それにしても、俺もこのスカートで歩くのも慣れたもんで、後は喋り方とガニ股さえ気をつければもうまるっきり女子にしか見えないだろうな。


 喜ぶべきか、否か………


 まぁ誰も、女の子の体に男の人格が宿ってるなんて思わないよな。

 てか、言葉にしてたらなんかとんでもない事してる気がしてきたぞ?


 いやでも、美礼がお願いしてきたんだし?あでもでも、側から見れば俺が変態って事になるんじゃーーーー



「危なぁぁぁぁい!!!」


「は?」


 俺の反射神経じゃなれば反応できなかった。いや、美礼の反射神経なのか?まぁどちらでもいい。それくらい余裕があったって事だ。


 時間にして数秒。

 だが俺は確かに何が起こったか理解したのだ。



 男子が、紙の束を持って階段から落ちて来ていた。


 まさにその瞬間だったので、俺は避けて、男子生徒を片手キャッチ………しようとしたけど出来なかったので全身で抱き抱えるようにキャッチ。


 紙束はバサバサと地面へ落ちていった。



「おい、ちゃんと下見て歩けよ、危ねぇな」


「え?え、え?………えぇ?」


 男子生徒は俺、ていうか美礼のような華奢な女子に抱き抱えられて困惑を通り越して理解不能になっているようだった。


「ほら、立てるか?」


「え、え?あ……た、立てます」


「てかごめんな?君が運んでたプリントは流石に受け止めれなかったよ。一緒に拾うから許してね」


「え?あ、はい……?ありがとう、ございます?」


 俺は一緒にプリントを拾ってあげた。


「ほい、これで全部?ごめんな?ホント」


「あ、ありがとうございました………多分、先輩ですよね?」


「そっか、君上から来たんだもんね」


 俺達がいる3階は高校2年生の教室がある階で、俺達の上の4階に高校1年生がいるのだ。


 だから、そこから来たって事は、高校1年生って事なんだろう。


「よしじゃあ、手伝ってあげるよ」


「え!?いや、いいです、いいですって!いいですよ!本当に!」


「まぁまぁ先輩に任せとけって!」


「えぇ………じゃあ、よろしくお願いします………」


 うむうむ、先輩と言われちゃあ後輩に優しくするしかないよな。

 というわけで俺は可愛い可愛い後輩君のお手伝いをする事にした。



「じゃあ俺半分持つな」


「え!?女の人にそんな任せられないですよ!」


「女の人?………あ」


 そこで、俺はめちゃくちゃ大事な事に気づいた。

 俺が美礼の体であるという自覚はあったけど、完全に男の振る舞いしちゃってたぁ………


「………ううん!うん、うん、私に任せておきなさい」


「?」


「いいから!」


 と、俺は半ば強引に半分受け取って、階段を駆け降りた。


「って、目的地どこだっけ?」


「あ、職員室です」


 職員室って、2階だな。すぐそこだけど、こうやって手伝う事に意味があるんだよな、うん。


「よし後輩くん!ついてきなさい!」


「え、え?は、はい!」


「ふふ、なんか可愛いなお前!」


「えぇぇえ!!?」


 うぉ、何をそんなに驚いてんだこいつ?



 ★☆★☆★☆



 俺達は職員室にプリントを運び終えた。


「あの先輩、ありがとうございました」


「おうおう、いいってことよ!」


 なんかもう男感MAXになってるけど、どうせもう会わないだろって事で、俺は普通に接してしまっていた。


「じゃあ、これで」


 トイレ行きたいしね。


「あ、待ってください!」


 だが、俺はトイレに行きたいっていうのに後輩君に呼び止められてしまった。


「あ、うん、今じゃなくてもいい?」


「いや、今がいいです!」


「………そう?」


 なんかもう有無を言わせない感じがあった。まぁトイレならまだ我慢できそうだしいいけどさ。


「あの、先輩って彼氏とかいますか!?」


「は?………いない、と思う」


「思う?」


「あ、ううん?いない、よ?………多分」


 だって俺美礼じゃないもん!

 とは事情説明できず。


「まぁいいか……で、いない、なら……欲しくはないですか!?」


「欲しくは………うーん、どうだろ」


 いやいやいや知らんよ、知るわけねーだろ!これこそ俺美礼じゃないから分からんよ!

 って言いてぇ………!言いてぇ………!


「そろそろいい?私、トイレ行きたいんだけど?」


「うわぁぁ!ご、ごめんなさい!」


「?………まぁいいや」


 なんかダメなこと言ったか?

 どっちでもいいことなので、俺は一足先に3階に戻ってトイレに行く事にした。


「最後に、名前だけぇぇ!」


「名前?あそっか。私はとき………綾藤美礼って言うんだよ。よろしくねー。そいじゃ」


 あぶねぇ、俺今研野蓮二じゃないんだったわ。

 やべ、俺の方が名前聞いてないじゃん、けど、どうせもう会うことなんかないか。


 と、俺が階段を上がっている最中。


「ちょ、ちょっと、綾藤さん!?今の、今のって!」


「え、え?ど、どうしたの?」


 突然後ろから女の子に話しかけられた。動揺して、男っぽい感じになっちゃってないよな?


「今のって、あの1年生でバスケ部レギュラー、バスケ部の貴公子の三品永遠みしなとわ君でしょ!?」


「1年でレギュラー?」


 なんだよそれ、ちょっと羨ましいぞ?それどうちのバスケ部が弱いのか?どちらにせよ、実力者なのかもしれない。


「ていうか、バスケ部の貴公子って何?」


「えぇ!?知らないの!?見ればわかるじゃん、あのスタイルといい顔面といい、守ってあげたくなるようなゆるふわな雰囲気といい!!」


「はぁ、ゆるふわ……」


 ゆるふわって事は、ナヨナヨしてるって事か。なんか俺そう言うやつは嫌いなんだよな。もっと真面目で落ち着きのあるやつが好きだな。


「綾藤さんホントに興味ないのね……あ、そっか、ふーん、そうだもんね。綾藤さんは、ね………いるもんね、1人?」


「ん?何の話?」


 なんかよくわかんない事言われたぞ?


 てか、あいつバスケ部の貴公子とか呼ばれてんのかい。そういえば確かにイケメンだったかもしれないな。


 じゃあなおさら敵だな。イケメンってだけでチヤホヤされやがってヨォ、許せねぇよな。


 ていう現実逃避的な思考をしながら、俺は1人、女子トイレに向かうのだった。

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