第2話 放課後の過ごし方:蓮二の場合
「た、ただいま〜」
俺は美礼の体に入ったまま、美礼の家まで帰ってきた。
勿論、外で待つ方法もあったんだが、こんなヒラヒラしたスカートで外を出歩くなんて、男の俺からしたら考えられない……
しかし、美礼の家に来たのなんていつぶりだ?前来たのは美礼の体調が悪かったけどどうしても授業を受けたいという事で俺の体を貸した時だから………
半年くらい前か?
「あー、おかえりなさい」
リビングから美礼のお母さんの声が聞こえてきた。
まぁ、美礼の家には何回か来てるから、大体のルールだとか家の間取りだとかは分かってる。
帰ったらまず手を洗わなくてはいけなかったはずだ。
洗面所の場所も分かるので、俺はそそくさと洗面所に向かい、手を洗う。
洗面所も中々清潔で、美礼のお母さんの性格が少しだけ知れるというもので、ちゃんと綺麗に掃除してるんだなぁって事思った。
手を洗ってタオルで手を拭く。
よし、手を洗ったぞ。
ーーーさて。
完全に順序が逆だが、やらなくてはならない事が、一つあるんだ。
こんな事、手を洗う前にしろよって話なんだが………
「………トイレ行きたい」
誰に向けてか、俺は自分の思いを口にした。
いや、やめたほうがいい事は分かってるんだよ?けどね?美礼の体的にも、トイレを我慢するのって、良くないと思うんだよね、俺は。
てか、美礼も分かってるだろ、多分。俺がトイレ行く事。
だってもう俺、4時間はトイレ我慢してるんだよ?
背に腹はかえられんというわけで、俺はトイレのドアを開けた。
中には、純白の洋式トイレが鎮座していて、誰かに使われるのを待ってるみたいだった。
俺が近づくと、自動で蓋が開く。
………まぁ?美礼の体でトイレに行くのはこれが初めてってわけじゃないんだけど?いつもと勝手が違いすぎて、未だ感覚に慣れないっていうわけで………
俺は目を瞑って、スカートの中のパンツに手をかける。
それをすっと下ろして、上を見上げてトイレに座った。
所在なくなった俺の手は、勿論耳元へ当てられ、音が全く聞こえないようにする。
だけど、体内の感覚はどうやっても感じてしまうというわけで。
「………うっ、うぅっ………」
じわじわ、と近づいてくる感覚が来て、それが一気にーーーー
★☆★☆★☆★☆
トイレを流した時、俺の精神は疲労しきっていた。
体の疲れはほとんど無いのに、心の疲れだけで寝込んでしまいたいくらいだ。
「………何してんだろ、アイツ」
時間は4時を指していた。
それでも一向に連絡が来ないって事は、俺にこのまま美礼の家に泊まってけって事なんだろうか。
と、そんな時、スマホが鳴った。
着信の名前を見ると、『悠花』とあった。
とりあえず、出る事にした。
『もしもし?蓮二、でいいんだよね?』
「おう、なんだよ?」
『アンタって、彼女とかいたっけ?』
「彼女?今はいないけど?」
『今はって、やな奴。さすがサッカー部様は違いますねー』
「別に?サッカー部ってだけで告白して来る女の子がたまにいるだけだよ。付き合って、すぐ向こうから振ってくるだけだよ」
サッカー部レギュラーってだけで、まるで俺がカッコいいみたいに錯覚してる女の子達がこれまで何人か告白に来た事はあるが、付き合ったら付き合ったでなんだかんだ言われて振られるんだ。
モテてるって言うよりも、いいように使われてる感じすらしている。
『………まぁいいわ。じゃあ、今仲良い女の子とかもいないわけね?』
「そうだな。ちゃんと話すのなんて、悠花か美礼くらいのもんだな」
『ふぅん、そ。ならいいの。貴方が見知らぬ女子と遊びに行ってる姿を見たって聞いたから、もしかしてアンタ、女子との約束をすっぽかして美礼と入れ替わったんじゃないかと思ってね』
「なんだそれ?なんかの見間違いじゃないのか?」
『そうね。ごめんなさい、切るわ』
「おう、じゃあな」
そこで電話は切れた。
見間違い。悠花にはそう言ったが、俺にはわかる。それが、美礼の言っていた用事って事なんだろう。
でも、俺にも悠花にも隠すって事は、何か後ろめたい事があるんだろうか?
でも、後ろめたい事ならば、俺の体を使って用事を済ますのはリスクがありすぎると思うんだが………
まぁ、考えても分かんないからな。隠したい事を無理に詮索するのは良く無い事なので、俺はとりあえず、やる事もないので制服のまま寝ることにした。
その後俺の体が返ってきたのは、夜の7時くらいだった。