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Flower.

                   

 自転車で駆けぬける朝


 薄衣のような緑にまじって

 華奢な軆の薄紅色が

 自らを誇るように艶やかに

 どこまでも無垢に咲っていた

         

 透ける陽ざしのそのしたの

 芽吹く前の裸樹の隣で

 まだ枯れてはいないのよ

 と叫ぶがごとく

 独りきりの胸をはる

          

 一瞬の光景はすでに遠く

 僕は北風に背筋を丸め

 おざなりにペダルをこいだ

 相変わらず、革靴が擦れて痛いし

 スーツは風を通して寒い          

 いらつくようなざらつくような

 どうしようもない気分が近い

           

 ああそうかと僕は思う

 この苦しさは たぶん

 あの凛としたたたずまいに

 崇敬の念を抱いたからだ

         

 世界で最後の一輪になったとしても

 あの薄紅の彼女ならば

 胸をはることを止めないだろう

 そんな確信に僕は笑う

      

 こんな戯言など

 すぐに忘れてしまうだろうか

 それとも案外覚えているだろうか

 どちらでもいいことだ

 日常には何の関係もない


 それでもきっと僕は

 彼女が散ってしまった後も

 視界の片隅に花咲みを想う

                                                                                                                

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