Prosaic - II
これから、1秒後でも、明日まででも、100年後まででも、
生きてる限りさびしいのは消えないんだろう。
さびしいから、彼らに寄り添いたいのか、
彼らに寄り添っていられるのが幸せで、さびしくなるのか。
両方だとして。
結局、
誰かのためになんて理由で生きていく気にはなれないんだろう。
私は。
今日も明日も明後日も、100年後も、彼らが笑っていられたらいいと勝手に思って
そのためにできることを勝手に考えて勝手にやってみてるんだろう。
そんで、それは結局。
とんでもなく浅くて足りないんだろう。
田中希美『月灯の路』
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殺してやろうと思った
気に入らないヤツは全員
殺して殺して殺しつづけてやろう
そしたら、楽になれるんじゃないかと思った
でもな、逆なんだ
殺しても殺しても、気に入らないヤツは現れる
それじゃ、意味ねぇじゃん
未成年がまた人殺しました
そりゃ大変ですね。動機は?
へー、かわいそーに
でも罪は罪ですから。法の裁きを受けさせないと
法は彼らに甘すぎますね
しらねぇヤツらがしたり顔で言うんだぜ、きっと
そんで終わり。ジ、エンドだ
オレは、幸せになりたいんだ
そんな苦しい世界はゴメンだね
堂島良悟『ジーク・フロイドの終わらない旅』
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目の前にあるその事実を受け入れましょう
受けとめるのはあなたなのですから
喜ぶも哀しむも怒るも嘆くも愛するも
あなたの権利であり
おそらくは義務であるのですから
K.M.Alt『自由論』
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0, 1, 1, 2, 3, 5, 8, 13, 21, 34, 55, 89, 144, 233, 377……
John Smith『フィボナッチ数列序論』
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万の命をあなたに
高梨東夜『言祝ぐは佳酒』
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My heart leaps up when I behold
A rainbow in the sky:
So was it when my life began,
So is it now I am a man,
So be it when I shall grow old,
Or let me die!
The child is father of the Man:
And I could wish my days to be
Bound each to each by natural piety.
William Wordsworth『−A Rainbow−Poems』
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我々は、思想や、感情や、願望、さらには官能的感覚さえも、自分自身のものと主観的に感じながら持つことができるということ、しかし我々がこれらの思想や感情を経験しているとしても、それは外部から与えられたもので、根本的に我々と無縁であり、我々が考えたり感じたりしているものではないということである。
Erich Fromm『自由からの逃走』
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今日の空は、秋には珍しいほど青かつた。
だといふのに、ぱらぱらと。馬車路の埃を払ふかのように雨の降る。
「狐の嫁入り」
きみさまがぽつりとおつしやつた。
袴姿を真つ先に洋装に為さつたきみさまが、かういうことをおつしやるとは。
迷信めいたものを何よりお嫌いだと伺つてゐたから、なんだか変な気持ちだつた。
「天にも土にも、遠く忘れられて」
きりりとしたお声に、私は首を傾げる。
紅い林檎のやうな唇で、きみさまは涼やかにお笑いになつた。
息をのむやうに美しかつた。
「まるでわたくしたちのやう」
香河紅葉『日の照りながら雨の降る』
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浪の音がひときは聞えた
中原中也『心象ー中原中也詩集ー』
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