Lie.
世界はとても平和だ。
暴力に脅えない生を、誰もがまっとうできる。
安全な場所で目を覚ますことができるし、今日の食事について不安を感じることもない。
世界は、とても平和だ。
子どもたちは、生まれた瞬間に世界から祝福される。
生まれてきてくれて、ほんとうにありがとう。
一緒にしあわせになろうね。
ひかりに唄われて、子どもたちは約束する。
この人生を楽しむよ、と。
彼らは、おだやかに育つ。自分を他者を世界を愛し、同時に愛されて。
ひかりのなかで育つ。
そうしていつか大人になった彼らは、たすけあいながら世界を創る。
優しい世界だ。誰も誰かを傷つけなくていい、傷つけなくても生きていける世界だ。
苦しいことがないわけじゃない。
人は死ぬし、病気にもなる。
仕事をしてお金を稼ぐ必要があるし、勉強することも山のようにある。
もちろん、相性が合わない人だっている。
それでも、世界は平和で優しい。
誰もが覚えているからだ。楽しむよ、と約束した時のことを。
だから、苦しいことがあっても世界は優しい。
誰もがたった一つの事実で繋がっている。
昨日も今日も明日も、はるかなる未来でも、楽しんで生きていくという約束が、誰一人としておいていかない。
そこには、苦しみはあっても絶望はない。
毎日は希望に満ちていて、人は自分をそうするように人を愛する。
時に泣き、怒ることもあるけれど、その事実すら楽しんで生きてゆく。
病にあっても、年老いても、障害をもっても、願うように望むように、自分の思う自分を他の誰とも分かちあって支えあって生きてゆく。
いつか死ぬときも、彼らは楽しみながら笑って逝くのだ。
約束を果たしたことを誇りに思いながら。