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Preface
波打ちぎわに砂の城をつくるようなあやうさで、言葉をつみあげてみる。
人はそれを、戯れごとと呼ぶのかもしれない。
生きていくその根幹には関わりのない、どうでもいいこと。
それでいて、誰もが一度はしたような。
陳腐で平凡でありふれたことを、僕もまた、してみようと思う。
誰もが口にするような言葉を、紡いでみようと思う。
それは、単なる戯れごとにしか見えないだろう。
読むのにかかる時間もしれているような、短い文字の羅列だ。
そこに意味は無いのかもしれない。
僕の世界は僕だけで閉じて。
書き連ねた言の葉は、誰にも届かないのかもしれない。
それでも。
これまでに数多の人々がそうしてきたように。
僕もまた、言葉を紡いでみよう。
それがどんなに未熟でも。
誰の心に届かなくても。
書くために、書いてみよう。