表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

半分人間

記憶(3)

作者: 朝野千津矢

「あと10分くらいしたら行くから、いつものコンビニでね。」

「了解しました。すぐ準備して向かいます。」

18時19分か。歩いて5分くらいだから少し急いだ方がいいかもなぁ。そう考えて読みかけの漫画を閉じた。開きっぱなしのトランクの中から薄手のコートを取り出し、何も考えずに羽織った。左ポケットをおもむろに叩くと違和感を覚えた。

「あれ、どこだっけ。」

独り言を言いながら部屋を見渡すとさっきまで自分がいた場所に落ちていた。いつのまに落としたんだろうかと少しヒビの入った画面を見ながら考えたが、時間がなかったことを思い出し左ポケットに突っ込んだ。右ポケットに財布があることを確認して玄関のドアを開けた。5月にしては冷えるなと感じながら家の鍵を閉め、早足で歩きだした。


1月末。珍しく一瀬さんの方から誘いがきた。いつもは僕からご飯行きましょうと誘うのに。待ち合わせ場所のコンビニに5分前に着くとやることもないのですでに読んだ漫画雑誌を立ち読みする。二度目なので目が滑るのを感じた。左ポケットから大音量で音が鳴り、マナーモードにし忘れていたことに気づく。周りの目が冷めてて急いで外に出てスマホを確認すると「着いた」と3文字だけ書かれていた。助手席に乗り込むと

「お待たせー!」

と半笑いで言われた。すでに暗くなった景色を見ながら

「今日めっちゃ寒いっすね!」

とたわいもないことを口にする。続けて

「どこ行きましょうか?」

と言うと、少し考えて

「いつものとこでいんじゃない?」

と笑いながら言ってきた。僕は頷くと同時に車が発進し始めた。一瀬さんといつも行く回転寿司店は小食な僕と割と大食いな一瀬さんが行ける店の数少ない選択肢の一つだった。車を走らせて20分ほどで目的地に着き、5分ほど待って席に案内された。とりあえず2皿ずつ頼むと

「有給全部使い切った?」

一瀬さんが突然口を開いた。

「今年はもう使い切りましたよ。仮免一回落ちたのでその分でちょうどですね。」

笑いながらそう言うと、一瀬さんは

「あー、マジか。やばいねー。」

何がやばいんだろうかと思い

「何かやばいですか。」

と聞いてみた。一瀬さんのどこか神妙なような半笑いのような表情が読めなくて困惑した。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ