神様に奉納致しましょう
いつもの奉納台に、エキゾチック系のクロスをひいて、その周囲を生花で飾る。
で、コロコロと宝石を転がし、燭台にろうそく&着火。
揺らめく炎と、踊るように煌めく宝石と影。
奉納台に女神の像を設置、台の中央に人の頭サイズの水晶を。
「よし、っと」
コキコキと首を鳴らして、ぐーるぐる。
指先、手首、肘肩とストレッチ。
で、ペチペチと頬を叩き、気合いを入れる。
視界内のモニタには、DPとワタシの魔力値(現在/最大)が表示されている。
今から何をやるかというと、ワタシがこの世界で与えられている大事なお仕事をするのだ。
簡単に言えば、混沌の女神様へ売上の報告と上納をするのです。
ダンジョンは、人や魔物、喜怒哀楽の感情、殺意や恐怖、愛しさと切なさとふにゃふにゃとが交差する場所。
まさに「混沌」の代名詞。
そこで得られる「力」は、混沌の女神様への供物として、最良なのである。
で、敬虔な混沌の女神信仰者なワタシは、定期的に奉納を行っているのだ。
転生の時に沢山御世話になったしね。
よっしゃ、やるか!
精神を集中。
目は瞑らず、だけど、見ず。
意識を身体の内側へフォーカス。
両手を前に。
掌は上に。
柔らかく、ふんわりと、ボールを支えるように。
掲げる両手の間に、ゆるゆると力が集まり、渦を巻き、球へと変じる。
モニターの表示は見なくても、どれくらいかは判っている。
DPは100万程度、魔力はその倍位。
糸のように細く引き出した力に、ワタシの魔力を絡ませ、寄り合わせる。
感謝の気持ちも忘れずに。
くるくるくるくる。
毛糸玉を作る要領で、魔力とDPを寄っては、巻いていく。
ある程度の大きさになったら、ぎゅぎゅっと圧縮。
くるくるくるくる。
ぎゅー。
くるくるくるくる。
ぎゅー。
ゆっくりと目を開いて、目の前の球を確認する。
うむ。
今日も良い出来映え。
うにょうにょもやもや、良い混沌っぷりだ。
と、あんまり見とれててもダメダメ。
今度はしっかり集中。
ふっ、と軽く息を吐き、気を入れ直す。
目の前を水晶塊を見つめ、慎重に混沌球を合わせていく。
ゆっくりと急いで、繊細に大胆と。
水晶塊への侵食を優しくサポート。
暴れ漏れ出す混沌の力を、導き促す。
そして、水晶塊が混沌球を全て飲み込んだ所で、ワタシの魔力でパッケージング。
「ふへぇ」
額の汗を拭い、ほっと一息。
いやぁ、今回も良い出来だ。
目の前には、見事な混沌水晶が鎮座している。
白と黒とグレーのグラデーションが、マーブルに入り乱れ揺れ動く。
そして、透明と不透明を不定期に行ったり来たり。
うーん、カオスだなぁ。素敵!
「なんか、超禍々しいんですけど」
「ほほぅ。流石のユーキも称賛の声ですかな?」
「…えっ?」
「えっ?」
なんだなんだ、その、何言ってんだコイツ、な顔は?
ほら、判るでしょ?
1度も同じ模様にならないんだよ?
見てるだけで、なんかソワソワするような、ゾクゾクするような。
ねぇ。
……あ、ちょっと距離、遠ざかってない?
あるぇ?
ま、まぁ、人の価値観って、それぞれだからねー。
んでは、気を取り直してっと。
むにゃむにゃむにゃ………
ほい!
混沌の女神・ケイオス様へ、感謝の祈りを捧げる。
そして、混沌水晶に季節のギフトを添えて、奉納!
女神像が一瞬光り、奉納台に乗せた混沌水晶と、ギフトが姿を消す。
そして、一枚のスクロールが奉納台の上に現れる。
『敬虔なる信徒よ。
奉納の品、確かに受けとりました。
これからも、世界のマナをかき混ぜ続けなさい。
貴方に混沌の加護と恩恵を………。
プレゼント超ありがとだし♪
神フレの皆でシェアすんね。
ヨーコちんの気遣い、好きよん♪
あ、そうそう。
ダンジョン内の牢屋のやーつは、アタイが根回ししとくから、
やっちゃっていーよー♪
文句言ってきたら、そこの狂犬突撃の刑ってことで。
ではでは、ばいびー♪』
ケイオス様、ギャップスゴイデスネ。