悪い顔
結局、色々、すったもんだ、した結果。
コンセプトは、初級~中級冒険者養成施設、ということになった。
どうやら、御近所の都市を拠点にする、冒険者達のレベルが低いそうだ。
その底上げをしたいらしい。
殺す気か!
そんなクレームは、鼻で笑って吹き飛ばされた。
解せぬ。
一応、こちらのメリットとしては、定期的なDP取得か?
初級とかだと…なぁ。
量…ねぇ。
むぅ…。
「ねぇ」
「ん?なんだい?」
「冒険者ギルドってさ。一般人も利用出来るの?」
「んー、その辺はちょっと詳しくないかな?」
うーん。当てが外れたかー。
「でも、権限ある人は知り合いだよ」
「…ふむ。なら、いけるのかな?」
「と、いうわけで」
「権力者と聞いて」
「ちょっと待て」
やって来ました、冒険者ギルド。
いやぁ、超コワイ。
かなり昔に様子見に出てきたことあったけど、それの比じゃないわ。
ヒイィィ。ガクブルガクブル。
「前に、このマスター、ライアスっていうんだけどさ。訓練場所が足りないって、愚痴ってたのよ」
「ほほぅ。で、ウチに目をつけたってわけね」
「そ。オレが」
「アンタが」
とりあえず会話に乗っかって、精神の安定をはかるのだ。
すーはーすーはー。
「何の話だ?っていうか、全く話についていけないんだが」
お、ぷるぷるしてたライアスおじさん、再起動完了ですか?
「いつも世話になってる二人に、WinーWinなお話を持ってきてのさ!」
「ふはははー、もう事態は動き始めているため、拒否権は無いがな!」
「だから、何の話か説明しろって!」
かくかくしかじか。
ユーキからライアスさんに説明が行われる。
それを隣で聞きつつ、こちらも状況整理。
王都は、もう土地が余ってないから、新人冒険者育成の為の施設を建てる余裕がない。
昔からある地下の訓練場は、老朽化が進んでしまってるらしく、派手に暴れるとギルド施設が倒壊する恐れがあるとかないとか。
で、新人教育の為に、地下施設が使えなくなってしまってる、と。
ギルド側からの依頼で新人教育を発注するのだが、個人差があって思ったように成果が出ないらしい。
その依頼を受ける冒険者も、そんなにいないってのも問題らしい。
なるほどね。
……先に言えや。
ユーキとライアスさんのやりとりを盗み聞きして、状況の補完が出来た。
なら、ちょいと一押しして上げれば、話が終わるかな?
「ちょっと、よろしいかな?」
軽く手を上げて、発言。
「そちらのユーキさんが言うとおり、ワタシは可能であれば、共生、という道を取ることに吝かではありません。選ぶのは、あなた達です」
「…人類を脅かす存在と手を取れ、と?」
「ワタシに言わせれば、ワタシを害する存在と、と言えますが。まぁ、言葉遊びのようなものですね」
「………」
「あなたも立場がある身。明確なメリット、利点が見えなければ、検討のしようもないでしょう」
と、そこまで言って、持ってきていたブツを取り出し、机の上に並べる。
殺気飛ばすなや、怖いわ。
……ほほ、見たな?
「こ、これは…」
「そう。ご存じの通り。金、銀、各種宝石、そして…」
ゴクリと唾を飲み込むライアスさん。
目が釘付けですなぁ。ふははは。
「…ミスリル」
「御名答」
パチパチと笑顔で拍手。
「相応の対価が必要ですが、そちらの鉱脈をダンジョン内で生成することが可能です」
現在、ミスリルやオリハルコンといったファンタジー鉱石は、ダンジョンのドロップ品か、偶然見つけた鉱脈からでしか入手出来ないらしい。
さかし、ワタシは違う。
一度取り込めば、ポイントで作り出す事が可能。
「……興味、湧きません?」
ワタシは今、悪い顔をしているだろう。
ライアスさんの前に、そっと、ビール缶を置いてみる。
くくく、リサーチ済みよ。
「お1つ、いかが?」
ずっとワタシのターン!