表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔王おじさん50  作者: クリントン大西
--奥垣内 学と和平編--
76/93

その73 〜正作の決意〜

 ”ガブリエラの小部屋”の出入り口は、折りたたむ(・・・・・)と、百科事典ほどのサイズにまで縮まる。ただ『開閉する薄板』というだけの、玩具のようなものだ。


 そこを通して出入りできる一辺二mの空間で、正作は──

 ガブリエラから、一通りの経緯を聞いた。


 正作は、しばらく何も言えなかった。


「わた、わたしも、実際に見たわけじゃないから、アレだけど──」


 ガブリエラが、ぽつぽつと喋りだす。


「戦争で、人間を殺すっていうのは、正直、ある程度”折り合い”をつけたつもりだったんだ。ドグの時は、相手は軍人だったし、それに今はもう、わたしは人間じゃない(・・・・・・)しって」


 正作は、あいまいに頷いて、先を促した。


「元の世界──というか、まぁアメリカなんだけど。父方の知り合いで、農業やってる若い男の人がいて、七面鳥とかの世話もしてたんだけど……ああ、ヤマシタさん。”州兵”って、通じる?」


「……あー、なんか、海外ドラマでちらほら耳にするあれだね。あの、悪役っぽい州知事が『州兵を動員するぞ』とかいうやつ」


 かなり昔、アメリカの大統領を主人公にしたドラマがあり、それで観たような、観なかったような、うすらぼんやりとした記憶が正作にあった。


「だいたい、そんな感じ。で、基本は農家やってて、州兵としては月一回の週末と、年で二週間の訓練に参加すれば、そこそこ給料が貰えます的な──基本はそういうやつ」


(日本の自衛隊の、予備自衛官みたいなものか)


 正作の最初の職場、米飯工場に務めていた先輩が元自衛官で、工員になってからも予備自衛官というものを継続しており、定期的に連休をとって訓練に出かけていた──その空いたシフトに入らされた──のを思い出す。


「で、これは十年前の話だけど、当時はイラクで戦争やってたでしょ。戦争っていうか、治安維持活動? それに参加しなきゃいけなくなって」


「え? 行きたくなかったの、その人。じゃあ、どうして州兵に……」


「お金が欲しかったって。もちろん個人差はあるけど、少なくともわたしの周りに、農家でリッチって人は知らないし。……でまぁイラクいって、両腕ふっ飛ばされて帰ってきて」


 両腕、のところで正作はびくりとなる。


「わたしはその時、十二歳だったけど、お見舞いにいった夜は寝られなかった。知っているお兄さんで、小さい頃に遊んでくれたような人が、というのもそうだけど、何より……ほかにも”そう”なっているような人がいっぱいいるって、テレビでも観て知っていた筈なのに、やっぱりそれは他人事で、どこかで切り離して、国防がどうのとか、したり顔で言ってた自分がすごい、なんていうのか、(けが)らわしく思えて」


(十二歳で国防とか、そういう話が普通に出るのか)


 正作は重い気持ちながらも、妙なところで感心した。


「──それで、今の、”こちらの世界”の話になるんだけど。ヤマシタさんの”和平”の話は、もちろん大賛成。その一方で、エクステリアとかタコが言ってることも……つまり、いまさら和平は納得がいかないとか、そもそも不可能だろうみたいな話も、理屈としては理解できる。だから、その辺をきちんと話し合って、折り合いをつけていければって、思ってたのに……」


 声に、嗚咽が混じる。

 押し殺すように、ガブリエラは泣いていた。


「あ、あんな無茶苦茶するなんて。もともと、エクステリアとはあんまり仲がアレだったけど、でも”仲間”なわけだし……そのへんの不一致はさ、含んだ上で一緒に問題を乗り越えていければいいなって、思ってたのに……もう無理。わたし、一緒にやるのは、無理」


 正作は、ただ黙ったままだった。


 彼女の肩に手を置いてやるべきかとも思ったが、どうも、そういう安易な慰めはすべきない、そんな抑制が働いた。


 ガブリエラの言い分は──お世辞にも整理されていたとは言えないが──少なくとも心情的な部分で、正作は大いに共感できた。


 もとより、難しい戦略や作戦など、自分程度には分からない。

 魔族と人間の軋轢の”本当のところ”を論じられるほど賢くもない。


 が、エクステリアのやったことは、自分には受け入れられない。

 

 単純に、それだけだ。


(浅慮、なのかも知れない。いや、きっとぼくのことだから、浅い考えなんだろう。甘太郎くんあたりなら、もう少し気の利いた理屈が出てきたりするのかもだけど──そんなことは関係ない。ぼくは、ぼくなり(・・・・)で、魔王をやろうと決めたんだ)


 顔を伏せ、すっかり丸まってしまったガブリエラを見て、正作は意を決する。


(エクステリアさんと、今回の件で、しっかりと話し合う──いや、対決する(・・・・)

ここ数日、やや文字数控えめです(´・ω・`;)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ