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魔王おじさん50  作者: クリントン大西
--奥垣内 学と和平編--
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その72 〜残虐の意図〜

「とにかく、陛下がエクステリアを処刑! というような裁可を下される可能性も、まったくゼロではないという覚悟! は、持っておいた方が良かろうな」


 魔王城、大会議室。

 長円卓に集っているのは青鬼ドグ、ヤマト、ナンギシュリシュマの三名。


 彼らは、ガブリエラの”小部屋”に入った魔王・山下正作と、エクステリアの帰還を待っているところだった。


「和平の知らせが、なにかの”弾み”で、エクステリアに行ってませんでした! ──って言い張るのはどうッスか」

「ガブリエラが経緯を知っておるからな……あの娘が、陛下に黙ったまま通せるとは思えぬ。もとより、今回の計画の内容を聞いて、難色を示しておったしのヒヒヒヒヒ」


 緑タコが、触腕を力なく左右に振った。


「まぁ、雑魚人間の群れに、あえて手ひどい傷を負わせたうえ生かして返す(・・・・・・)って、趣味悪いっちゃ悪いッスからね」


「それ以前に、陛下のご下命に逆らった形! だしなぁ」


 ドグが、六本腕を全て前に組み、唸る。


「いかに四天王の一人とはいえ、何らかの処罰が下ることは避けられんか」


「エクステリアの一連の作戦は、純粋に(・・・)作戦としてみるならば上々よ。その残忍さでもって、王国の人間どもに、憎しみと恐怖、焦りを与え、相対的に勇者への不満の声をも助長。更に、ゲゾス伯爵の裏切りを表面化させることで、内部の疑心暗鬼をも煽り立て──ついでにいえば、”傷”を負わせた村人の処理(・・)で、王国側にリソースを割かせる。そのあたりの有用性を、とくと陛下にお伝え申せば、あるいは──ヒヒヒヒヒ」


「大人の村人で、六百人近くッスか? そんな程度、難民が出たぐらいで、あのでかい国がどうにかなるもんスかね?」


 素直な疑問を、ヤマトがあげる。


「王国側としては……まぁ、順を追うと……”一時的”難民であるなら、しばらく国家で衣食住の世話を見てやった後、順次、”働き先”などを用意してやればそれで一段落だがの。両手と視力を失った(・・・・・・・・)者だぞ? いったいどんな仕事があろうか。牛馬に見立て、畑で(プラウ)でも()かせるか、ひたすら洗濯物の踏み洗いでもさせるか……どのみち、大した労働力にはなるまいな。一部の婦女を娼館に送ってみたところで……これはまぁ実行するであろうが……全体の支出をペイするには到底いたるまい。


「また軍人なら、これは”国家のために戦った者への感謝”という意味あいで、戦傷者年金のようなものを出すのも理解を得られやすかろうが、今回の場合、身も蓋もないことをいえば単なる被害者(・・・・・・)。戦傷者と同じか、それ以上の扱いとなれば、各方面から不満が吹き出すは必至。さりとて、予算を絞らば、”傷モノ”の村人は早晩、野垂れ死に。加えて、この先も似たような(・・・・・・・・・)被害が出る可能性(・・・・・・・・)。これも考慮せねばなるまい。となれば、今回の救済案が、一つのモデルとなり得る。うかつにカネのかかるやり方をしてしまうと、次、そのまた次とどんどん(つい)えが(かさ)み、王国は自らの首を締めることとなろうヒヒヒヒヒ」


「なるほど。この先ずっと国が面倒を見ていく形にすると、やや苦しい! と」

「聞けば聞くほど、痒いところに手が届く作戦ッス」


 二人は、様々な意味で感心する。

 思いついたように、ドグが手をついた。


「ふぅむ、となると必然! その村人の親族や子が、面倒を見る形となるのか? あの手の人間の村なら、外部に知り合いがおり、相互扶助! のような事もあるだろう」


「そッスね。同じ農村の田舎モン出身として、やたら世間体を気にするっつーのはスゲェ分かるッスよ。総合すると、本当にどうしようもない奴だけ国家が”当面”助け、ほかは周辺住民の助け合い精神に期待、みたいな流れッスかね」


 それを受け、ナンギシュリシュマが不敵に笑った。


「──そうさな。恐らく、お主らの言に近い流れになると、拙僧も予想しておる。その際に起こる押し付けあい、なすり合い、慈善と売名、偽善と開き直りの応酬……何がどう転んでも、混迷は避けられまい。とどめには、勇者達……少なくともその一人に強力な動機づけ(・・・・・・・)を行なえた。いかに王国上層部が、和平に判断が傾いていたとしても、もう止まるまい。人間どもが総意で和平を放棄するならそれで良し。そこまでには至らず、勇者パーティの誰かが我慢ならず飛び出すに留まっても、それはそれで良し。各個撃破に持ち込み、戦局を有利にできれば、それだけ我ら魔王軍の勝利は近づくヒヒヒヒヒ」


「それって、陛下の”和平したい”って意図とは真逆ッスよ。俺たちはまぁアレッスけど、そんな説明で陛下が頷いてくれるかどうか、そうとうビミョーッス」


 ヤマトが、不安そうに頭をかいた。

 ナンギシュリシュマも、同意というように片眼鏡の位置を直した。


「──ま、あとはエクステリアがどれだけ”説得”できるかに懸かっておるかの」

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