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異世界に於ける護り屋の表稼業と裏稼業  作者: 塵無
二章 護り屋、冒険者へ
24/38

鑑定者の憂鬱 01

R2.7.14

一部修正

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◆◆◆

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 リンちゃんことリンダ・カールトン(つまり私のことだね!)は、クライムハイン王国の王都にある国内最大規模の冒険者ギルドと契約を結んでいる【鑑定者】だ。仕事柄冒険者の卵や、時々やってくる職人や貴族のアビリティを鑑定するのが私の仕事さ。


 冒険者ギルドは世界のどの街にも設けられていて、ギルドと契約出来るのは少なくとも【妖精(フェアリー)】以上のランクを持った鑑定者になる。


 街の規模によってはその最低条件が違うんだけど、お城を目の前にしたここみたいな王都だと必ず【女神(ゴッデス)】のランクを持つ者と決まっている。女神のような私が女神のランクのアビリティを持つ…うん、とっても理にかなっているね。


 また【女神】のランクを持つ鑑定者は、決まって同じくランク【女神】の【状態異常(アブノーマル)無効(クリア)】、それと【長寿(ロングライフ)】のアビリティを生まれた時から持っていて、ある程度の年齢を超えると【不老(エターナル・ユース)】のアビリティが付く。


 老けないで長生き、おまけに病気にもならない。つまりはこんなに可愛いリンちゃんをずっと見られるということなんだ。いやぁ、みんな幸せ者だね。


 因みに【鑑定(アプレイズ)】のランクが下に行くほど、他の三つが揃う確率が下がって、いずれか付かない場合があるらしい。【精霊(スピリット)】だと三つとも付かないことが殆どだそうだ。


 …あと人によっては【不老】の出るタイミングが違うみたいで、聞いた話だと10歳になるかどうかの子や、50歳を超えてから出てきた鑑定者もいるらしい。その年齢でなくて良かったと本当に思うよ。


 これも原因はよく分かってないんだ。一番有力なのがその人の精神年齢みたいだけど、それもどうなんだろうね。


 私の【不老】は20歳の時に出てきた。少し童顔だったのもあって、可愛さの中に年齢に相応しい色っぽさも兼ね備えている素敵な女の子のままという訳さ。


 実年齢? ンフフー、どうだろうね。安易に女の子の年齢を聞くものじゃないよ。嫌われるぞ?


 まあそういう訳で、私も本当に長い間、本当に多くの人を鑑定してきたんだ。その中には勿論フォーリナーもいたんだけど、みんな揃って反応といいアビリティといい、中々面白いものを見せてくれたよ。




 そんな私でも初めてだよ。


 この世界の人間とフォーリナーを含めて、こんなにも私を驚かせる鑑定結果の人間に出会ったのは。




 分かりやすくする為に、一つずつ順を追って話そう。まずは【鑑定】のアビリティについて話そうかな。リンちゃん先生の特別授業さ、ありがたく受けてくれたまえ。


 可愛い可愛い鑑定者、リンちゃんの持つアビリティの一つ【鑑定】は、【階級(ランク)】が存在するアビリティだ。


【精霊】だとその人が持っているアビリティや習得した魔法の名前だけが見える簡易的な物。


【妖精】は相手の名前、身長、体重、また強さや素早さといった簡単なステータスが数値として分かる。先天的な病気や症状、今起きている状態異常も簡易的にだけど見られるね。


天使(エンジェル)】だとアビリティや魔法の内容、アビリティのランク、状態異常の詳細が見られる。先の二つのランクで見えていた物がより細かく見られるという訳だ。


 そして【女神】…つまり私には…ああ、私が女神と言う意味じゃないよ? そう思ってもらっても全く構わないけどね。


 私の持っている【女神】のランクでは、更にアビリティのランクの度合いと、そのアビリティがどういう理由で生まれた物なのかも分かるのさ。


 度合いというのはそうだね…同じ「1未満の数字」でも「0.1」から「0.9」があるように、同じランクの中でも更にどれ位強力なのかが違ってくる。それを度合いと呼ぶんだ。


 そんな細かい部分まで、リンちゃんはしっかり見られるという訳さ! どうだい? 凄いだろう?


 …分からないって? しょうがない、もう少しだけ教えてあげようじゃないか。可愛い上に優しいなんて、リンちゃん先生はなんて素敵なんだろう! そうは思わないかい?


 度合いというのは結構重要でね。例えば同じ強さ、同じランク、同じアビリティを持った…数値で言う「10」の強さを持つ者同士が戦うとして、一人の度合いが「0.1」、もう一人の度合いが「0.9」だった場合、つまり「10.1」の力と「10.9」の力が戦い続けるとどうなるか…。


 流石に分かるよね? そういうことさ。それでも分からない人は今の話で分かった子に教えてもらってね。優しいリンちゃん先生も時には厳しいのさ。


 お互いの戦力が近い程重要になってくるから、結構経験を積んでいる冒険者だとこの度合い知りたさにわざわざ【女神】のランクを持つ鑑定者の所に足を運ぶことも多い。当然、作戦や運の要素もあるから一概には言えないけどね。


 ああ、因みに補足すると、度合いが上限の【妖精】と、度合いが下限の【天使】のように隣り合わせの【階級】では言うまでも無く上のランクの方が強い。度合いはあくまで同じランクだった場合に初めて影響のあるものだから注意してね。


 あとは…どういう理由でそのアビリティが生まれたか…だね。


 鑑定者によって見え方が違うらしいけど、私の場合は記された文字の色で判断出来る。


 他の人の目には全て黒文字で書いてあるように見えるらしい。「らしい」というのは、アビリティの部分にあたる文字は私にはずっと色文字に見えてるから黒文字で見えたことは無い。因みにアビリティ以外は黒文字で見えてるよ。


 他の鑑定者が書いた結果を見た場合はどうなるかだって? さあね。やったこともないから分からないよ。リンちゃんは君達が思っているよりもずっと忙しいのさ。


 それに鑑定者の数は多くないし、さっき言ったように殆どの鑑定者はそれぞれの街の冒険者ギルド担当として契約することが多いから、滅多なことでは外に出ることも無い。


 聞いた話だと鑑定方法によっては記録しないパターンもあるって言うし、自分の鑑定方法を同業者に知られたくない人もいるみたいだから、尚更目にすることは無いかな。


 ……もう良いかな? それじゃあ話を戻そう。文字の色についてだったね。


 アビリティが生まれる原因が発生した時の本人の感情が文字の色で、その感情の強さを色の濃さで表している。


 先天的なアビリティは生まれた時点で既に持っているから白い文字。これは誰一人例外が無く、色の強さも同じだ。


 感情は喜怒哀楽の四種類を基とした色で、それぞれ『喜』が黄色、『怒』が赤、『哀』が青で『楽』は緑で表される。


冒険者や傭兵といった戦闘職の人間は必然的に赤や青が多くなり、商人や職人、魔法使いには探求心が強いのもあって黄や緑が多い。


複数の感情が混ざった場合には色も混ざった状態で表される。『怒』と『哀』で紫、とかね。『喜』と『哀』が混ざると『楽』と同じ緑になるけど、必ず黄色よりか青よりに見えるし、『楽』は真緑で見えるから間違えることは無いね。


 フォーリナーの場合はどうかと言うと、本人が生まれた時の状態や体質を基として先天的なアビリティに、生まれてから今まで生きてきた中での環境や知識、技術や体験が反映されたであろう物が後天的アビリティに当たる。


 これも具体的に何故そうなのかは解明されていない部分ではあるけれど、過去の記録や私の経験上を見るにそう判断出来る。実際に話を聞いてみると、誰一人として例外無くこの説に当てはまった。


 つまり、【女神】ランクの鑑定者は全員、アビリティを介して相手がどのような人生を辿って来たかがある程度分かってしまうのさ。


 …………。




 ところで…気付いてるかな?


 私が話の前半と比べて、冗談を言う数が極端に減っているのを。


 自分をリンちゃんと呼ぶ回数を、ある話を境に一気に減っていることを。


 それと、覚えてるかな?


「こんなにも私を驚かせる結果の人間は初めてだ」と言ったのを。


 理解のある人は分かったかもしれないね。それがどういう意味なのか。


 半分本気な冗談を散々言っていたのは、その結果が受け止めるのも(はばか)る位あまりにも重かったから、気を紛らわしたかったんだ。要は現実逃避の一つさ。普段からこうだけど、今回はちょっと話が違うかな。


 そして話の後半になるにつれてそれが言えなくなったのは…そうだね、一種の責任感と言うやつが芽生えたからかな。


 仮にも他人の人生を漠然と、変わった形でとはいえ見ることの出来る自分が、冗談を交えて言うことでは無いと話していく内に思ったからさ。逆にそう思えてくることで、段々冗談を言う余裕も無くなってきた。


 今更だとは分かっているし、そう思ったのは今回だけだよ。多分後にも先にも今回だけだろうね。


 そう、私も大体だけど分かったのさ、彼に今まで何が起きていたのか。そしてそれが、どれ程苦痛に満ちたものだったか。


私の鑑定者人生の中では初めてだったからね。






――こんなにも濃く赤黒い色でアビリティを記す箇所が埋められているのを見たのは。

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