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異世界に於ける護り屋の表稼業と裏稼業  作者: 塵無
二章 護り屋、冒険者へ
19/38

絶望の囚人と十色の珠

R2.7.14

一部修正


漸く冒険者ギルドに着きました。ここから色々と世界観や設定を組み込んでいきたいと思います。長くなる気もしますが、前科があるので答えないでおきます。


地の分は推しの声優に脳内で読ませると割とスラスラ行けます。やっているのは私だけでは無い筈。

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 ◇◇◇

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 護り屋牧島アンドレイは、宮廷魔導士ルイーナ・エヴェリーと、同じく宮廷魔導士兼呪術師(コンジュラー)のアミルダ・スウィーブの二人を護衛する依頼を引き受け、その足で数刻前に出てきたクライムハイン城のお膝元にある王都に来ていた。


 アンドレイとしてはあまり長い時間、自身が「愚王」と呼んでいた男の領地になどいたくは無かったが、今この町を離れるには彼自身がこの世界について知っていることがあまりにも少なすぎた。


 ルイーナが言うには、アンドレイに自分を介して依頼をしたこの国の王女、クラリス・クライムハインがその父親でもある国王に弁明をしてくれるらしい。彼女越しの情報しか無いながらも、この決して思慮の浅くない護り屋に聡明と思わせるような手腕を見せる依頼主ならば、ある程度の時間はかせいでくれるだろう。


 早急にことを済ませる為には、単純に急げば良いとは限らない。そのことも知っていたアンドレイは、まず自分に必要な情報を得る為、また表には出ていないながらも確実に溜まっていた疲労を少しでも和らげる為、腰の落ち着ける場所を探していた。これから行く冒険者ギルドでは座れる場所も設けてあり、後々のことも考えるとそこで話すのがちょうど良いらしい。


 途中でルイーナからクラリスの血判付きの契約書を渡された。前金のこともあるが、今まで受けた仕事でもここまで手順を踏むのは(まれ)だった。徹底した手順を前に、彼が依頼を拒む理由は完全になくなった。


 同時に今になって、ルイーナが自分にかけた魔法は言葉だけでなく文字にも影響されるのだと知った。この世界の言語で書かれているであろう文字が、アンドレイの目には日本語として読むことが出来る。それを知ってか、「便利でしょ?」とルイーナが軽く笑って言ってきたが、全くその通りだった。




 王都というだけあり、当然ながら国内で最も大きな町になっている。露店や商店が立ち並び、行き交う人もよく目にする。店は以前からそれなりにあったそうだが、前国王のジャミル・クライムハインが積極的に外部との交渉や交易を行う政策をとった結果、政策以前とは比較にならない程の品の輸入出が行われ、町も活気づいていたのだという。


 だが、アンドレイが見る限りでは町の規模とは正反対に、町の人間は所々悲壮感が浮かび、汚れが多く破れた服を着ている者も見られる。こうした国民が出てきたのは、やはり今の国王になってからだそうだ。


 王の野心による幾度に渡る侵攻、兵力を増す為の重税、生活に苦しみ、このままでは生きられないと意見を申し立てれば処罰される。他の国に行く体力もなければ、馬車を買い護衛を雇えるだけの手持ちもない。


 殆どの人間は逃げるに逃げられず、その中で辛うじて生かされる道しかなく、黒く重い絶望が重りの付いた首枷(くびかせ)となっているかのように彼らの頭を下げさせる。この町全ての人間ではないにせよ、その首枷をはめている人の数は明らかに多い。


 王女はこの王都を含めこの国全体にいる、言わば「絶望の囚人」から首枷を外したいらしく、その為には一刻も早く、ルイーナが持っているという書簡を各国に届けなければならない。そして現状況を打開するまで…つまりこの国の人間が解放されるまで、ルイーナ達二人を護るのが今回の依頼となっている。結果としてアンドレイは、間接的にとはいえ国民を救い始めて依頼を達成出来ることになる。


「…良くも悪くも、強かな王女だな…」


「…まぁねぇ…」


 王女への嫌味にも似た称賛を呟いたアンドレイに、その意味が分かっているかのように横を歩いていたアミルダが答える。


 アンドレイがアミルダに目をやる。ルイーナよりは少し背が高いが、2メートル近い彼からは顔より頭の方が視界に入る。どんな表情をしているか分からなかったが、アミルダは自分が見られていることを知ってか、小さく「クスリ」と笑う声が聞こえた。


 少し前を歩いていたルイーナが足を止めて振り返る。今の話が耳に入ったのかと思ったが、そうでは無かった。彼女は右手を横に突き出し、その先の建物を紹介する。


「着いたわ。ここがこの町にある冒険者ギルドよ」


 ルイーナの右手の先を見ると、圧巻ともいえる堅牢な建物があった。直方体をほんの少しだけ横に潰したような建物で、外壁は城と同じように白い石壁で出来ている。


 アンドレイでも余裕で入れる程の大きな出入口の上には、角の取れた大きな長方形の看板に色違いの珠が十個並んでいた。この印が冒険者ギルドの印らしく、それを補足するようにすぐ下の二回り小さな長方形の看板には「冒険者ギルド」と文字が書かれていた。


 大きな出入口からは頻繁に冒険者と思われる男女が出入りしており、この町で一番人の多い場所となっていた。


「冒険者ギルドで出来ることは多岐に渡って、大体がそれぞれの受付で行われるの。依頼の受注、依頼達成や失敗の報告、依頼の途中で手に入れた品の買い取りに、当然、依頼達成時の報酬の受け取りもね。貴方にこれからしてもらう冒険者登録も、冒険者ギルドで行っているわ」


 行きましょうか、と言われるまま、アンドレイは二人の後に冒険者ギルドに入っていった。


 屋内は外壁と同じ白を基調とした壁や天井。床や机や椅子、受付といった家具は木で造られており、外から見た姿と同様に堅牢でいて機能性を感じさせる。


 入口手前の左右には無数の椅子や机が置かれ、多くの冒険者が雑談や情報交換をしたり、報酬を振り分けたりしている。


 左奥には大きな受付と小さな受付が幾つかあり、用途によって使用する受付が異なっているらしい。どの受付にも冒険者が列を成し、自分の番を待っていた。


 左の壁には大きな板が二つ並び、そこには小さな紙が無数に貼られている。その紙がここの冒険者ギルドで発注している依頼書だそうだ。板が二つあるのは理由があるが、アンドレイが聞く前に「後で話す」と先手を打たれる。


 右奥には二階に行く為の階段と、その横に階段下を通る形で通路が設けられている。入口からでは二階の様子は見えないが、ルイーナが言うにはここでは出来ない特殊な内容に対応する際や、立場のある人間を招く為の客間があるそうだ。スペースによって用途が明確化されているからか、それなりな広さもあって多少人が多くても窮屈に感じない。


「冒険者登録だけど確か…5番の受付ね。一番右よ、行きましょう」


 そう言われて一歩二歩と進むと、手前のスペースにある椅子に座っていた多くの冒険者が、皆視線をアンドレイ達三人に向け、その直後にざわめきが起きる。


「あの格好…フォーリナーか…とんでもないデカさだな」


「それに顔や手にある多くの傷、あいつ何級だ? 翡翠や琥珀じゃないだろ…?」


「オイオイ、結構キレイなネーチャンじゃねぇか」


「バカ! あの二人は宮廷魔導士だ! 余計なことはしない方がいい」


「ちょっとあのお二人、ルイーナ様とアミルダ様じゃない?」


「え、宮廷魔導士のお二人? 嘘、なんでここに…でもやっぱり綺麗よね…」


 種火だったざわめきは瞬く間に大きくなり、次第に彼らの会話のメインとなっていく。身長2メートルの傷だらけのフォーリナーに、国が誇る宮廷魔導士が二人。あまりにも衝撃の強い組み合わせでは無理もない。


「…ここはいつもこうなのか?」


「…いいえぇ…さすがにここまでは…ないかなぁ…」


 渦中の三人の内二人はまるで他人事のように見ているが、残った一人はその二人を見て溜息を吐く。


「…こっちよ、早く行きましょう。これ以上騒がれたくないわ…これより上があればだけど」


 力無く急かすルイーナの後を、アンドレイはいつも通りのペースで歩き、言われた通りの番号の受付へと向かった。

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