死帳/Die note
あの日が全ての始まりだった。
△▽
「はぁ…。今日も糞公務員共に持論押し付けられ退学させるぞと脅されたな…。辛い…。でもウチは母子家庭だからお母さんには迷惑かけられないし、学校辞めさせられて困るのは私だからなぁ。ほんと、嫌になっちゃうな。人生も、この世界も」
時間は6時を回っている。反省文という名の坊さん修行を強制させられていたからだ。ちなみにお坊さんになる気は無い。
ザーザーァー …
「うわっ…いつの間にか雨が本降りになってる…。傘持ってきておいて良かったぁ。今日はお母さんが早く帰ってくる日だから、早めに帰ってご飯作ってあげなきゃ」
そう呟き、私は歩みを少し早めた。学校から家までは徒歩で15分程。自転車で行けばあっという間だが、ウチには自転車を買う余裕などない。徒歩で行ける距離だから今通っている低知能共が集まるド底辺公立学校にきたのだ。私の学力とは似合わない学校だが、これも仕方が無い。家系が苦しいと何かと大変なのだ。
「それにしても、今日の先公共は一段とご立腹のご様子…怒鳴るときいつも以上にツバ飛んできてまじで気持ち悪かった…それ避けてたらさらに激しくなったし、ツバ避けたから反省文って、器小さすぎる。…あ、そうか。すぐキレるからストレス溜まってアイツら揃って禿げてんのか。これからはハゲから距離置こ」
ちなみに私は独り言が多い。独り言で担任ディスってたら担任に聞かれてツバ飛ばされたくらいだ。汚い。
「いっそこっちから学校辞めてやろうかな…ん?こんな所に道なんてあったかな?ちょっと薄暗いけど」
いつ見てもシャッターが閉まってる店通りを少し入ったところに、ひっそりと車1台がギリギリ通れる広さの道があった。(お前ら、今「ん?流れ変わったぞ?」と思っただろ?変えたもん。)
「ちょうどこっちの方角がウチなんだよね…一か八かの賭けでこの道を通ってみようかな?上手く行けばいつもより早く帰れるし」
そう残し、私は薄暗い道へと足を伸ばした。どことなく気味が悪く足は少し早まる。スマホのライトで足元を照らしながら、雨で滑りやすくなった道を慎重に進む。
「ん?なんだこれ?」
不意と足元に、黒いノートが1冊、照らし出された。表紙には大きく死ぬ 帳と書かれており、なんとなく、ヤバそうな雰囲気を漂わせていた。
「よいしょっと。あれ?このノート、雨の中外に置いてあったのに全然濡れてない?防水加工付きのノートか!ってことは水性ペンとかマーカーとかは付かないのかな?というか厨二臭い名前のノートだなぁ。『おい』一体どんな奴がこんなダサいノートを使うんだよ。だいたいそんなノートを落とすとかありえ『おい!!』ひゃい!?」
『やっと気付いたかメスブタ。俺はルーク。サキュバスであり、そのノートの具現である。お前が俺の姿を見えるのはそのノートを触ったからだ。』
「え、何こいつ聞いてもないのにいきなり自語りし始めたんですけど。きもっ。ってかこのノートの持ち主かな?こいつ。予想以上にキモいんですけど。うわ、臭そう」
『人が黙っていればごちゃごちゃと…。まぁいい。お前がそのノートに触れた時点で契約は成された。俺はお前に力を与える代わりにお前は人を簡単に殺す力を得る。どうだ?欲望の権化である人間にとってはこれ以上にない、いい話だろう?』
「お、おう…そうか、これはそんなに凄いイベントだったのか…くそっ…ちくしょうっ…」
『何をそんなに嘆いているのだ?』
「原因はお前じゃい!もっとあるでしょ!?演出っていうかさぁ!?例えば『ーー力が欲しいか』的な感じの!それやってくれれば私だって「こいつ…脳に直接っ!」って乗るのに!こういうのって大事だよ?私の今の気持ち分かる?カレーが食べたい時にカレー食えることになっていざ見てみると見た目がうんこだったみたいなもんだよ!?この脳足らず!アホ!マヌケ!糞虫!」
『お前のこだわりなぞ知らん。話を戻す。手始めに今晩、そのノートに人間の名前を書いてみよ。男ならテクノブレイク、女ならアクメを決めて死ぬぞ。そしてお前が殺した人間の魂は俺が貰う。お前が設定をしなかった場合は夜中の12時、自室で死ぬ。死因は変えられないが、死ぬまでの経緯はある程度設定することが出来る。そのノートのルールはこんだけだ。後はお前自身の腕で使いこなせ。俺は後ろから見て楽しませてもらおう。』
「オーケーだいたい把握したわ。名前書けばそいつは快楽死するってわけね。それにしても皮肉よね。震源の三大欲求である性欲、つまり快楽の欲求で死ぬなんて。そろそろ冷えてきたし、風邪引いても困るから、帰ろう。着いてきなっ!リューク」
『ルークだ』
△▽
「はーサッパリした。いつも以上に疲れていたから、いつも以上にお風呂が幸せだったぁ…」
『おい、早く「うわぁ!!ってリューク…そういや居たんだった」
『ルークだ。それより早くノートを使え。この体が人間の魂を欲している』
「はいはい。せっかちなサキュバスだこと…えーっと、このノートって水性ペンつかないよね?」
『何を訳の分からんことを言っている。字が書ければなんでもいいぞ。最悪、お前の血を代用すればいい』
「やだよ。私貧血気味だもん。まぁ、念の為油性ペンで書いとこ。えーっと、誰にしようかな。あれ?このペン私のじゃない?…あっ、机の上に置いてあったから適当に筆箱の中に入れたやつか。でも、このペン名前書いてないし、いいや。パクろう。そんで自分の名前を書いておこっ!ウチは貧乏なんだ、神さま仏さまも許してくれるよね?ついでにこの前買った予備のノートにも名前書いとこうかな?あとこのノートにも。…って、また悪い癖が…。独り言に熱中になり過ぎるとほかのことが見えなくなっちゃうんだよね。えーっと、名前か…」
今日あった出来事を思い出す。
隣の席で、くしゃみが大きくいつも変なタイミングでくしゃみをする鼻詰まりの呪いにかかってるのか?と思うほど鼻をすする羽鳥。
担任で、ハゲで、怒鳴るとツバを飛ばして、デブで、臭くて、キモくて、深海魚みたいな顔をしている肝杉。
女学級委員で、うるさくて、騒がしくて、騒々しくて、声がでかくて、ハスキーで、イキってて、仕切りたがりで、私を敵視してくるカマチョの花村…etc
「候補はいっぱい居るなぁ。いっそ全員書いちゃうか…あ、フルネーム分からん。これフルネームじゃないとダメ?リューク」
『ルークだ。ダメだ』
「即答されると脱糞しそうになる…それはともかく、ダメなのかぁ。じゃあ知ってるやつだけ書こうっと。えーっと、担任は肝杉響で…ほかは知らんなぁ。ま、いっか。とりあえず今日は1人だけで。いいよね?」
『ああ、構わん。お前に伝えるべきことが「言質は取った!私はもう寝てる時間なので、寝ますよっと!もう11時過ぎてるし!おやすみ!」…まぁ、これも運命か』
△同時刻、肝杉響視点▽
「全く、夜神月という生徒は…これだからゆとりは!教育がなっとらん!クソメスガキが!…
ん?なんだ?この50代を超えてからは感じなくなった感覚は…まるで枯れた心に水が指すかのような…お?おお?おおおお!!!ここ何十年もうんともすんとも言ってはくれなかった俺のオトコが!天を仰ぎ、そそり立っている!!!???ぬっ!?この心のざわめきは!?久しく感じなかった…この抑えきれんばかりの欲求は!?そうか、あのガキは発達は一丁前にしてやがるからなぁ…へへっ、頭の中でぐちゃぐちゃにしてやるぜっ!!!!」
△翌日、学校、くしゃみ男羽鳥視点▽
「スンッ。いきなり学校集会なんて。スンッ。朝からだりぃなぁ。スンッ。」
校長の話によると、うちの担任が、今朝、部屋から死体になって見つかったらしい。死因ははぐらかしているのかどうかはしらないが、曖昧だった。
「えー、そして、もう一つ残念なお知らせが「ヘァーックション!!!」
「あ、すんません。くしゃみでちゃいました」
クスクス
「静かにしなさい。君、くしゃみをする時はあまり人に迷惑をかけないように。」
「…あ、はい。すんませんしたー(は?どうやってそうしろと?くしゃみを抑えられたら俺だってしてるっつーの。無能が。)」
「えー、話を戻します。実は、もう1人、この学校から昨晩お亡くなりになられた方が居ます。一日で2人も亡くなられたこと、本当に悲しく思います。その方はーーー」
『あーあ。』
批判は受けつけない




