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ある星のうた  作者: 福田有希
第一部;出会い
9/61

第九話;編入試験

 僕たちは8時前に学校に到着した。

 到着してからまず職員室に僕たちは向かった。

 三回ノックし、「皆藤百合先生との面談に来ました!」

 そういって職員室に入った。


「おぉ しっかりと2人仲良く登校して来たな。」

 百合先生は相変わらずだ。

 ルナは百合先生に頼まれた書類一式を手渡した。

「えっとこれはなんだっけ? 賄賂わいろか?」

「百合先生に頼まれていた書類です。

 戸籍謄本、住民票、マイナンバーカードのコピーが入っています」

「今日中に持ってきてごくろうさんっと。」


「さてテスト開始の前に言っておく事がある。

 お前達は親戚同士と言うことで、

 同じ家に住んでいると言うことにするように。」

「たぶんそれは無理だと思います。」

「それはどうしてだ?」

「さっき渡した私の戸籍謄本を観ていただけると判るかと存じます」


 百合先生は封筒の中から書類一式を取り出し、戸籍謄本を見始めた。

「なに! 養子だって!ということは、

 由真と瑠奈は兄妹の関係になったと言うのか?」

「はい。由真お兄さんと妹の瑠奈です。

 これからもよろしくお願いします。百合姉さん。」

 僕はルナの強気な姿に驚いてしまった。

「そう言うことなら仕方が無い。

 養子に迎えて妹になったと言うことでいこうか。」

 なぜか百合姉さんもルナにはかなわないといった感じに見えた。


『テストは学力テストと面接の二種類

 学力テストはマークシート方式と書き込み方式の二種類

 英語はヒヤリングテストと書き込みテストの二種類

 数学は微分積分と代数幾何の二種類

 社会は世界史、日本史、地理と現代史の四種類

 理科は科学と化学と物理と生物と地学の五種類

 国語は現代文、漢文、古文、小論文の四種類

 午前に3教科、午後に2教科をやり その後に校長と私で面接をやる。

 それが今日の日程だ、問題は無いな。 意義は一切認めない。』


 横で聞いているだけで逃げ出したくなる日程だ。

 しかしルナは「問題ありません」と言い切った。


「試験会場に行くぞ。といってもすぐ横の部屋だけどな」

 例の面談室が今日の試験会場だった。

 あそこなら長時間座っていても大丈夫だ。僕はちょっとほっとした。

「百合先生、ルナにトイレの場所を教えておいてあげてくれませんか?」

「なんだ由真 トイレならいつもお前が使ってるじゃないか?」

「僕が使ってるのは男子用トイレです。女子用トイレは使っていませんよ!」

「そういうことなら瑠奈は来い、由真は来るな。」

「来いといわれても女子用トイレには行きません!」

 ルナがトイレの場所や水道の場所などを聞いて戻ってきた。

「他に質問は?ないなら面談室に行って準備しなさい。」


「ルナ 頑張ってこいよ。落ち着いて問題を解くんだぞ。」

「うん! 由真 頑張ってくるね!」そういってルナは試験会場に入っていった。


 百合先生が僕の横でこういった。

「由真、このテストの受験内容、お前はどう思う?」

「それぞれのすべての科目に内容を詰めすぎてるように思う。

 到底一時間では終われないと思う。」

「一時間じゃない。 各教科1時間30分テストだ。」

「何? 1時間30分?

 だって午前中3科目、午後2科目で面接って言っていなかったか?」


「・1教科目08時30分から10時に終了、5分休憩、

 ・2教科目10時05分から11時35分、5分休憩、

 ・3教科目11時40分から13時10分、お昼ご飯40分、

 ・4教科目13時50分から15時20分、5分休憩、

 ・5教科目15時25分から16時55分、5分休憩、 

 ・面接17時から始めて19時に終了予定になっている。」


「なんだよ そのテスト内容は!

 はじめから落おとすためのテスト内容じゃねえかよ。」

 僕は百合先生に食いかかった。

「校長の意向でね、この学校を有名進学校にしたくて、

 特進科コースを作りたいそうだ。

 その特進科メニューを今回の入試試験でテストしたいそうだ。」

「丸一日、勉強漬けのメニューコースに、

 誰がすき好んで入りたがるやつが居るんだよ。」

「それはこの世の中すき好むやつくらい居るだろうさ。

 日本が能力主義とか実力主義などと言っていながら、

 良い大学に入れば良い就職が出来ると思ってるやつが多いからさ。」

 学歴社会という負の遺産と言う感じがして、

 僕は怒りを覚えずに入られなかった。


「学歴社会ですか。それはご愁傷様と言いたい気分だよ。

 特進科は16時55分終了なの?」

「いや毎日、6教科目まであるから、16時55分から5分休憩で、

 17時から始まって18時30分で終了だな。」

「朝8時30分スタートで夜18時30分に終了。

 10時間拘束で休憩時間は全部あわせて1時間休憩か。

 よくそんな拘束時間を国が認めてくれたな。

 企業だったらブラック企業に認定されそうじゃないか?」

「まだ学校もそんな特進科コースなんて認められてないさ。

 認められるわけが無いだろう?」

 たしかにそれは認められるものではないだろうな、とは思った。

「百合先生、認められていない特進科コースの授業内容を、

 進学テストとして認められるわけ?」


「進学テストとしてと言うより、

 編入学テストだからやることに決めたらしいんだ。

 校長が入学希望の学力や実力を試して、

 問題があるか。問題が無いか。を見極める。

 その見極めるのに一番良い方法だとのことらしい。」


 それにしてもむちゃくちゃなテスト方式には変わりは無い。

 学力を見極めると言うより、集中力と体力勝負になると思った。

 それでも90分も集中力が途切れずに出来るわけはないし、

 たった5分の休憩で身体が休まるわけが無い。

 トイレだって走って行って帰ってきたら、

 すぐにテストと言う状況になることは確実。

 それを午前と午後にやった後の体力や集中力が無くなったところで、

 校長と先生との面接がある。

 どんな超人でもここまでやれる人は居ないのでないか?

 僕はそう思えてならないのであった。


「さて私は受験会場に行って来るよ。試験官になってるもんでね。」

「あの百合先生 僕を呼び出した理由は?」

「今はそこに居て本でも読んでいなさい。

 由真を呼び出した理由は後でわかるから。」

(僕を呼び出した理由っていったいなんだ?)

 編入テストの会場には僕は入ることが出来ない。

 もちろんルナの状況がまったくわからない。

 椅子に座ってルナのことを祈るしか僕には出来ないのか?


「本当に、人間って無力だよなぁ・・・」

 僕の声がむなしく響いていた。


 自分もただ座って祈っているだけでは僕自身も壊れそうなので、

 図書室で借りた参考書をやってみることにした。

 ルナがやっているテストと同じ教科を僕もやってみたかったのだ。


「勉強とは感心だね。」

 隣で急に声がして僕は驚いて本を落としてしまった。

「ごめんよ。驚かすつもりはなかったんだけどな」

 声の方向を見たら教頭先生だった。

「君は皆藤先生のとこの子だったかな。」

「はい! 皆藤百合先生のクラスで村山由真といいます!」

「今日も皆藤先生に怒られに来たのか?」

「いえ! 妹の編入試験の付き添いで来ました!」

「妹? 由真君に妹なんて居たかの?」

「親戚の子で養子に迎え入れ妹になりました。」

「そっか、養子の子か。妹さんの編入試験はどんな調子かの?」

「妹なら絶対に頑張りきって、

 編入試験を無事に合格することと願っています!」

「今回の編入テストはまったく違った方法でテストしてると聞く。

 無事に合格できるといいな。」

 教頭先生からこのような言葉を聞くとは思っていなかったので、

 驚きを隠せなかった。


 教頭先生は教師の間でも生徒の間でも『鬼教頭』と呼ばれている。

 スパルタ教育で有名で教頭先生が教師時代の時に作ったテストでは、

 ほとんどの生徒が出来ることが無く平均点が低い。

 100点満点のテストで平均点35点という話も聞いたことがある。

 そして、宿題を一晩で出来ないくらいの量をだし、

 出来なかったものには土日の休日に授業をさせたという伝説がある。

 この教頭先生なら特進科のことを細かく聞けるのではないかと思った。


「教頭先生 学校に特進科コースを作る予定があるみたいですね。」

「ほぉ。それは何処で聞いたのだ?」

「うわさですよ、特進科コースを創り、

 この学校を進学校として名を上げると言う。」

「それで君はどう思うのかね?」

「進学校に名を上げるのもいいと思いますが、

 カリキュラムが厳しすぎると思いますね。

 その点については教頭先生はどう想いますか?」

「今、その答えが君の妹さんにかかっているといったらどうするね?」

 僕の中に怒りの感情が芽生えてきた。

 やっぱり予想通り、結局、ルナを実験台にしただけじゃねえか!


「僕の大切な妹の編入試験を実験台に使われるのは、

 まったく良い気はしませんね。」


 教頭はそのまま立ち上がり、去り際にこういった。

「勉強するなら皆藤先生の机を使えば良い。その椅子じゃかわいそうだ。」


 教頭先生の言われたとおり皆藤先生の机で勉強を始めた。

 今は2限目のテストをしているはずだ。たぶん数学かな。

 僕は数学の参考書を開いてみていた。


「数学をやるなら開いてみているだけでは、身に付かないわよ。

 しっかりノートに書きなさい!」

 顔を上げるとそこに学校一のアイドル先生、

 春日美菜先生が話しかけてくれていた。

「春日先生 こんにちは

 苦手な幾何の理論だけでも覚えておこうとおもって。」

「君は確か皆藤先生のところの子よね?幾何学に興味あるの?」

「まったくわからないからどういうものかを

 少しでも理解しておこうとおもっただけです。」


「今日は一体何の用事でここに来たの?

 皆藤先生なら編入学試験の試験官で帰ってこないわよ」

「その編入試験をやっているのが僕の妹なんですよ。」

 春日先生の顔が一瞬変わったのを見逃さなかった。

「春日先生は今回の試験内容はどう思いますか?」

「試験についての話なら私は良くわからない。

 でも、特別な試験だと言うことは聞いてるかな。」

「試験内容が詰め込みすぎていて時間も長い、

 これで生徒が覚えれるんですかね?」

「それについては私にはわからないわね。妹さん合格できるといいね。」

 そう言ってすぐに退散していった。

 学校の先生がこのテストを注目しているように思った。

 特進科コースってそんなに学校にとって魅力なことなんだろうか?


 3限目が終わり40分の休憩になったはずだけど、

 瑠奈が出てくる様子が無い。

 弁当は持たせたはずだから食事はしていると思うのだけど、

 どういう状況なのか、まったく僕にはわからなかった。

 今、本当にルナの姿が観たくて仕方が無かった。

 編入試験の当事者以外入室禁止のため、逢う事は許されることは無かった。


(きっついな・・・本当にこの状態は・・・)


 自分も食事をしてじっとしていた。

 もう祈ることしかできず、祈りまくってしまい、

 ルナが終わるまで待っている。

 このつらさはたとえようも無かった。

(今日は美味しいものでも食べような。ルナ・・・)


 今日はもうヘトヘトになっていて食べることも出来なくって、

『もう寝たい・・・』って言うかもしれないな。

 百合先生の机の上にルナが渡した戸籍が置いてあった。


 僕はその戸籍をずっと観ていた。

『長女 瑠奈』

(妹なんだな。妹になっちゃったんだな。)

 出会いが突然すぎて、本当に突然やってきて、一緒に暮らし始めて、

 笑ったり、泣いたり、怒ったり、ルナの能力に驚いたり、

 いろいろなことが起きたけど、いつの間にか僕の妹になっちゃったんだな。

 僕の大切な妹、大切にしなければいけない妹、

 こういう形で本当に突然に大切な人が出来るものなのかな。

 なんかすごい不思議な気持ちでいっぱいになって、

 自分の心がすごく暖かく感じていた。


 いつのまにか太陽も傾き始めてだいぶ暗くなってきたころ、

「由真!!! 無事に終了!!!」

 ルナが百合先生と共に職員室に戻ってきた。


「私の机に座るとは良いご身分になったもんだな? 由真!」

「いえ あのこれは教頭先生がそこに座っていいと許可を得たので・・・。」

「そうか。 あの教頭がね・・・なにか話をしたか?」

「ただの世間話くらいです!」


 ルナは疲れた感じも見せないで帰ってきた!

「ルナ おかえり。」

「由真 ただいま。」

「今日は何か美味しいものでも食べに行こうか?」

 ルナは笑顔で答えてくれた。


「由真、結果が出たらすぐに報告する。いいな。」

「うん ありがとう 百合先生」

「ありがとう 百合先生♪」とルナも挨拶をした。


(やれやれ・・・あの2人は本当に・・・。)と呆れた顔をした。

 そして机の上にある戸籍を見て、険しい顔になった。



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