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ある星のうた  作者: 福田有希
第一部;出会い
7/61

第七話;戸籍

「住民票は後でいいから、

 戸籍謄本か抄本とマイナンバーは早く持ってきて。

 この学校では必須条件になってるから。」


 ルナは火星人だ。

 ほんのちょっと前まで火星にいて

 地球に来たばかりの子に日本の戸籍があるわけない。

 そしてマイナンバーなんてもっているわけが無い。


 戸籍はしっかりと管理されている。

 生まれた日から出生届を提出したところから、

 日本国民であると言う証明であり、

 日本人として生まれ、生きていると言う証でもあるのだ。


 途中から日本人になるには帰化しかないが、

 それは外国籍から日本国籍になることであって、

 もともと日本以外の国に国籍があり、

 日本国籍に認められたときに日本人になれる。

 しかし火星から来た女の子を日本人に認める法律なんて、

 あるわけも無く途方に暮れていた。


 両親が外国にいるから相談してみようか?

 そこの現地の人の戸籍を一つもらって

 日本人に帰化させちゃうって言うのは?

 だめだ・・・そもそもこれは法律違反だ!

 認められるわけも無く完全に犯罪だ。

 どうしようと考えていたらルナが自分の部屋から降りてきた。


「洗濯物が終わったから外に干してくるね♪」

 ルナにはなにか考えがあるのだろうか?

 そういえば前に「まぁ戸籍については何とかなりますよ。」って言っていた。

 本当になんとかなるものなんだろうか?

 僕には何も思いつかない。

 この件についてはルナに全部を任せるしかないのかな。


 ある日、ネットで『無戸籍者日本に100人以上』という記事を見たときは

(これだ!)とおもって読んでしまった。


 ・出生届が出せなかった場合無戸籍になってしまう場合。

 経済的、環境的状況のせいで親が出生届を出せなかった場合に、

 無戸籍になるケース。


 ・離婚したあとに、新たなパートナーとの間に子どもができた場合。

「法的離婚後300日以内に生まれた子どもは前夫の子と推定される」

 300日以内に生まれてしまった場合は、

 前夫の子どもとして出生届を出さなければいけない。

(民法の772条の2項による)

 現夫の子供だとしても前夫の子供として出生届を出さないといけない。

 まったく関係のない前夫の子どもとして出生届など出せるはずもなく、

 子どもは無戸籍状態に陥ってしまうというケース。


 別居する時に離婚届を元旦那に提出したにもかかわらず、

 元旦那が役所に提出せずそのまま放置、

 妻が現在付き合っているパートナーと子供が出来、出産後に離婚届が提出され

 元旦那との子供として出生届が提出できなく無戸籍になってしまったケース


 でもこれは「離婚後の妊娠については、

 現在は医師による妊娠時期の証明があれば、

 前夫の子ではないとして出生届が出せる」という特例

(法務省民事局長通達)が認められるようになったとなっている。


 ルナを無戸籍状態(実際に戸籍がないのだが・・・)の日本人にして、

 戸籍を取得してしまえばマイナンバーも取得できるのではないか?

 両親に話をしてルナを養子にしてもらえばいいのではないだろうか?


 法律違反になるかどうかというのは・・・どうだろう・・・。

 実際に無戸籍である女の子を戸籍をもつことになるので、

 うーん。。。ぎりぎりセーフ? やっぱりアウトだろうな・・・。


 でも確実に裁判をして戸籍が認められるかどうかの判決があるだろうし、

 裁判の期間はルナは無戸籍のままだという事実は変わらない。

 それにたぶん裁判にかかる時間よりも、

 百合先生からの入学テストの日取りが決まるほうが、

 確実に早く来ることだろう。

 あとは両親に養子として迎えてもらうように説得しないといけない。

 もう一つの問題はルナがいつまで地球に居るのか?という問題だ。

 日本で戸籍を取得したとしても、

 火星にいつかは帰る日が来ることになるだろう。

 もしも火星に帰ってしまったら、

 ルナは日本では失踪扱いとなってしまう。


 無戸籍状態は今、地球で生きていくうちは不便なのだが、

 火星の本当の親に会うことができるのであるなら、

 今の状態は逆にルナにとって良い状態とも言える。

 どうしたらいいのかな・・・本当にわからなくなってしまった。


「まぁ戸籍については何とかなりますよ。」

 ルナの言葉が頭の中で何度も何度も繰り返し聞こえてきてしまった。


 ルナが洗濯物を乾かし終わって戻ってきた。

「由真! 明日、役所って言うところに連れて行ってもらっていい?」

「うん もちろんいいけど戸籍のことで何かいい方法があるの?」


「えへへ♪ 内緒♪」

 ルナは無邪気にいつものポーズをした。


 なにか能力を使う気がするのだが、

 この際、能力でもなんでも使っていいと思った。

「ルナ 法律違反にならないように上手くやってくれよ・・・。」

「大丈夫だよ。 法律には絶対に触れないよ。」

 それなら問題なしとおもったが、

 何かいやな気がしてならないのはなぜなんだろう・・・。


 次の日、僕はルナを連れて区役所にいくことにした。

 もちろん高校生に車何ぞ有るわけも無く、

 電車とバスを乗り継いでの移動だ。

 

 親が日本に居た時は

 車でいろいろなところに連れて行ってくれたが

 僕は高校生になり、親が海外出張に行くことが決まって、

 僕も連れて行こうとしたが僕は日本に残ることにした。


 結局、海外の学校に行っても言葉がしゃべれない。

 現地の日本語学校に行っても単位はもらえない。

 それなら日本の高校に行って

 勉強したほうがいいということになり、

 僕は一人で日本に残り高校生活を始めた。


 でも今はルナが居る。

 同い年だけど妹のように思えてならない。

 なぜかルナを大切に守ってあげないといけないという気持ちだった。


 市民課に行き戸籍謄本か抄本をもらうこと、

 マイナンバーを取得することが条件であるけど僕はまったく気が乗らない。

 なぜかというとなにも良い案が浮かぶことが出来なかったのだ。


 市民課に行って戸籍謄本(抄本)の紙を取り、

 取得理由のところに『高校転校のために戸籍謄本が欲しい』と

 ルナは書き込んでいた。それで待つこと一時間。

 窓口の職員にルナが呼ばれた。

 僕も行こうとしたがルナに止められてしまった。


 窓口にルナが座り、窓口の人と男性職員と何か話をしていた。

 そしてもう一通、何かの紙を渡されて、

 ルナはその紙にもなにか書き込んでいた。

 僕が戸籍謄本、抄本の用紙に書き込む時に、

 印鑑を渡したままになっていたので、

 その印鑑を何箇所か押している姿が見えていた。


(戸籍が無いってことなら『ありません』といわれて普通は終わるよな?)

 なにやらすべての書類を書いてしまったようで、

 職員が書類の確認をして書類を奥に持って行ってしまった。

 ルナは窓口の椅子に座り待っていた。


 僕は待合の椅子に座っていた。そして一時間位経過したころ、

 ルナのところに職員が何か紙を持ってきて話をしていた。

 紙は3枚くらいあるように思えた。

(普通は戸籍謄本でも1~2枚くらいで抄本なら1枚だよな?)


 その後にまた職員と話をして、またなにか書類を書き始めていた。

 何のやり取りかぜんぜん僕にはわからずにルナが戻ってくるまでの間、

 僕はずっとルナを見守って、椅子に腰掛けているしかなかった。

 ルナが戻ってくるまでさらに一時間が経過していた。


「すべて終わったよぉ♪ 由真ありがとうね♪」

 僕は驚いてルナに聞いた。

「すべてが終わったって戸籍が取れたの?」

 ルナは笑顔でうなずいていた。

「ルナの戸籍、僕に見せてくれる?」

 ルナは、「いいよ♪」って言って、

 僕に手に持っていた封筒を渡してくれた。


(ルナの両親の名前ってなんていうんだろう。兄弟姉妹とかいるのかな?)

 などと考えながら戸籍を見た。

 両親の欄に僕の両親の名前が書いてあり、

 長男のところに『由真』、長女のところには『瑠奈』、と記載されていた。

 そしてもう一通は住民票で、

 今の僕たちが住んでいる家の住所が記載されていた。

 そしてもう一通がマイナンバーカードで、

 用紙からはがすタイプのカードが入っていた。


「だから大丈夫だって言ったでしょ?」とルナは笑顔で僕に話した。

「ちょっとまって!本当にどういう意味なのか本当にわからないんだよ。

 同じ生年月日で僕とルナが同じ戸籍に入ってるって意味わからんじゃん!」

「そういうことなら、私が由真の妹ってことでいいよ。」

「いやいや、そう言うことを言ってるんじゃなくてさ!」


 戸籍を良く見ると瑠奈は養女ということになっていた。


 僕たちの戸籍に養子としてルナが入った?

 それでもルナの本当の戸籍がなければ

 養子に迎え入れると言うことは無理だ。

 ルナの戸籍から養子として僕たちが迎え入れると言う、

 手続きが必要になるはずだからだ。

 

 戸籍を作って、養子の手続きをしてうちの戸籍に入り、

 そして住民票を作った。

 戸籍をつくった時点でマイナンバーを取得した?

 そんなことをこの数時間で出来るとは思えない。

 一体どうやってやったと言うんだ?


 僕がすべての書類に目を通し呆然としていると、ルナが一言言った。


「えへへ♪ それは内緒♪」

 首をかしげ人差し指を口元に持ってくるあのポーズをした。


「健康保険証の手続きも終わったから

 仮の保険証ももらってきたよ。

 実際の保険証は後日、

 家に送付するとか言っていたから由真お願いね。」

 ルナはどのように戸籍を手に入れたのかさっぱり判らずに、

 無事に(?)終わった。


「でもさルナ、一言だけ言っていいかな?」

「なに?」って首をかしげて聞いていた。


「僕とルナが同じ戸籍に入っていて、

 ルナが養女となって妹になったわけだよね?

 この戸籍を百合先生に見せたらなんて言うだろうね?」


 ルナはそこまでまったく考えていなかった・・・と言う風な顔をした。


「まぁ そういうことはなんとかなるんじゃない?」

 僕の心配をよそに、ルナは簡単にそう言ってのけた。


 その時に、いきなり百合先生からスマホに連絡が入った。

『百合先生、こんにちは。どうかされましたか?』

『由真。今、何処にいる?』

『昨日、百合先生に言われたとおりに、

 戸籍謄本と住民票とマイナンバーを区役所に取りに来てるんですよ。』

『いきなりで悪いんだが、

 明日の朝8時半に瑠奈を連れて学校に来てくれないか?』

『明日っていきなりすぎません? なにがあったんですか?』


『校長との面接と入学試験があるに決まってるだろ!』

『それってすごく早くないですか? 明日なんですか?』


『絶対に由真と瑠奈は学校に来い! 来ないと入学は認めない。 以上!』


 僕はルナを見つめていた。

「ルナ、明日 入学試験と校長との面接があるってさ。」

 ルナもさすがに動揺している気がした。


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