表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ある星のうた  作者: 福田有希
第三部;特進科
44/61

第三部第三話;特進科

10月1日から僕こと、村山由真と、

そして妹達、瑠奈、有香、美里の4人は特進科に移動となった。


一年生内でのいざこざももう無くなり、

今ではもうすっかりと平穏な学校生活となっていた。はずだった。

他に何が問題がある?と思うことであろうが、

そもそもなぜ『特進科』というものが出来上がった経緯が知りたい。


そこで話をずっと前に戻さないといけない。


僕が特進科というものを知ったのは、ルナの編入学試験のときだった。

試験内容がとても凝縮されすぎていて試験になるのか?と疑問に思ったときだった。

百合姉さんこと皆藤百合先生が僕の横に来て、受験内容のことを聞いてきた。

一教科1時間30分の合計5教科の試験だった。


教科の試験内容は、

・英語はヒヤリングテストと書き込みテストの二種類

・数学は微分積分と代数幾何の二種類

・社会は世界史、日本史、地理と現代史の四種類

・理科は科学と化学と物理と生物と地学の五種類

・国語は現代文、漢文、古文、小論文の四種類


これを各1教科を1時間30分(90分)でやると言うものであった。


そしてルナがテストを終えた感想が、「合格点が決められていないテスト」と言った。

後にこのテストは「学力テストではなく能力テストだった。」と百合先生は言った。


学校では一人一人の学力や、知能、能力などを調べている。

もちろん家庭環境のこともすべて調査を行っている。

学校の言い訳としては、生徒を守るために生徒を調査していると言っている。


そこから有香のことや美里のことがあり、僕は特進科のことを忘れていた。


次に僕が特進科を頭によぎった時は、理解度テスト2日目のときであった。


「どんな環境下でも集中できる人材であるかどうか。」というルナの言葉が引っかかった時だった。

「つまりテストと証して常に集中力が継続できるか。

 そしてどんな環境でも物事をやり遂げることが出来るか。」

ルナの言葉から僕が導き出した答えだった。


『学力主義ではない完全な実力主義(能力主義)の世界。』


自分の中ではまさかな。とは思ったが、実際にこうして特進科はできていた。

そしてあの理解度テストこそ、この特進科コースの入学試験でもあったと僕は思った。


上位10人まで張り出される予定だったと言うことは、

このテストの本当合格者、つまり特進科に行くことができた人数は本当は10人であったと思われるが、

村山由真、瑠奈、有香、美里の4人だけが合格をした。

そして僕たちの担任で保護者である皆藤百合先生も、特進科の担任と決まった。


ルナと有香の編入学試験の時から、この特進科コースにかかわっていたと考えると、

百合先生は本人は知らずとも、校長や教頭の中ではもう

特進科担任に決められていたのかもしれない。


僕が判っているものや僕の憶測で考えたすべてはここまでである。

特進科コースが一体どういうことをやるのかはまったく知らない。

特進科専用の教科書と言うものが無いからである。

つまりのところ今の現状で判っていることといえば、

教科書は他の一年生と同じものを使うと言うことだけが判っていることである。


「さてと一体どういうことやら。」

移動も無事に終えて広い教室に、たった4つの机。

僕はいすに腰掛けた。

「さすがに窓際とか壁側と言うわけには行かないわね。」有香がそういった。

「これだと真ん中の列に2つ分、教壇のところから

 ちょっと離れた位置が一番黒板が見やすいわね。」美里が真剣に分析していた。

「私は由真の横で決まり。」ルナは僕の横なら何処でも良いという風であった。


そして教壇から2つ分の机が離れた位置に4つ並んで机が置かれたのだった。

教壇から僕たちを見ると右側から、有香、由真、瑠奈、美里という並び方になっていた。


教室で待っていると百合先生が教室にやってきた。

「今日から特進科担当になった皆藤百合だ。と言っても代わり映えのしない連中だな。」

百合先生が僕たちを見てそう言った。


「まず特進科のことについてだが、学力主義ではなく、完全に能力主義だ。」


学力がくりょく・・・人間活動における基礎となる学ぶ力。

能力のうりょく・・・動作や作業などの身体的ならびに精神的行為を行うのに必要な力。


「今までは勉強し、新しいことを学び経験をしていくことを目的として

 『義務教育』という制度ができた。

 そして、教育の「目的および目標」に基づいて学力を測定していた。」


目的・・・なぜ行うのか、why

目標・・・何を行うのか、what


「しかしこれでは問題があった。

 主体性・自律性・協調性・感受性などの測定ができない。ということだ。

そこで完全能力主義のカリキュラムの必要性がでてきた。

そして我が私立城北第一高校では『特進科』を設立しそれらを行うこととした。」


「能力と言っても沢山ある。

 アビリティー ability・・・能力、技量、力量、才能

 キャパシティ capacity・・・包容力、度量、才能、知的能力、理解力

 ケイパビリティー capability・・・才能、手腕、伸びる素質、将来性

 パワー power・・・力、能力、体力、精神力

 そこでここでは特に『才能』を磨き上げることを第一の目標とする。」


才能・・・物事をうまくなしとげるすぐれた能力。技術・学問・芸能などについての素質や能力。


有香がよくわからない。という顔をして言った。

「要するにスキルを磨いて、技術や技能の向上に励むってこと?」


「主体性・自律性・協調性・感受性を求めることと、

 才能を磨き上げることとに繋がることがよく判らない。」と美里が言った。


「要するに、技量、包容力、度量、理解力、素質、精神力などを磨いて、

 協調性や感受性などを磨いていこう。という趣旨で作られたと言うことじゃない?」と僕が言った。


「その物事について知っている、理解しているという「知識』の枠からさらに向上して、

 実際に何かを作ったり行ったり、腕を磨いて物事をやり遂げる力を身につけよう。

 と言うことになるんじゃないかな。

 そこから、身につくことってそれだけでなくって、

 みんなとやっていこう、こうやって見たらどうだろう。っていう

 さまざまなことに広がっていって自分自身の才能を向上させていきましょう。

 ってことじゃないかな。」

なんとなくではあるがルナの言っていることがしっくりくるような感じがしてるが、

僕も実際に意味がよくわからなかった。


「でもさ、教科書から勉強するって言うことは変わらないんでしょ?

 これって知識の向上ということじゃないの?」

有香がさらに疑問を呈した。

「でもそこからでは『主体性・自律性・協調性・感受性』は身につかない。」と言って美里が考えていた。


「なぜ身についていないかと言うのは、知識として考えているからじゃないかな。

 『その物事について知っている、理解している。』だからといって、

 『身についている。』と言うことにはならない。」

僕は一つ一つの絡まった糸をほぐすように考えて言った。


「教科書から知識を得て、そして身に付けましょうって言葉で言うのは簡単だけど、

 身についてるかなんてわからないよ。」有香が言った。

「今までの教育方法だったら身についたか判らない。それを身につくようにしようとしている?」

美里はもう話がこんがらがってきていた。


『一つの事柄から、さまざまな分野に無限大に知識が広がっていくの。』

美里の頭にルナの言葉が思い出された。


「工程、解き方、やり方という中間肯定の重要性・・・。そこから導き出されていく答え。」

そこからどう才能とか能力主義とか、主体性・自律性・協調性・感受性に繋がっていくのか判らない。

でも美里にはそこに行き着いていくように感じていた。


『その中間にある工程、やり方、解き方のほうが一番重要じゃないかってそう思ったの。』


「もしかしたらこの特進科って教科ごとに勉強するのではなくって、

 一つの事柄から次々と問題を広げていって、さまざまな分野に無限に広げていく科目では?

 そこに主体性・自律性・協調性・感受性などの多くのことを求めていく。」


そんな無茶なカリキュラムがあるわけが無い。さまざまな分野に広がりすぎて行ってしまうだけだ。

広がりすぎてしまって浅く、薄くなりすぎてしまう。

美里はそう想いたかった。


「もし宇宙のようにさ。一つの出来事からとても大きな世界に広がったらいいね。」とルナが言った。


この特進科でどんな世界が広がるのだろう。

規模が大きすぎて、とっても大きすぎて美里にはどのように進んでいくのか見当がつかなかった。


「宇宙のように広がっていくのか判らないけど、中間工程を重要視することなら僕はうれしいかな。」

僕はなぜか心が高まっていった。


「もう一つ、言わなければいけないことがある。」百合先生が言った。


「この特進科はあくまででも試験的な運用であって、正式に決まったわけではない。

 つまりお前達4人が先駆者となって作り上げていくと言うことだ。」

百合先生の言葉に僕たちは驚いた。

「ちょっと待ってよ。これって文科省から認められて決まってるんじゃないの?」と僕が言った。

「由真、こんな学科を文科省が普通に認めるわけが無いだろう。」と百合先生が普通に答えた。


「どのような特進科が出来上がるのか。お前達が作り上げていくんだ。」


基本プロセスのみ与えられて、どのように進んでいくのかを生徒にゆだねていく。

僕たちは本当にどのように進めたらいいのかわからなかった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ