第二部第十七話;親権と戸籍
この物語を『田辺美里の物語偏』にいれるかどうか迷ったのですが、
有香のこともあり、ここに4人の絆が誕生したという点で
『田辺美里の物語偏』からはずすことにしました。
田辺美里がこの家に引越ししてきた。
さすがにそういう展開になるとは気がつかず、
僕はあたふたとしていた。
部屋をまず掃除機できれいにして、田辺の荷物を全部運び入れた。
そして教科書類や参考書などを本棚に全部入れた。
そして本棚が一つが教科書や参考書で全部うまった。
有香が「なんかデジャブのように感じるね。」と言った。
確かに有香の引越しのときも僕は本棚を一つ、
教科書や参考書で埋め尽くしたことがあるからだ。
「ねえ。田辺、教科書類とかは終わったけど、他にやることは無いか?」
と言った。
「うーん。後は洋服とかタンスやクローゼットに入れるだけだから
もう大丈夫だよ。」
田辺がそういうと、僕のところに有香が来て僕に言った。
「あのダンボールにブラや下着類があるけどやる?」
「それは有香が来るときに聞いた。二度も言わなくてもいい。」
と言って僕は一階に降りた。
一階ではルナが台所で夕ご飯の準備をしていて、
百合姉さんはお茶を飲んで居間でくつろいでいた。
「大体の荷物は片付けたよ。後は田辺と有香でやるみたい。」
「後は女の子同士でやると言うことか。まぁいいだろう。」
僕は一つ気になることがあった。
「百合姉さん、田辺には弟がいたはずだけどどうなったの?」
「両親が親権を放棄したのは美里だけだ、弟の親権は放棄されていない。」
「それで田辺の親権はどうなったの?」
「そこなんだよな。問題は。」と百合姉さんが答えた。
「田辺美里は今は親無しと言う状態になっている。」
「高校生で親がいない状態ってできるの?」と僕は言った。
「未成年である以上は無理だ。
それに今、拘留中とはいえども親が生きている。」
「親権変更の裁判が必要だと言うことだね。」
「ここに両親の田辺美里の親権を放棄する。という証書を持っている。」
「つまり両親はもう二度と田辺美里を育てる気は無いということか。」
「そこで今の田辺には親がどうしても必要な状況であり、
親の親権放棄の証書はここにある。」
「誰か田辺の親になってくれる人、大至急募集中だと言うこと?」
「言い方は悪いがそういうことになる。」
「それで候補はいるの?」と僕は聞いた。
「今、私はその返事待ちをしている。」
そうしていると家の電話が鳴った。
『はい、村山です。』と僕は受話器を取り返事をした。
『由真か、元気にしてるか?』
『お父さん?どうしたの?って今まだ日本にいないよね?』
『もちろん日本からは掛けてはいないぞ。』
『急にかけてきたから何かと思ったんだけど?』
『百合から大切なお願いがあるって聞いていてな。
それで電話を掛けたんだよ。百合はいるか?』
『うん、今、百合姉さんは居間でくつろいでるよ。』
『そうかそれなら百合に変わってくれないか?』
僕はすぐに百合姉さんを呼んで電話を変わってもらった。
百合姉さんは僕に(あっち言ってろ!)と人払いされたので、
僕はルナと一緒に途中までやってあった、夕ご飯の支度をし始めた。
そしてお風呂の準備もした。
「百合姉さんも食べると考えて、
今日は5人分作らないといけないね。」と僕はルナに言った。
「5人分・・・、それは大変かも。」とルナが言った。
夕ご飯を作り、豪華な食事が食卓を飾った。
「いつもより多いとすごく豪華な食事に見えるね。」と僕は言うと、
ルナはすごく嬉しそうに「うん!」と答えた。
田辺も有香も何とか部屋の片づけがひと段落着いたようで一階に降りてきた。
そして手を洗ってキッチンに来ると豪華な食事が準備されていた。
「うわ!すごい!なにこれ!」有香がびっくりして言った。
「こんな豪華な食事って初めて。」と田辺が言った。
百合姉さんも電話を終えてみんなのところに来た。
「百合姉さんも食事を食べていくよね。」と僕が言った。
「そうだな、私もお呼ばれしようかな。」と百合姉さんが言った。
5人もいると本当に食卓がにぎやかになる。
本当に楽しい空間が出来上がっていた。
美味しい食事、そして何よりみんなの笑顔がそこにあった。
「やっぱりこんなにたくさんいると違うよね。」有香がそう言った。
「私、本当にすごく嬉しい。
こんなに楽しい食事って初めてだから本当にありがとう。」
田辺がそういった。
「田辺、これからもこのような食事ができるようになりたいか?」
百合姉さんが言った。
「なりたいです。」とそう答えた。
「みんなに聞いて欲しいことがある。」百合は僕達4人に言った。
「田辺には、まずこれを読んで欲しい。」といって一通の証書を渡した。
田辺はそれを読んで辛い顔をした。
「田辺はそこに書かれている日、
つまり昨日から親権放棄され親がいなくなった。」
ルナと有香が驚いていた。
「親権って放棄できるものなの?」と有香が言った。
「いや、親権の放棄は絶対にできないよ。でも田辺は普通とは違っている。
誘拐されて親にされていたんだ。戸籍も親が無理やり作ったと思っていい。
そして両親も田辺を育てる気がないと言っている。
それで百合姉さんは新しい親の元に親権をすぐに移せるように、
今の親から親権の放棄の書類を書かせたんだよ。
今でも親権は今の親の元にある。」
と僕は百合姉さんから聞いていたことをルナと有香に話した。
「つまりこれから裁判をして
次の新しい親の元に親権を移すことになるんだね。」と有香が言った。
「新しい親って今から見つけるの?」ルナが聞いた。
僕も新しい親がどういう人なのか知りたいと思った。
「今、先ほど親になっても良いと言う人が決まった。」
百合姉さんがそう言った。
「田辺美里、お前に聞きたいことがある。」
「なんでしょうか?百合先生。」田辺が答えた。
「今はすぐにその親とは会えないが、兄妹が住んでいるところがある。
そこの娘にならないかと思っている。」
「私に兄と妹ができるんですか?」
「うーん。厳密に言うと弟と妹になってしまうのかな。」
と百合姉さんが言った。
田辺は考えていた。
その弟や妹が私のことをどう思うのだろう。
ちゃんとうまくやっていけるのだろうか?
「私、行きます!その家で幸せに生きたいと思います!」田辺は言い切った。
「そうか。明日、私は裁判所に親権の移動の手続きをやる。
私がその親に代わって手続きをする委任状も今日中に送られてくる。
田辺美里は裁判所に呼ばれて、そこで意思確認を行う。いいか?」
「はい、大丈夫です。」と答えた。
「よし決定だ。」と百合姉さんが無事に決まったと言うことで安堵していた。
「それでその弟と妹にはいつ会えるんですか?」田辺は心配になって聞いた。
「もうここに居るだろ?」百合姉さんはそう言った。
「ここに居る?」田辺が周りを見た。
「え?もしかして由真君と瑠奈さん?」びっくりしてそう言った。
「もう田辺って呼べなくなったな。美里。」僕はそう言った。
「私にお姉ちゃんができたの?やったぁ!」ルナが喜んだ。
「お前はもう田辺美里じゃない、これからは村山美里として生きていくんだ。」
百合姉さんがそう言った。
「いいなぁ、私もここの娘になりたいよ。」と有香が嘆いた。
「江崎有香。実はここにもう一通の書類がある。お前宛だ。読んでみろ。」
と言って百合姉さんが有香に渡した。
僕とルナは(何だろう・・・?)と顔を合わせた。
「え?これって本当なんですか?百合先生!」と有香が興奮して言った。
「有香が今、本当に幸せに暮らしているのなら、
その家で幸せになってくれるのならと言ってお前の両親が渡してくれた。」
その書類は有香の親権移動の裁判所命令書類だった。
百合姉さんは現在拘留中の有香の親に逢い、
有香の両親に話していたのだった。
「お前ら4人は村山家の子供たちになった。
まぁ美里はこれからだが、確実に裁判は通るだろう。」
「村山美里、村山有香、村山由真、村山瑠奈、お前達は兄妹姉妹となった。」
僕達四人は顔を見合わせて喜び合った。
「美里、お前が一番上のお姉さんになるのだが、大丈夫だな。」
「はい!私たちみんなと助け合って、みんなで一緒に幸せに生きていきます!」
そう強く言った。
お互いに手を結び合って僕達は誓い合った。
「ところでさ。由真と瑠奈ちゃんって誕生日いつよ?」と有香が言った。
「僕とルナは同じ誕生日なんだ。」と僕が言うと、
「2003年2月2日だよ。」とルナが言った。
「マジで? 由真と瑠奈ちゃんって私より上だと思ってた。
しかも2人とも同じ誕生日だったの?あんた達って本当に似てるわけだ。」
有香がそういうと、今度は「美里は誕生日はいつなの?」と聞いた。
「私は2002年の10月10日だよ。」と美里が言った。
「え? 私は2002年の5月5日なんだけど・・・。」と有香が言った。
「百合姉さん、一体これはどういうこと?」と僕達は聞いた。
「お前達、美里のことをしっかりと調べたんだろう?」と百合姉さんが言った。
僕は美里は捨て子だったと言うことを思い出した。
「美里は捨て子だった。誕生日がわからず、
施設で拾われた日を誕生日とした。」
「ちょっと待って。拾われた日が誕生日ってことは
捨てられた時って赤子だったの?」と僕がきいた。
「そうだまだ一歳にも満たない赤ちゃんのときだったそうだ。」
「つまり美里には本当の誕生日と言うものが今まで無かったんだ。」
百合がそう答えた。
「でも百合姉さんははっきりと美里が一番年上だと言い切ったよね?
どうして?」
「それは言うことができない。」と百合姉さんが言った。
僕は美里の実の親をもう見つけているということを悟った。
「それで美里の本当の誕生日っていつなの?」有香が聞いた。
「5月5日のこどもの日に生まれていることがわかっている。」百合が答えた。
「えっとそれって・・・。」美里が自分の本当の誕生日を聞いて驚いていた。
「5月5日って言ったら、私と同じじゃん!」有香が驚いていた。
「それで何で美里がお姉ちゃんなの?」ルナが聞いた。
「なるほどね、誕生した時間で
美里のほうがちょっと早かったと言うことだね。」僕が答えた。
百合姉さんは何も答えなかった。
「さて私はもう帰るよ。明日のこともあるしな。」百合姉さんが言った。
「百合先生、本当にありがとうございました。」美里は本当に感謝していた。
「これから百合姉さんとなるんだね。本当にありがとう。」有香が感謝した。
「お前達ももう風呂に入ってさっさと寝ろよ。遅刻したら絶対に許さないぞ。」
そう言って百合姉さんが帰っていった。
「私たち本当に兄妹姉妹になったんだね。」
美里は感動していた。
「僕は基本的に弟になるんだろ?これってなんていうんだ?」
僕が疑問に思った。
「姉、姉、弟、妹? でも瑠奈ちゃんと由真は
一緒の誕生日だから姉、姉、姉、弟?」
有香がなにかこんがらがっていた。
「由真は私のお兄ちゃんでいいの!」ルナが答えた。
「そうだね。由真は年下なのに一番上のお兄ちゃんみたいだから
お兄さんでいいよ。」有香がそう言った。
「私はやっぱり一番年上?」美里が気になって言った。
「私たち4人兄妹でいいよ。もう。」有香がまとめてしまった。
「さてお風呂に入ろう!由真お兄ちゃんは後ね。」
と言ってルナは美里と有香を連れて行った。
「ちょっと瑠奈ちゃん!ってもぉ・・・。」
と笑いながら美里は一緒にお風呂に入って行った。
4人兄妹か。まさかこういう展開になるとは思っても居なかった。
僕は百合姉さんに電話をかけた。
『どうした?もう兄妹喧嘩でも始めたのか?』と百合姉さんは言った。
僕は『妹達は三人で仲良くお風呂に入って行ったよ。』と答えた。
『妹達か。お前達らしくていいな。』そう百合姉さんは答えた。
『美里の本当の両親をもう見つけているんだろ?』僕は百合姉さんに聞いた。
『さすがに察しがいいな。由真。』
『一体誰なんだよ。美里の本当の両親って。』
百合は考えているようだった。
『村山勇人。 美里は、お前の父親の弟の娘だ。』
『それは本当のことなの?』
『間違いない。美里は本当に村山家本家の娘なんだ。』
僕は愕然としてしまった。
『絶対に秘密にしておくんだぞ。これは村山家本家の問題なんだから。』
『わかった。 百合姉さん本当にいろいろとありがとう。』
僕は電話を切って何もいえなくなってしまった。
美里が村山家本家の娘・・・。
絶対に秘密にしなくてはいけないと心からそう思った。




