第二部第十四話;放課後の授業
この第十四話と次の第二部第十五話;施設で一つの物語を作っています。
第十四話は話の本筋のように作っているのでとても大切な回となっています。
そして明日12時の第十五話で由真が行動し、田辺美里の家庭の真実を知ることとなります。
日付が変わってしまいますが受け止めてくれるといいと思います。
次の朝、僕が下に降りていくと、
ルナと有香が食事の支度をしていた。
いつもの元気はなく暗い気持ちでどんよりとしていた。
昨日のこともあるしな。
と僕は顔を洗って椅子に座った。
ルナも有香も寝ていない様子で、
目が少し赤く腫れぼったかった。
僕達は食事をして学校に向かった。
ルナも有香も一言もしゃべることをしなかった。
「おはよう 由真君、瑠奈さん、有香さん。」
僕らは振り向いた。田辺美里が登校してきた。
「おはよう田辺、いつもこの時間に登校してきたっけ?」
「いつもこの時間だよ?
逆に由真君たちがちょっと遅いんじゃないかな?」
時計を見たら確かにちょっといつもより遅く登校していた。
「瑠奈さんと有香さんはどうしたの?今日はすごく元気ないみたい。」
「昨日ちょっといろいろとあってな。」と僕はそういった。
「由真君!女の子を苛めてはいけませんよ!」と田辺は言った。
「苛めてないよ!ちょっと問題があって話し合っていたんだ。」
「ふーん。そうそう今日タブレット持ってきた?」
「水野幸久先生のところに持っていくんだっけ?
ちゃんと持ってきたよ。いつ持って行く?」
「そうだなぁ。お昼休みに一緒に持って行くって言うのはどう?」
「それなら一緒に持っていこうか。運営委員会室だったっけ?」
「そう、たぶん運営委員会室に行けば水野先生に会えると思う。」
「瑠奈さん、有香さん、本当に大丈夫?」
田辺が気遣ってくれている。
「うん。大丈夫・・・なのかな。」
有香がそういった。
「ねえ田辺さん、あのね!」
ルナが何か言おうとしたけど僕の顔を見て言葉を止めた。
「どうしたの?瑠奈さん 気分でも悪いの?」
「そういうんじゃなくってえっとね・・・。」
ルナは何か言いたそうだったけど、何も言えなかった。
「そういえば今日の放課後に由真の家に来るんでしょ?」
有香がつかさずにそういった。
「うん。今日から放課後にテストのレクチャーと
お勉強を教えに来てって由真君に頼まれたの。」
「ルナ、有香。ちゃんと聞いてしっかりと
田辺美里先生の言うことを聞くんだぞ。」
「あれ? 由真はお勉強一緒にやらないの?」ルナが言った。
「僕は別件で百合先生に呼び出されていて、
放課後の授業は受けれなくなったんだよ。」
僕はそういって別行動をとることに決めた。
「え? 由真君はテスト勉強一緒にしないの?」
田辺はびっくりして言った。
「ごめんな田辺、百合先生の呼び出しだから
どうしてもいけなくなっちゃったんだよ。」
「田辺さん!由真の家でお勉強教えて、いろいろと話したいし!」
ルナは僕が何かするとさすがに気が付いた様子だった。
「うん、それじゃ私たち3人でテスト勉強をしようか。」
田辺が了承してくれた。
「さて今日のHRの議題は何だったかな?」
百合先生が言った。
「百合先生!」 岡田哉太が手を上げた。
「岡田、発言を許可する。」「ありがとうございます。」
「本当は先週に発表するはずの、
芸術科目の選択科目のことが話されていません。」
そうだった、ちょうどその発表のときに
僕とルナと有香はA組に通じる通路を通ってしまい
大目玉を食らっていた日だった。
「そうだった、芸術科目の選択科目の発表が全く話されていなかったな。
芸術部門の選択科目に付いては若干多い部活があったが選考の結果、
このクラスは全員選択通りということが決まった。みんなよかったな。」
クラス全員が一安心と言った様子で全員安堵した様子だった。
「百合先生」 美化委員の佐々木 爽子が手を上げた。
「爽子 発言を許可する。」「ありがとうございます。」
「美化委員会で話し合われたことなのですが、
一号館前の花壇の花が枯れかかっているという指摘があり、
そこにみんなで花を植えて行きたいと言われました。
そこでみんなで何か種を持ってきていただきたいと思っています。」
「爽子 座ってよし。」
「全員持ってきても大丈夫なのか?」
「はい、花壇の花を全部植え替えると言うことですので、
かなり多くの種が必要と思います。」
「全員聞いたとおり全員が花の種を持ってくるように。それでいいか?」
「はい、ありがとうございます。」
「百合先生」 学級委員長の田辺美里だ。
「田辺 発言を許可する。」「ありがとうございます。」
「15日から行われるテストの件ですが、日程が決まり、
何の教科かわからずテストすると決まりましたが、
テストの方法も何か変わったと言うところはあるのでしょうか?」
「田辺 座ってよし」
「確かに今回のテストはいろいろと変更点が多かったが、
テストのやり方の変更点はまったく出ていない。
よってテストのやり方は今まで通りと思ってくれて問題ないと思う。」
「百合先生」 僕が手を上げた。
「由真 発言を許可する。」「ありがとうございます。」
「百合先生に依頼された重要な件のことで、
放課後、面談室にてお話したいと思っているのですがよろしいでしょうか?」
百合先生は僕の顔を見た。そして少しの間考えていた。
「どうしても面談室でなければいけないか?」
「できればそのほうがいいと思います。」
百合先生が目を瞑って考えていた。
「わかった。由真 面談室で話し合うことにしよう。」先生の許可をもらった。
ルナは何の話かわかった様子で、
僕をみて(ありがとう。)と言っているようだった。
「明日の議題はもう時間なので明日に決めることにする。
以上でHRを終了する」
HRが終わり有香が僕に話しかけた。
「百合先生から依頼されたことってどういうことなの?」
「とても重要な問題を話し合うのさ。」と僕は言った。
「ルナと有香は田辺から一生懸命にテストのやり方や勉強に集中してくれ。
そしてルナ、わかってるよな。」僕は笑顔でルナに言った。
「了解しました! 由真お兄ちゃん!」
有香は首をかしげた。
午前中の授業が終わり僕は田辺と一緒に、
運営委員会室長 水野幸久先生のところに
運営委員長と副委員長が使うタブレット端末を持っていくことにした。
「でもさ 幸せと久しいって書いて『たかひさ』って読むって不思議だな?」
僕がそういった。
「たしかにそう言われてみたら普通に『たかひさ』とは読まないよね?」
田辺が考えた。
「そうなんだよな。『ゆきひさ』とか『よしひさ』って
読むのが普通じゃない?」
「なにか意味があるのかな?」田辺が意味を考え出した。
僕はちょっと笑って「やっぱり田辺はすごいよ。」といった。
「え?何で?」
「だってそういうこともしっかりとどうしてなのか?
と真剣に考えようとしてるから。」
「だって気になるじゃん。
私って気になると辞書とか引いて調べたくなっちゃうの。」と田辺が言った。
「そこがすごいと思うよ。
だってこんなことに辞書で調べようって思わないから。」と僕が言った。
運営委員長室に着き、扉を3回ノックし扉を開けた。
「村山由真、田辺美里両名、水野幸久先生にタブレットを持参いたしました。」
奥のほうから痩せた色白の人が出てきた。
「持ってきてくれたんだね。見せてくれるかい。」
僕達はタブレット端末を渡した。
「へぇなかなか良いものを見つけたね。田辺さんに頼んでよかったよ。」
水野先生がゆっくりとした口調で話した。
「いえ、これは村山由真君に頼んで決めて頂きました。」
「なるほどね、君があの村山由真君か。副委員長よろしく頼むよ。」
「はい、田辺委員長と共に頑張らせていただきます。」
そういう話をしているうちに、
もう専用ソフトのインストールが終わったようだった。
「はいこれもう終わったから、常に持ち歩いていることだよ。」
「先生!これはどういうソフトなのでしょうか?」と僕は疑問に思い話をした。
「一種のセキュリティ付きのメールソフトだと思っていいよ、
生徒会や学校で決まったことは絶対に秘密のものがある。
これは裏にタッチパットと同じようなセンサーが
はじめから組み込まれている。
そこに自分の学生証をかざすとメールが読める仕組みだ。
しかし全員に見せられないものもある。先生用、警備用、学生用とね。
これはかざした認証カードのレベル区分によって、
読める人と読めない人を区別するメールソフトだよ。」
「それって基本的に学級委員長や副学級委員長が読めるメールは
限られてしまうのではないでしょうか?」
僕が不思議に思ったことを言った。
「今、学校内で各委員会長の権限をあげようという動きがあってね。
学級委員長や副学級委員長の権限も上がってくる、
もちろん責任も大きくなるがね。だから大丈夫だよ。」
それでは私は食堂に行くから君達も食事を取ってきなさい。
午後の授業、頑張ってください。
僕らは水野先生と別れた。
「なんか気味の悪い先生だな。」と僕が言った。
「まぁ雰囲気はいつもあんなかんじかな。
でもすごく頭がよくて工学博士らしいの。」
確かにこれを見ただけで中のメモリ容量の増設が行われているのが
ばれているようだった。
しかも、この機種が認証センサーが付いていることまで
見破ってしまっていた。
「さて一緒にご飯食べようか。
ルナも有香もあそこに居て食べているようだしな」と僕が言うと、
「え?一緒にご飯を食べて大丈夫なの?」と田辺が言った。
「大丈夫に決まってるだろ?メニュー決めてさっさと行こう」
ルナと有香が(こっちこっち)ってしていた。
田辺がなにか恐る恐る一緒のテーブルに座って食べ始めた。
僕には田辺の行動にすごい違和感を感じた。
午後の授業も無事に終わり、僕は百合先生のところに向かった。
ルナと有香と田辺は一緒に家に向かった。
「私、他の人の家にいくのって初めてでドキドキする。」田辺がそういった。
「え?放課後ってどうしてるの?」とルナが聞いた。
「学校が終わったら、まず図書室に行くの。
それで本を読んで午後6時半ころになったら帰るの。」
「毎日、図書室に行くの?すごいね」有香が聞いた。
「あまり家に早く行きたくないんだよね。
だからなるべく遅く帰るようにするの。」田辺が言った。
「私たちなんて用事がなかったら
二人で一緒に帰っちゃうもん。すごいね。」ルナが言った。
「由真君は一緒に帰らないの?」
「由真は時々一緒に帰るかな。買い物の荷物持ちで。」
「荷物持ちだけ?かわいそう。」三人が笑いあった。
「ここが私たちの家だよ。入って入って!」ルナがそういうと、
「有香さんもこの家に住んでるの?」と田辺が言った。
「うん、家はちょっと問題があってね。
由真に助けられて一緒に暮らすことになったんだよ。」有香が言った。
「由真君って人助けが趣味なの?」
「趣味って言うより困ってる人が居たら助けたいという性根なんだろうね。」
有香がそういった。
「私はいつもなんか言われてる気がする。」ルナがそういうと、
「瑠奈ちゃんは妹だからね。兄貴としてしっかりと妹を守りたいんだよ。」
と有香が言った。
「瑠奈さんは妹さんなんですよね。由真君の小さいときも人助けしてたの?」
と田辺が聞くと、
「由真の小さいときは知らないよ、私は養子で入ってるから。」
とルナが言った。
「ねえ田辺さん」ルナが口を開いた。
「今の家に居て本当に自分が幸せって思える?」
「どうだろうね、小さいときは良く遊んでくれたりしてた、
でも弟ができたら弟が可愛いんだろうね。
ずっと親は弟に付きっ切りになっちゃって、
小さいからまだ小さいからって言われて、
しょうがないなって思ってる。」
有香が「さてお勉強しようか!」と言った。
そして出題傾向やテストに必要なことを教えてもらっていた。
そして「あ! もう帰らなくちゃ!」と田辺があわててた。
「え? もう帰っちゃうの?家まで遠いの?」
「うんだいぶ遠いかな。だから本当にごめんね。」
田辺が帰ろうとしたらルナが言った。
「家の人に電話してテスト勉強があるから今日は泊まって行くって言えば?」
「でも明日の教科書とか家にあるから帰らなくちゃ。」
「それなら明日からこっちに泊まっていきなよ。」とルナが食いついていた。
有香がこれは何かあるなと思って言った。
「教科書は3日分あればいいから持ってこれると思うし、
明日から泊まっていきなよ。」
田辺は少し考えて、
「うん、わかった。 明日からテストまで思いっきり頑張って行こうね。」
そう言って急いで帰っていった。
「瑠奈ちゃん これで大丈夫なの?」
「大丈夫だよ、後は由真が絶対にやってくれるから。」
(由真と瑠奈ちゃんってなんか似てるところがある。
というよりなんかそっくり。
兄妹だから?違うこの二人には違う何かがある。 )
有香はそう感じていた。
次の日の放課後も田辺さんが勉強を教えることになった。
「親に言ったら、今日は大事な来客があるからって
お泊りを許可してもらった。」
それで教科書とかノートとか持ってきちゃった。
大きなボストンバック一杯に教科書が詰まっていた。
「3日分ってこんなにあったんだ。」瑠奈ちゃんが驚いていた。
「お泊りって初めてだから、
何を持っていいのかわからなかったからとりあえず詰めてきたんだよ。」
「田辺さんってお泊りって初めてだったんだ。
だってみんなからすごく好かれているから、
いろいろとお泊りに呼ばれているのかと思った。」有香が驚いて言った。
ルナは感じていた。
(由真お兄ちゃん、頑張ってね・・・。)
「さてとお勉強を頑張りますか!」
有香の一声で「よし!頑張っていこう!」と奮起した。
ルナと有香は学校のテスト方法や出題傾向などを聞き、
三人で勉強に取り掛かっていた。、
夕ご飯の時間になり一休みということで夕ご飯にすることになった。
そして3人で夕ご飯の準備に取り掛かった。
「へぇ 田辺さん料理上手なんだね。すごくうまい手つき。」
「もう、由真君と同じこと言うんだね。」田辺が笑って言った。
「由真にご飯作ってあげたの?」ルナが驚いて田辺に聞いた。
「違うよ。この前の日曜日にね。学校のものを買いに行ったの。
そのときにお昼にお弁当作って持って行ったの。」
「由真はすごくおいしいって言って食べてくれたんだね。」有香がそういった。
「うん ものすごくいい笑顔で『すごく美味しい。』って言ってくれたの。」
ルナは「それを聞いて田辺さんはどう思ったの?」と言った。
「私って自分の食事って自分で作って食べていたの。
でも初めて人に食べてもらって美味しいって言われて本当に嬉しかったよ。」
あのときのことを思い出しながらそういった。
「自分の料理を人から美味しいって言われると、
本当に嬉しい気持ちになるよね。」有香が言った。
「田辺さんの親は何で作ってくれないの?」ルナがそういった。
「もうだいぶ前から作ってくれなくなっちゃったな。
私、朝は早く家を出るし帰りも遅いからかな。」
「そうだね、田辺さんの家ってすごく遠いからね。」
ルナがいきなり言い出した。
「どうして私の家を知ってるの?」田辺は驚いて言った。
「田辺さんの家に私たちは行ってきたの。
そして田辺さんの家での待遇も私たちは実際に目にしてきた。」
「そうして昨日と今日で由真は百合お姉ちゃんと話をして、
今日は田辺さんの家に行って話してるところ」
「私を騙したの?」田辺が言った。
「違うよ。田辺さんを助けるためにそうしたんだよ。」
ルナと有香がそう答えた。
ちょうどその時に、車が来て百合と由真は家に帰ってきた。
「お帰りなさい。由真。」有香が由真の顔を見て何かを感じた。
「お帰りなさい。百合お姉ちゃん。由真お兄ちゃん。やっと終わったんだね。」
ルナがそういった。
由真はルナの顔を見て軽くうなずいた。
「百合先生!由真君!ちゃんと説明してくれる?どういうこと!」
田辺が怒りをぶつけるように言った。
「田辺 落ち着け!落ち着くんだ。
それを今から何が起きたのかをちゃんと話す。
かなり辛いことだ。本当につらいことだが田辺、
お前はしっかりと聞かなくてはいけない。」
「何があったのかはっきりと言って下さい。大丈夫です。百合先生!」
田辺はと言った。
「由真、お前はもう休んでいいぞ。本当に良く頑張った。」
百合先生は由真にそういった。
由真は凄く辛そうで聞く気にもならない感じで、
自分の部屋に行った。
「百合お姉ちゃん、私はお兄ちゃんに付いています。
有香ちゃんは聞いていていいから私に任せて。」
「わかった瑠奈 お前は由真に付いていってやれ、
あと食事や飲み物も持っていってやってくれ。」
「はい、百合お姉ちゃん、わかりました。」
そう言って由真と瑠奈は二階へ上がって行った。
「有香も聞くか? どうなっても知らんぞ。」
「聞きます。田辺さんがこれからどうなっていくのかも知りたいですから、
聞かせてもらいます。」
「田辺、先ほどお前の両親は警察に逮捕されて連行されていった。
そして帰りに連絡があり、お前の親権も放棄された。
明日から施設に移ることになった。」
「両親が逮捕? 親権放棄? 一体、何が起きたんですか?」
田辺はどういうことかわからなかった。




