第二部第十話;田辺美里
この第十話から第十六話まで「田辺美里の物語偏」がスタートします。
田辺美里の過去や環境などなど悲しい物語が始まります。
いつものように僕は朝6時に起きた。
目覚ましのベルにいつも起こされ僕はむかついていた。
眠い!毎日思うことなのだがとにかく眠い!
「由真 いつまで寝てるの? 瑠奈ちゃんはもう起きて下にいるよ!」
有香の声が聞こえてくる。
「もう起きた。今から着替えて下に降りてくから待ってて。」
僕はいつもの制服に着替えて下に降りて行った。
「もう由真はいつも遅いんだから。夜はちゃんと寝れてるの?」
有香が心配していた。
「ちょっと寝つきが悪いかな・・・なんか寝ようとしても寝付けない。」
僕がそういうとルナが心配して僕の顔を見た。
「由真、どこか病気?」
「病気じゃないよ、寝つきが悪いだけ。」
僕が椅子に座って食事を始めた。
「そういえば今日って芸術科目の選択科目が決まる日じゃなかったっけ?」
有香が思い出したように言った。
「選択科目だから人数が多かったら自動的に人の少ない科目に振り分けられるんだよな・・・」
「え?学校で勝手に振り分けられるの?」ルナがびっくりして言った。
「そういうものって大勢居た科目の人たちを集めて抽選とかしたりするんじゃないの?」
有香も不満そうな顔をして言った。
「昔はそうしてたらしいよ。聞いた話だけど。
でもなかなか決まらないから学校で自動振り分けにしたらしいよ。」
「うわ・・・最悪・・・。」ルナと有香が口を揃えて言った。
三人は朝ごはんを食べ終わり片づけをしてから外に出た。
「やっぱり今日もすごく暑いね。」「夏真っ盛りって言う感じね。」
学校に行きいつものように行くとルナが立ち止まった。
「瑠奈ちゃん どうしたの?」
「この前言った、秘密の通路に行くんじゃないの?」ルナがそういった。
そういえば、いつもの入り口以外から一号館に入れると言っていたっけ・・・。
「こっちに来て。」と僕と有香を誘って一号館の裏に回った。
「ここに細い通路があるでしょ?あそこに通気口があるの。」
ルナは壁をちょっと登って通気口の中に入った。
有香が次に行こうとしたが、僕は横から次は僕が入ると言う感じになった。
「由真、一体何よ!」と有香が怒ったので、次は僕が行くよ。
「なぜ?」と有香が聞いてきたので、「さっきルナが入っていくときに思い切り見えた。」
(なるほど。)と気づいた有香は迷わずどうぞ。と譲ってくれた。
通風孔に入ってすぐに部屋があった。僕はその部屋に飛び降りた。
「有香、降りれるか?」と手を貸そうとしたら「由真は後ろを向いてて。」と言われた。
「ルナ、ここは何処の部屋だ?」と言ったけど、(こっちこっち)ってしていた。
「廊下に出た瞬間にカメラが無いか?」と言ったけど聞かずにルナは進んでいった。
一回廊下に出てちょっと進み、角にある部屋のドアを開けて入った。
そしてその部屋のもう一つの扉を開けて廊下に出て壁伝いに歩いていたら
A組の教室の前に出た。
「ちょっとこれって!」有香が驚いた。
「ルナ、この通路いつ気が付いたんだ?」僕が聞くと、
「ちょっと前に昔の学校の写真と図面が図書館にあって、抜け道があることに気が付いたの。」
「これってちょっとまずくない?」有香が僕に聞くと、
「まずいって言うレベルじゃなく大問題だよ。」
「そこを通って入った私達は?」 三人は顔を見合わせた。
「戻るのもやばいからこのまま教室に入っちゃおうか。」ということになった。
朝のHRが始まり百合先生が驚いていた。
「由真、瑠奈、有香 立て!」
僕らはやっぱり来たかという感じで立ち上がった。
「お前ら三人の登校記録が無いのはなぜだ?」
「私達の登校記録がありませんか?なんででしょう・・・」有香がおどおどして言った。
「村山瑠奈!お前なら絶対に何か知ってるな?言ってみろ。」
「謎の上級生事件で、学校とは無関係の人が一号館に侵入したという事実確認を行いました。」
「そうか。それで進入経路は見つかったのか?」
「はい、一号館のA組に通じる秘密の入り口が発見されまして、実験で今日入ることをしました。」
百合先生は頭を抱えてしまっていた。
もちろん進入経路が見つかったと言うのは大問題だが、
その入り口から入ったと言うことはもっと大変な問題だからだ。
「由真!お前が付いていながら何をしてる!」百合先生は怒っていた。
「申し訳ございません。まさか本当にこの学校内に、
警備に気づかれずに侵入することができる通路があるとは思っていなかったのです。」
僕はそう言うしかなかった。
「瑠奈、由真、有香、後で職員室に来い!その進入経路を実際に検証する。
それとその進入経路については他言無用だ。判ったか!」
「了解しました。」僕ら三人は口をそろえて言った。
HRが終わって一時限目は僕達は授業ではなく、
職員や警備員が揃って進入経路の検証を行っていた。
そして実際に警備室の防犯カメラに映ることなくA組の教室前に進入することが確認された。
これは学校中の大問題になり、警備の再検討が行われることになった。
もちろん僕達三人は百合先生と共に校長室に行き、
ひたすら謝罪してなんとか許してもらうことができた。
「瑠奈、次にセキュリティーの穴を見つけたら百合先生に言えよ・・・。」
ルナも懲りたようで「うん、そうする・・・。」と答えた。
無事に二限目から始めることができた僕達はなぜかクラス中の人気者になっていた。
休み時間になると「この学校に抜け穴って本当にあったんだ!何処にあった?」とか
「他にも見つけてるのか?」とか脅威の質問攻めにあった。
「もうその抜け穴は使えないよ。学校がもう対処してると思うから。」といって
無事に質問攻めから開放された。
午前中の授業も終えてお昼に行くときに「由真君」と呼ばれた。クラス委員長の田辺美里だった。
「どうした?田辺。用事?」と僕が行こうとしたら、有香が僕の腕を引っ張った。
「浮気したら、瑠奈ちゃんも私も絶対に許さないよ。」と言われてしまった。
田辺のところに行くと「えっと・・・私また一年の学級委員長に選ばれたのね。」
「すごいじゃん! おめでとう!」って言ったら、
「それでね・・・副学級委員長に由真君が決まったの。学級書記は佐々木さん。」
「えっと?一年学級委員長も副学級委員長も学級書記もD組が選ばれたの?」
「うん。そうなっちゃった。それの報告をしたくて呼んだの。」田辺はそういった。
「副学級委員長のやることってわかんないけど、何とかやるしかないな。田辺教えてくれるか?」
「うん。私に教えれることは教えるから一緒に頑張ってくれる?」
「了解、助け合えば何とかなると思うから頑張ろうか。これからもよろしくな、田辺。」
田辺の顔がちょっと赤くなった。
「後もう一つ聞いていい?」「田辺、どうしたの?」
「えっとね今度の日曜日ってあいてる?
学校の必要なものを買いに行くんだけど1人なので・・・。」
「そういうことならいいよ、日曜日に何処で待ち合わせにする?」と僕は言った。
「えっと、駅前に朝9時ころってどうかな・・・。」
「駅前に朝9時集合ね、了解。学校のものって言うのなら制服だね。」
「うん、ありがとう由真君。じゃあ日曜日に。」田辺は走り去っていった。
「さてとルナ、有香食事に行こうよ。」と言ったら教室の入り口でじっと見ている2人が居た。
「何の話だったの?」ルナがすごく心配そうに聞いた。
「俺が副学級委員長に決まったんだと言うことだよ。」
「それで?」有香が(他にもあるよね?)と言う感じで聞いてきた。
「買うものがあるから明日の朝9時に駅前で待ち合わせ。」と僕が言うと、
「え! デート?」と二人揃って言ってきた。
「違うよ学校のほしいものがあるから一緒に来てほしいって言われただけだよ。荷物持ちだろ。」
(やっぱり由真を狙ってきたか・・・。田辺美里やるな・・・)有香がなにか考えていた。
午後の授業が終わり帰ろうとした。
「早く帰ろうか、今日は買い物に行かないと食事がなくなるぞ。」
僕達はスーパーで買い物をしていると田辺が居た。
「こんにちは。田辺も買い物?」田辺はルナと有香を見て、
「こんにちは。うん、今日は親に頼まれたものを買い物してる。」
ルナと有香が「こんにちは。」といって、「田辺さんって両親と暮らしてるの?」とルナが聞いた。
「私、里子だから養父母に育てられてるの。」と言った。
「田辺って里子だったの?ご両親は?」有香が聞いてきた。
「親は事故で亡くなったって聞いてる。私が小さいときだったらしいから覚えてないの。」
「親戚は?親戚に預けられなかったの?」有香が驚いて聞き返した。
「そういうことはわかんないの。私は施設にいたから。それで今の養父母が私を育ててくれたの。」
「田辺さんもいろいろとあったんだね。」有香が言って僕は止めた。
「田辺って本当に頑張ってるな。すごいと思うよ。勉強もできるし。」僕はそういった。
その言葉にルナは僕のほうをじっと見つめた。(何か僕、悪い事を言ったか?)
「うん、頑張らないといけないから。それじゃ明日 お願いね。」と田辺が言って去っていった。
「ルナ、田辺に何か感じたのか?」と聞いたけど「今はまだ詳しくわかんない。」と答えた。
「あの子が養護施設にいたってびっくりした。」有香が僕と同じことを感じていた。
「由真、あの子を助けてあげて!」急にルナが言い出した。
「助けろって言っても今の状況が僕には全くわからないよ。
今はどうすることもできない。判るだろ?」
「うん、確かにどうしようもないかも・・・。」ルナが悲しい顔をした。
「できる限り僕は助けたい。だからルナの感じたことを隠さずに言ってほしい。」僕はルナに言った。
「確かにただ助けてあげて!じゃどうすることもできないよね。
できるだけ私も手伝うから。」有香もそういった。
「田辺さん、家があっても親が居ても何も無い感じがするの。」ルナが言った。
「それってどういうこと?」「私のように居場所が無かったって事?」
「居場所って言うより何にも無いみたい。」ルナの言葉の意味が全くわからなかった。
「明日、さりげなく田辺の事を聞いてみるよ。とりあえずそれでいいか?」
「私達はどうする?」「どうするもなにも何もできないだろ?」と有香と言い合っていると、
「私は田辺さんの家に行ってみたい。」とルナが言い出した。
「瑠奈ちゃん1人じゃ不安だから私も田辺さんの家に行ってくるわ。」と有香が答えた。
「変なことしてくるんじゃないぞ。俺達は学校で怒られたばかりなんだから。」
ルナは田辺の行った方向を見続けていた。




