第二部第五話;瑠奈と有香
有香の荷物も家の中に入れ、
僕達は有香が入る部屋の片づけをしていった。
「まさか私があなた達と本当に住むことになるとは思っても見なかったわ。」
「瑠奈が言っただろ。ここに住めばいいって。」
「全部、瑠奈ちゃんが決めちゃってるの?」
「そういうことは無いけど、ルナがここに住めと言ったら、
大体住むことになる。」
「それってどういうこと?」有香が不思議そうな顔をした。
「うーん・・・可愛い妹の言葉はついつい聞いちゃって、
実現しちゃうって言うことだよ。」
「妹想いというか本当に妹には劇甘のお兄ちゃんってとこね。」
実際にルナと住んでいてありえないことがたくさんあった。
戸籍の件、学校入学の件、そして有香との生活。
そしてルナが必ずなにか、
僕らの知らない何かを知っているような言葉を発している。
ルナの発する言葉の一言一言が僕にはなぜかメッセージのように感じていた。
「ところでさ、ルナに気付かれてしまったね。有香のこと。」
「しょうがないよ。あの状態で気が付かないほうがおかしいから。」
「僕が二階に行った時点で有香は僕のところに来たの?」
「家に来ることから由真には優のことを知ってもらおうと思っていたし、
そうなると瑠奈ちゃんにも知られちゃうなって覚悟を決めてたよ。」
「今はどう? 僕にすべてを知られて後悔してない?」
「由真なら私のことを理解してくれるであろうと予想はしてた。
でももう友人関係から、私の元から離れていくと本気で思っていたよ。」
「僕は有香からは離れないよ。約束するよ。」
「ありがとう。私は本当にいい友人を持ってうれしいって心から思うよ。」
「瑠奈ちゃんのときはどうだったの?
急に妹になったんでしょ?びっくりしなかった?」
「びっくりって言えばもっとすごいことがあったから、
妹になったって思ったときもびっくりしたけど、
逆に嬉しいと思ったことのほうが大きかったと思う。」
「はいはい、瑠奈ちゃん想いの本当に良いお兄ちゃんだね。
暑いのにさらに熱くなちゃったわ。」
そういって自分の部屋のレイアウトに取り掛かって行った。
「あ!そうそう由真にこれを渡しておくわ。」
有香は僕に一つの鍵を渡してくれた。
「あの家の鍵、私と由真の友情の証として持っていてほしい。」
「うん わかった。使うことは無いと思うけど持っておくよ。」
ルナ・・・僕の大切な妹、でも本当の妹ではなく戸籍上の妹に過ぎない。
どのようにしてそういう戸籍を作ることができたのかも全くわからない。
そういうわけのわからずにできたたった紙切れ一枚で、
僕とルナは兄妹の関係になっている。本当に変な社会だ。
たった一枚の紙切れがこの世の中を支配しているようで変な感じだった。
僕は片付けを手伝っているルナのところに行って話しをした。
「ルナはいつから気が付いていたんだ?有香のこと。」
「はじめからだよ。」
「はじめっていつ?」
「始めははじめっからだよ。一つ忘れていること無い?由真。」
「僕が忘れていること?ルナのことでか?」
「私達は心も体もつながっているんだよ。これからもずっとね。」
そうだった。僕はルナに蘇生されて、
『生のつなぎ合わせ』というもので心がつながっている。
そして僕の体の蘇生にはルナの細胞が使われていて、
体もルナとつながっているのだった。
「由真、私はいつもあなたのそばにいるよ。
いつまでもずっと。そのことを忘れないで。」
「うん、そうだったねルナ、
僕もルナのそばにいつまででもいるよ。ありがとう。」
ルナは有香の部屋の片付けに取り掛かって行った。
僕も本棚の整理を始めることにした。
「教科書や参考書は何とかこれで収まったかな。」
やはりびっしりと本棚一つを占領していた。
他にはというと僕にはやることが無い。
姿見、鏡台、本棚などレイアウトもやってしまっていて、
本棚にも教科書や参考書を入れ終わったのだ。
「後は洋服とかをタンスやクローゼットに入れるだけだから
もう由真はいいよ。ありがとうね。」
たしかに僕には用がなさそうに思えた。
「もしやってくれるんならそこにあるダンボールに、
ブラやパンツが入っているからやる?」
有香が意地悪そうに言った。
「いえ、結構です!」 僕はすぐに退散した。
さてと僕は夕ご飯とお風呂の準備でもしちゃおうか。
僕とルナの間に洗濯はルナが担当するという
勝手な取り決めが出来上がっていた。
(まぁ ルナも女の子だからな。
下着類とかいろいろとあるから当たり前かな。)
冷蔵庫を見ると今日分と明日の朝の分は何とかなりそうだった。
食事も3人分だし無くなっていくのも早くなるのは当たり前か。
ご飯を炊いておかずを作って食事の用意ができた。
お風呂も入れ終わり、もう本当に僕はやることがなくなっていた。
「お風呂、先に入っていいか?」大声で二階の二人に言った。
「由真 先に入っていいよ!」
「今日は一番、働いたでしょうだから先に入りなさい!」
二人の許可を得て僕はゆったりとお風呂に入ることができた。
そういえば有香とルナって、
今まで通り女性同士ということで付き合っていけるのかな?
僕にはそこが心配と言えば心配だった。
有香が元男の子で江崎 優だと言うことはルナに知られてしまった。
そしてルナはどう思ったんだろう。
僕の親友だったということで片付けてしまったのだろうか?
それとも元男の子だからということで、
有香を避けるようなことがことがあるのだろうか?
ルナに直接聞いていくしかないのかな。こういうことは。
僕は考え事をしていたらちょっとのぼせてしまったので、
お風呂から出ることにした。
着替えてリビングでくつろいでいると、
ルナと有香が話しながら階段を下りてきた。
「由真 ちょっとだらしない!」
有香がだらけてる由真を見てそういった。
「仕方が無いだろ。
ちょっとお風呂で考え事してたらのぼせちゃったんだよ。」
「由真、まだ何か心配事かあるの?」
ルナが心配そうに僕のところに来て目の前に座った。
僕はルナの頭をなでてあげながら
「もう大丈夫だよ。もう心配は無いよ。」って言ってあげた。
「もう!この兄妹は。ルナもそのブラコンやめなさい。
由真もそのシスコンはやめなさいよ。
二人とも本当に好き同士過ぎて、
見てるこっちが恥ずかしくなっちゃうでしょうが。」
「有香も頭なでてほしかったのか?いいよ。」
有香は顔を赤らめて「そういう意味、違う!」と言った。
「さてとご飯の用意ができてるけど先に食事にする?」と僕が言った。
ルナは「洗濯機を早く回したいから先にお風呂に入っちゃうよ。」と言った。
ルナは「さあ!早くお風呂に入っちゃうよ!」と言って有香を連れて行った。
「え?瑠奈ちゃんちょっとまって。」
ルナは(なに、どうしたの?)という顔をした。
「瑠奈ちゃん、今日わかったでしょ?私は元男なんだよ?」
「知ってるよ。江崎優さんだったんでしょ。
でも今は江崎有香ちゃんでしょ。違うの?」
有香は涙を浮かべ始めた。
「有香、わかったか。これが瑠奈なんだよ。
瑠奈には本当の有香の姿がわかっているんだ。
わかったらさっさとお風呂に入ってきな。ご飯が冷めるぞ。」
「うん・・・本当にありがとう。由真、瑠奈ちゃん・・・。」
そして二人でお風呂に入っていった。
ルナには有香と言う人物は、
僕の親友の江崎 優であって江崎有香だったか。
ルナは有香のことを最初からしっかりと有香としてとらえていた。
そして今までどおりの瑠奈の大親友の有香だったということだった。
僕の取り越し苦労だったようだな。
有香は本当にもう立ち直れる、
苦しいときや辛いときがあっても、
僕やルナを頼ってくれると信じてる。
本当によかったな。
もう本当に1人じゃないんだよ。有香。
「由真!由真、起きてよ! もう・・・」ルナの声で僕は起きた。
安心していたらちょっと寝てしまったようだった。
「早く食事にしようよ、おなかすいた!」
「あ!ごめん ちょっと寝てた。 早くご飯を食べて今日は早く寝よう。」
僕たちは楽しい食事をした。ルナも有香も本当に最高の笑顔をしていた。
「由真も瑠奈ちゃんも、
ちゃんと明日の学校の準備してからじゃないと寝ちゃだめだよ!」
しっかり者の有香が戻ってきたようだった。
僕達は本当に最高の仲間のように思えてならなかった。
いつまででも一緒にいたいと本当に思える場所が僕達にできた気がした。




