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ある星のうた  作者: 福田有希
第一部;出会い
16/61

第十六話;来客

 ルナは僕が一人で出かけたことにすごく苛立っていた。

「僕はルナと離れないよって言ったのは誰よ!」

 これは当分、落ち着きそうになさそうだった。


「いったい何処に行っていたの!」

「僕の古い友人に逢いに行っていたんだよ。」

「それは私に黙っていくことなの?

 私と一緒に行ったらまずいことでもあるの?」

「どうしても一人で行かないと行けないことだったんだよ。

 ごめんなルナ・・・」

「もう 由真の嘘つき!!!」

 うわ・・・本気で怒ってる・・・。


 その時に《ピンポーン》と誰かが来た様子だった。

 ドアを開けると江崎有香が立っていた。


「ナイスタイミング! 有香!

 僕が有香の家に行っていたことを話してくれないかな?」

「いったい何があったの?」

 逆に有香がなにがあったのか?という疑問を持ったので、

 ルナが怒っている経緯を話した。


「きゃはははは!!! それは怒るのは当然でしょ?」

「だからルナをなだめてほしいんですけど・・・」

「そうだなぁ・・・私と瑠奈ちゃんにアイスひとつで手を打とう。

 高いほうのアイスね♪」

「よし手を打ったから本当に頼むよ 有香・・・。」

 有香がルナの部屋に行こうとしたとき、


「ちょいまち! そういえばルナに何を言うつもりだ?

 優が有香でしたと言うのか?」

「優については親戚の子ということにして話をするよ。

 さすがに元男性ですって言えないでしょ?」

「有香も本当に苦労してるんだな・・・。」


「瑠奈! 有香ちゃんが逢いに来たぞ!」

 ルナはその言葉を聞いて一気に階段を下りてきた。

「有香ちゃん! あのねあのねきいて!」

「瑠奈、こんにちは。は?」

「あ! こんにちは有香ちゃん!」

「はい こんにちは瑠奈ちゃん それで何があったの?」

「うん聞いてよ!!!」といいながらルナは有香を部屋に連れて行った。

 有香は僕のほうを向いて(だいじょうぶだから。)といって、

 ルナの部屋に入っていった。


 さてと僕はというとコンビニでも行って来るかな・・・。

「有香がいったアイス(高いほう)を買ってくることに決めた。」


「その時に聞いたことがあるんだけど、

 由真の両親って父親のほうが妹がいて、

 母親は一人っ子って聞いたような記憶があるんだけど。」


 僕は有香の聞いた言葉を考えていた。

 父親に妹がいて母親は一人っ子?

 そんなはずはない。

 母親の妹が百合姉さんだ、

 僕は小さいころからそのように聞いていた。


 それで父親に弟がいると聞いていた。

 でも僕は父親の弟が誰かは知らない。

 両親が結婚するときに僕の父方の親が、

 僕の母『皆藤智夏(ちなつ)』との結婚に大反対して、

 父親が家から飛び出して母親と結婚したと聞いている。


 もちろん結婚式はあげることができず

 村上家の人は誰一人とも来ないために、

 皆藤家の人たちと友人や知人を呼んで

 簡単にやったと聞いている。


 僕も小さいときには皆藤家にはよく遊びに行ったけど、

 父親の村山家には行ったことがない。

 だから村山家というのはどういう家系なのか全く知らないのだ。


 しかし皆藤家はすごく優しい人たちで

 僕も皆藤家の人たちは大好きだった。

 皆藤百合は確かに皆藤家の人だ、

 小さいときから皆藤家にいたし、

 僕は母の妹だと聞いている。


(やっぱり有香の聞き間違いということになりそうだな・・・。)


「由真じゃないか。今日は愛する妹は一緒にいないのか?」

 声の方向を見ると百合姉さんだ。

「愛する妹という表現はやめてください。

 変な意味のような感じがして誤解します。」

「それなら由真は瑠奈を好きではないと・・・。」

「瑠奈のことは大好きです!」

「それなら合っているといえよう。」

 まったく百合姉さんは、

 こういうところは気にしない人なんだよな・・・。


「まぁ冗談は抜きとして、瑠奈は一緒じゃないのか?」

 冗談だったのかよ!とおもいきや百合姉さんだしとあきらめることにした。

「今は有香が家に来て瑠奈と一緒に遊んでいます。」

「有香?江崎有香のことか?

 由真おまえずいぶんと江崎有香と親しくなったものだな。」

「まぁいろいろとありましたから・・・。」

「江崎(すぐる)のことでわかったことがあるのか?」

「はい、江崎優は有香の親戚だということが判明して、

 江崎有香と僕も仲良くなりました。」


(有香のことは本当のことは言えない、

 有香が実は優だったという事実は絶対にいえない。

 これは()()()()()()という最もやってはいけない行為だからだ。

 有香と僕との間に有香と優は親戚同士だったという取り決めをした。

 だから誰であっても有香と優は親戚だといわなくてはいけない。

 これは絶対条件だった。)


「江崎有香とお前の中学の時の友達が親戚同士だったか。それでどうだった?」

「どうだったって?」

「優の昔のことをちゃんと聞いてきたか。」

 僕はあの時に何があったのかどうして引っ越していったのか、

 優の経緯をすべて百合姉さんに話した。


「子供たちのいじめというのは、

 大人のいじめより残酷で冷酷だからなぁ・・・。」

 百合姉さんがぼそっとつぶやいた。

 子供というのは一人ではすごく気が小さくておどおどしている。

 しかし大勢集まると一気に自分自身が強くなったと勘違いする。


 そこに気の弱い背の低い子がいると最初は『ちょっかい』をはじめる。

 そしてだんだんエスカレートをしていじめに変わっていく。

 最初のいじめは『無視』や『ちょっかい』をする。

 そこから仲間が増えていき暴力ということが始まっていく。

 でも暴力なのか、ただの悪ふざけなのかを判断することは難しいんだよ。」


「なんで? その人を集中的に殴っていたら暴力ってことにならないの?」

「たとえばさ。友達同士でプロレスごっこをやろうという、

 3人で1人をボコボコに叩いているとするだろ?

 そこに教師が止めに入る。当たり前の光景になるけどさ、

 そしてその子に『大丈夫?』と聞く。

 その子が『ただのプロレスごっこです、大丈夫です。』っていったら、

 それは喧嘩だということにはならない。


 もちろんこういうことがありましたということはちゃんと報告はするよ。

 でも本人たちがプロレスごっこだといえば、

 それはごっごになっちゃうんだよ。」


「そこからの監視強化というものはしないの?」

「監視はするよ。もちろん他の子と同じようにいじめがないように監視はする。

 でもすべての子供の監視は現実的に無理なんだよ。悲しいことにね。」

「それはどうしてなの?」


「夏休みに学校の子供たちが今現在、何処に居て誰といるのか、

 全員を把握することは不可能だから。

 A組の誰々が今、C組の誰々と会って何処にいます。とか、

 D組の誰々が今、家を出て出かけるところです。

 なんていう監視社会にお前はしたいのか?

 現実問題として逆にそれは国としてやばくないか?」


「たしかにそういう監視社会は人々の自由を奪う社会になっていく。

 しかしイジメに対しては有効かもしれないとは僕は思う。」

「確かに何処で誰がイジメに会って殴られているという情報が入ってきたら、

 それはすごく便利だと思うよ。

 イジメを受けている人にとってはね。


 でも他の無関係な学校全員の人に監視をつけることとは全く違う。

 それならいじめを受けている人だけ対象にすればいいと思うだろう。

 しかし毎日24時間ずっと張り付いているわけには行かない。

 

 そういう時は監視をしてるときはいじめをされることはなく、

 監視をしていないときを狙っていじめをする。」

 なんて卑劣なことをする人たちだと僕は思った。


「結局、いたちごっこなんだよ。

 それでいつも私たち学校側はイジメが起きてから事実を知る。」

「結局 どうすることもできないのか?

 優みたいなやつが出てきてもどうすることができないのかよ。」


「いや、対処はあるんだよ。

 ただし、いじめられている側がちょっと勇気を出すということなんだ。

 先生に自分がいじめを受けていることちゃんと伝えること。

 イジメ専用のホットラインだあるから電話をすること。

 本当にちょっとの勇気でイジメは対応できるものだと思ってる。


 でもそのほんの少しという勇気が、

 いじめを受けている子には出てこないんだよな。」


「それはなんで?

 自分がいじめられなくなるんだからいいことじゃないか?」


「それは由真。お前が一番よく知っているんじゃないか?」

 僕はそれを聞いて優のことを考えた。そこで気がついた。


「『先生にちくりやがって。』そうじゃなかったのか?由真。」

 そうだったイジメはなくなる事はなかったのだった、

 逆にさらにいじめられて学校にも相談をし、そして転校をしていった。


「もちろんお前の友達のように、

 ひどくならずにイジメが無くなったというケースもある。

 だから絶対に報復されると思わずに、

 イジメられたらすぐに先生に報告すること。

 いじめホットラインに電話をすること。

 これは絶対に大切なことだと思う。」


「さて話が長くなったんだが由真、

 お前はどこかに行く予定じゃなかったんじゃなかったのか?」

 そうだった! 僕はアイスを買いにコンビニに行く予定であった。


「百合姉さんも家に寄っていかない? 瑠奈も有香もいるしさ。」

「ならちょっとだけでも寄っていこうかな。アイスは由真持ちで!」

「百合姉さんそれはないよぉ・・・。」


 俺たちのような平和な人ばかりじゃない。

 今このときこの瞬間も日本のどこかで、

 誰かがイジメに会っているんじゃないか。

 そう思えてならなかった。

 すべての子供が平和であるように祈るしか

 僕にはどうすることもできなかった。


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