第十三話;瑠奈
「さて瑠奈も来た事だし、私の話を聞いてもらおうかな。」
百合姉さんの質問タイムの始まりだ。
百合姉さんは勘が鋭くなかなかエグイところを突いてくる。
どのような質問が来るのかとおもうと胃が痛くなってきそうだ。
「そのように構えるな。普通の質問をするだけだ。」
百合姉さんはそう言うが百合姉さんの普通の質問が怖いのだ。
「由真、瑠奈の事をどのように思ってる?」
意外な質問に僕はきょとんとしてしまった。
「だから由真は瑠奈のことをどう思っているのか?と聞いているんだよ。」
「え? 普通に好きだよ。可愛い妹でとても大切にしていきたいと思ってる。」
「そっか。妹か。」百合姉さんは何か考えた。
「瑠奈!」
いきなり呼ばれたルナはビクッとなって驚いた様子だった。
「瑠奈は由真のことをどう思ってる?」
「どうって普通に好きですよ。とても大好きなお兄ちゃんです。」
「そっかお兄ちゃんか・・・。」また百合姉さんは考え出し始めた。
「普通に他人同士が好きになったら、問題をおこすのが普通と言うものだが、
なぜかお前達はそう言うことをする様子が無い。
でもお互いに好きだと言う。
お前らの言っている好きってどう言うものなのだ?」
「好きは好きだよ。それ以外に無いよ。」
百合姉さんはルナのほうを見た。
「なんていうのかな、
お兄さんとして尊敬してると言うか優しくて好きだと言う感覚です。」
「でもお前たちは本当の兄と妹じゃないだろう?
しかし本当の兄と妹のように接している、
そのようにちゃんと付き合っている。
そう言うところはどのようにしてるのだ?
何か2人で決められたルールと言うものがあるのか?」
僕とルナは顔を合わせた、(ルール?)
そういうものをまったく決められて居ないことに気が付いた。
普通の兄妹ってルールと言うものをシッカリと決めているんだろうか?
「ルールと言うのはまったく決めていないです。」
「私と由真お兄ちゃんとはこれは駄目とか、
こうしようとか、そのようなルールと言うものはありません。」
「兄妹とはなっているがもともとは赤の他人だよな?
その赤の他人の高校生の男女が一緒に暮らして
ルールが存在しなくてどうやってシッカリと暮らしていけるのか
それを教えて欲しいね。」
「普通に暮らしていくのに、
そこまでルールと言うものを必要に感じなかったから。」
「由真お兄ちゃんと暮らしていくのに、
問題が起きると言うことを感じて居なかったから。」
百合姉さんはにわかに信じることが出来なかった。
「と言うことは由真は瑠奈のことを女の子として、
魅力的に感じてないと言うことか?」
「それは違うよ!ルナは本当に可愛くって優しくって、
すごい素敵な大切な妹だと思ってるよ!」
百合姉さんは一言 そうか・・・と言ってお茶を飲んだ。
「お茶が冷えてる!」
ルナがあわてて「ごめんなさい!百合お姉ちゃん!」
といってお茶を入れにいった。
「由真、私は瑠奈のことを嫌ってはいない、
むしろ逆に好いているほうだ。
あの子にはなにか不思議か感じがするんだよ。
初めて会ったのに初めてじゃない感覚がする。」
僕もそうだった、初めて会ったのに普通に接してきてくれて、
すごく楽しい日々をルナと過ごしてきた気がする。
「妹として大切にしてるんだな 由真は。」
「うん 僕にとって本当に大切な妹だよ。ルナは。」
「よしわかった 由真、瑠奈のことはお前に任せるぞ。
しかしなにかあったら私に言って来るんだ。わかったな。」
「百合姉さん ありがとう。なにかあったらすぐに伝えるよ。」
僕は百合お姉さんと約束をした。
(百合お姉さんってなんだかんだいっているけど、
百合お姉さんも瑠奈のことちゃんと心配してるんじゃないか。)
僕はそうおもってなんか安心した。
ルナがお茶を持ってきて百合姉さんに渡した。
その時百合姉さんが瑠奈にこういった。
「瑠奈。由真に苛められたり、へんなことをされそうになったら
迷わずに私のところに来るんだぞ!」
ルナは迷わず「はい!」と元気に返事をした。
「妹に手を出さないよ!」僕は強く抗議した。
「さてと私の用事は終わったし、もう帰ろうかな?」
百合姉さんはもう帰る準備をした。
「出来たら江崎有香のこともちょっと調べてくれるかな?」
「いいけどさ。由真は江崎有香にご執心だね。惚れたか?」
百合姉さんがそう言うと、ルナがすごい顔で睨みつけてきた。
「ただ気になるだけだよ、もしかして僕の予想が当たっていたら
江崎有香ってもしかしてって思ってるだけだよ!」
「それってどういう事?」とルナが聞いてきたけど、
まだ証拠が無いから今は秘密かな。
夏休みといったらどういう思い出があるだろう?
海、山、プール、親戚の家に行く、里帰りに行く、
家族旅行と言うのもあるだろう。
僕も家族が海外に行く前はいろいろなところに連れて行ってもらった。
しかし高校一年の今、家族は海外出張で居ない。
唯一、ルナが居てくれているおかげで、
この長い休暇をなんとかこなしていると言う具合だった。
「おそうめん出来たよぉ。
由真お兄ちゃんはおそうめんが苦手だからお蕎麦つくったよぉ♪」
ルナが居てくれるだけで・・・本当に助かってるところが沢山ある。
「ねぇ ルナどこかいきたいところある?」
「なんで?」とルナがそっけない返事をした。
「意や別にだけどせっかく百合姉さんが沢山洋服をくれただろ?
だから着て行かないともったいないかなっておもってさ。」
「おぉ! ルナの目がすごく輝きだした。」
やっぱり行きたいところがあったらしい。
「私、ここが行ってみたい!」と手の持ってきたものを観てみると、
何かのチラシっぽい。
家は新聞はとっていないので広告と言うものは入ってこない。
何のチラシだ?と思ってみてみると『花火大会』のチラシだった。
日付はなんと今日で近くの神社で毎年やっている夏祭りだった。
それなら今日に行ってみようか。
「もしよかったら百合お姉ちゃんも呼ぼうよ♪」
「え?どうして百合姉さんも呼ぶの?」
「なんとなくここは呼んでおいたほうがいいって思ったんだけど駄目?」
「別に大丈夫だよ? ならちょっと待っててね 百合姉さんに電話するから。」
百合姉さんの電話一回目・・・出ない。 二回目・・・出ない。
三回目・・・留守録になった。
「百合姉さんしょうがねえなぁ。留守録にでも入れておくか。」
「百合姉さん。由真だけど、
ルナがぜひ一緒に神社の夏祭りに行きたいって言っていて、
百合お姉さんも一緒に来て欲しいってさ
だから来ない?返事を待ってる。」
「百合お姉ちゃんどうしたの?」
「わかんないけど電話にでないから留守録に入れておいた。
すぐに電話が来るよ。僕たちは準備でもしてるか。」
ルナはよろこんで着る服を選びにいった。僕も何を着ていこうかな。
ルナとの夏祭りって初めてだ。当たり前だけど。
だからかななんかすごく嬉しい気持ちになった。
その嬉しい気持ちをかきけすかのように。
《ピンポーンピンポンピンポンピンポンピンポーン》
ドアの呼び鈴が鳴り響いた。
誰だ!と思ったがこういうことをする人はもうひとりしか居ない。
「百合お姉さん!!!」といってドアを開けた。
「お! 元気にしてたか?」
「ついこのまえにわかれたばかりで
元気でだったか?はないでしょうが。」
「瑠奈は何処にいる?」
「自分の部屋に居ます」
「さっさと呼んで来い。」
本当に人使いの荒い姉さんだ。
「ルナ!、百合姉さんが呼んでるよ。早く来いってさ。」
「もう!着替え中だって言うのにぃ! うんすぐに行くね。待ってて!」
「あのさっきから百合姉さんのところに電話してたけど、
ぜんぜん出なかったんだけどどうしたの?」
「いやぁ ごめんごめん ちょっと探し物していてさ。
見つけるのに時間かかっちゃってごめん。」
「それで探し物はみつかったの?」
「うん それでこっちに急いで持ってきたんだよ。」
なんか大きな箱に入っているもので割と重たそうな感じだった。
ルナが「お待たせ」って着てきた服はすごく可愛らしくて見惚れてしまった。
「おぉ! 瑠奈、可愛いじゃん♪ 由真お兄ちゃん好みにしてきたのかな?」
やっぱり百合姉さんは意地悪っぽくそういった。
「でも夏祭りと言ったらこれじゃないかな?」といって箱を開けた。
そこには浴衣が入っていた。
「百合お姉さんこれってどうしたの?」
「私がもともと使っていた浴衣だ。
お古だが柄は今でもいいと思ったから、瑠奈のために持ってきた。」
ルナは浴衣をはじめてみるので、
その可愛らしい柄や生地に感動して目をきらきらさせてみていた。
「瑠奈の部屋は何処だ?」
「二階の僕の部屋の隣の部屋だよ。」
「それじゃ借りるぞ。瑠奈来い。」といってルナを連れて行った。
なんだかんだ言っても百合お姉さんはやっぱりお姉さんなんだな。
そう思ってしまった。
しばらく待っていると階段のほうから
「うぅぅ・・・歩きにくい・・・」
「足を大きく開きながら歩くからだ!」
「もっとおしとやかに歩けないのか!」
「そおっと小刻みに歩いてみろ!」
などと声が聞こえてきた
「もう着崩れしてるじゃないか。ちょっと待ってろ。」
と着崩れを直しているらしい。
「言ってよし!」百合お姉さんがそういうと、
「由真! 百合お姉ちゃんから浴衣着せてもらった♪ どう?」
「うんうん ものすごくかわいいよ。 本当に可愛いよ。」
ルナは大喜びではしゃぎだした。
「こらルナ! 着物がくずれる!」
「百合姉さん、ありがとう。」と僕が言ったら、
「お前にお礼を言われる筋合いは無い。ちょうど今日は夏祭りだからな。」
「百合お姉ちゃん 本当にありがとう。」
ルナがお礼を言うと百合姉さんが顔を赤くした。
さて夏祭りにくり出しますか!
ルナにとっての初めての夏祭りだ。
想いっきり楽しんでこよう!