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ある星のうた  作者: 福田有希
第一部;出会い
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第一話;火星大接近

「2018年7月31日 地球に火星が大接近します」


 大々的なニュースに僕は心が躍る気がした。

 天文学を学んでいるわけではない、でも星にはすごくロマンを感じている。

 古くから神話にも登場し、星は大航海時代の方位の目安にもなり、さらに占星術なる占いの世界にも使われている。

 人を魅了しやむことのない星の世界。僕も例外ではなく星に魅了されてしまっていたのだった。


「火星が地球にもっとも近づくのか 絶対に見なくちゃ!」

 そして真夜中に星を見に行くのだが、ただの星初心者の僕にはどれが問題の火星なのか全然わからない。

 北極星がみえる。ということは、あの星座が北斗七星か?M字の星座、名前忘れたけど何処にあるんだ?

 問題の火星がどの星なのかさっぱり判らず、星座といえば誰でも見つかる北斗七星を見ている始末。


 結局、火星の情報を今更ながらスマホで確認すると、夜9時ごろに南東の低い空となっていた。

「星は夜中に見るものだ」と思っていた僕は時間を間違えていた。

 星に対してまともに知識がない僕にとって、ただ火星が見たい!と思っているだけの僕にとって、火星の出る時刻というのは頭になかったのだ。

 星無知の僕が何の知識も無くいきなり火星を見に行こうとして、何時に火星が見れる見所時間やどちらの方向に見れるのか全く判らず家を飛び出し、結局どれが目的の星なのかも判らないと言う現状に僕は散々たる思いをすることとなった。

(明日も出るみたいだから、明日もう一度見ようかな)

 今日に見れなかったむなしい気持ちで家に帰った。


 次の日、学校では火星の話で持ちきりだった。

 スマホで写真や動画を取った映像や画像を見せびらかされてきたので、まだ観れていない僕にとっては、はっきりいて迷惑な状況だった。なぜかクラスメートの見せびらかし攻撃や、まだ見てないの?攻撃にとてもうんざりしていたのだ。

 本当はとてもうんざりしていたのでもう見る気は全く無かったのだが、まだ観ていないの?攻撃は僕の心をすごく傷つけた。

 そして(きょうこそは絶対に見てやるんだ!)という決意にまで発展した。


 クラスの中でも一番星に詳しい哉太(かなた)と一緒に行けば、それなりに楽しめるかもしれないと思った僕は哉太を誘ってみることにした

「おーい哉太!今日は火星を見たいんだけど一緒に来てくれないか?」

「別にいいけどさ。昨日みんなと一緒に観に行っちゃったよ」

 昨日といえば地球に火星が大接近した日だ。

「イベントはその日に行かないとなんか感動が薄れるっていうかさ」

(そうですよねぇ……)と僕は思いながら、

「昨日は間違えて真夜中に見に行っちゃってさ。火星が観れなかったんだよ」

「そういうことなら別に一緒に行ってもいいけど、何時どこで待ち合わせ?」

 僕は星の素人だ、何時(いつ)何処(どこ)に行けばよく見えるのか全く知らない。

「哉太のほうが星に詳しいんだからさ、よく見える場所や時間は逆に僕が聞きたいんだが?」

 なんか哉太がちょっと気分が良くなったようなように見えたのだが、そういうことは放っておいて、哉太が何時がいいかを考え込んでいる姿を僕は見ていた。


「それなら午後7時半に学校に集合!」

「午後7時に学校?そんなに早い時間に、こんなところでよく見えるの?」

「いや、この学校の裏山の頂上に登っていくんだよ。あの頂上なら町の明かりが見えないから星がよく観えるんだ」


 学校に午後7時半、

 哉太の言われた通りの時間と場所に来た僕を待ち受けていたものは大量の蚊の攻撃だった。

 痒い! ありえないくらい痒い!

 次々と手足に蚊が寄ってきては刺されて赤いブツブツになっていく。こんなに蚊の大群に襲われるとは聞いてないぞ!


 体中掻いていると哉太登場。

「あのさ、裏山に行くと言ったよね?この時期に山に行くといったら虫除けスプレーとか痒み止めとか殺虫剤が欲しいのは言わなくても判らんかったの?」

 哉太が僕に呆れ顔で言ってきた。

 哉太は自分のバッグをゴソゴソと探りながら、「ほれ!」と僕に投げつけてきたのは、痒み止め軟膏と虫除けスプレー。

 しっかりと受け止められず道に落ちた痒み止め軟膏を手に取り、もう既に刺されている赤いブツブツに塗りたくっていた。次に道にコロコロと転がっている虫除けスプレーを次に手に取り、体中にスプレーするようにした。普通は顔とかにスプレーすることは禁止となっていると思うんだが、そんなことは言っていられない。哉太はさらにバッグから殺虫スプレーを取り出して、僕達の居る場所の周りをシュッと一吹きした。今までの大群が嘘のように居なくなったような気がした。


「哉太ってさぁ、すごく慣れてるね。よくここに来るの?」

「僕は星が大好きで、よくこの裏山の頂上に来るんだよ」

 哉太は普通に話してくれた。


「星ってさ、空を見ると無限に星があるんだけど俺は思うときがあるんだよ。本当に無限の世界なのか?ってね。今見えている星が数百年以上前の光を見ているのなら、もうそこには既に星は無いんじゃないか。星の生きてきた証を僕達は見ているんじゃないかってね」

 哉太がいきなり語りだした。

「これだけ多くの星があっても、この地球という星だけが私達生命の存在を許された唯一の星なんだ。そして火星は地球と双子の星と言われているんだ。もし火星が地球と同じ自転速度だったら、もし地球と同じ磁場を作っていたら、地球と同じ環境が出来上がっていたのかもしれないのにね。地球と同じように生命の存在が許される星となっていて、地球人と火星人との交流ってあったのかも知れないと思ったら、なんかすごく面白くてワクワクすると思わない?」

 哉太がここまで夢見るやつだとは思っては居なかったが、僕には地球人類の古代からの歴史を振り返ってみて思った。

 本当にこの世に火星人が居たら地球人と火星人の交流と言うより、地球人と火星人の永遠の終わり無き戦いの歴史が生まれることになるだろうと予想していた。

 それもよくよく考えたら地球と火星では距離が離れすぎていて宇宙旅行ができるくらいにまで文明が発達しないと戦争も出来ないか。しかし文明が発達した瞬間、絶対に争いは起きる。

 むしろこのような場所で生命が誕生しなくて逆に良かったのではないかと僕は思う。


 地球のお隣のほぼ似通った大きさの火星。

 自転速度が遅すぎるために大気や熱が放出されず、厚い雲に覆われていき、

 マントルの動きも弱いため星の周りにも磁場ができず、

 非常に熱い焼け焦げた地表に変わり、もともとあった水分も無くなった。

 火星の写真を見ても、とても地球と双子と言われても全く似てない。


 星好きの哉太は次々と火星の事を判りやすく話してくれていて、とても楽しく山道を歩いていくことができて、いつの間にか裏山の山頂に着いていた。


「火星はあれだよ」 哉太が火星の方向を指差した。

「今日は木星も土星もよく見えるようだね」

 哉太の指差した先にはいくつもの星の粒があり、どれが火星か、どれが木星で、どれが土星なのかさっぱりわからない。見かねた哉太が細かく火星と土星と木星の位置を僕に教えてくれた。


 火星、赤く光る不気味な星にしか僕には感じることは無いが、占星術では『情熱』と『勇気』の意味があるらしく、恋愛ではとても重要な星と言うことらしい。

 それにしても大接近というから月と同じくらい近づいているのかと思ったら、

 もともとの大きさを知らない僕にはちっぽけな星の一つにしか見えない。

 なんか気が抜けたような気がして帰ろうかなと思っていたとき、

 強烈な頭痛に襲われてそのまま気を失ってしまっていた。




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