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0-16.『咲いた花、そして空の鳥へ捧ぐ物語』より「Strivia-Ⅲ」

ジョージ・ハーネス版

その日は朝から騒がしかった。

城門にもたれかけるように棄てられていた「それ」を見下ろしながら、賢者は静かに佇んでいる。表情は伺えない。


「……お前が「そっち」側になるたぁ、運命ってのはわからねぇもんだ」


血に濡れた髪は、亜麻色。

既に光を失った瞳は、翠色。


「…………で、どうすんだ参謀さん?」

「本来なら、私が関与すべきことではない。……今回は事情が少し違う。野次馬は疾くと去れ」


淡々と告げつつ、黒髪の青年は死体の目を閉じる。


「……王政府への挑発だろう。……「裏切り者」……か……」


ずたずたに切り裂かれた喉笛の下、刻みつけるようにその文字は彫られていた。


「やり口からしてチンピラのやりそうなこった。もっと上手くやりゃあ、お前さんあたりの仕業にもできたろうにな?」


「自分ならそうする」と言わんばかりの口調に憤ったのか、銀の瞳がきつく相手を睨みつける。


「……ダチだと今でも思ってるよ。つっても、俺のダチは何人も死んできたけど?」


軽い口調でも、そこには確かな悲哀があった。


「…………身元は分かっている。アンドレータ家の放蕩息子……ルシオだろう」

「へぇ、本名そんな感じか。ま、確かに育ちは良さそうだったわな」


押し寄せる野次馬を必死に制するカークの泣き言が、大衆の噂話にかき消されていく。

ルマンダは溜息をつきながら立ち上がった。


「……どちらを選ぶ?」

「何の話だよ?俺は単に王様に気に入られただけのーー」

「王か、かつての仲間か、という意味だ」


凍てついた声色は、返答を間違えた先の末路を如実に示していた。

それでも平然と、レヴィは笑う。


「さぁ?その時によるんじゃねぇの?」

「…………気楽な男だな」


無論、ルマンダも気づいているだろう。

それが本気であることに。


彼の刹那的……いや、無責任な生き方を、とうに彼も知っている。

何も背負わず、だからこそ何も得ず、己の死すらも厭わない。


それでも、自分の好きなように生きられる男だと、

私も、ルマンダも知っている。


「……さて、死体の処理は他の者に任せる。……キサマも、どこで手に入れたか知らんが盗品なら返しておけ」

「あぁこの甲冑?そこらの女優さん口説いて借りた小道具だよ。ちゃっちいけど、遠目からなら分かんねぇだろ?」

「……本当に自由な男だ」

「そう見えてんなら光栄です」


チェロは、ソーラは、悲しむだろうか。

感傷を塗り替えていくかのように、強い懸念がじわりじわりと広がっていく。


嗚呼、あの戦士を止める者は、もうあの場に存在しない。

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