表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『咲いた花、そして空の鳥へ捧ぐ物語』   作者: 譚月遊生季
序章 その物語について
2/57

0-1. prologue

「Levi Strivia」「Khalys Phoenimeryl」

ここに記したことこそが、私が目にした真実である。






・その人物は、ストゥリビアと名乗って、旅人に道を指し示す。

真っ赤な髪と、全てを見通す金色の瞳。道に迷えば。赤と金を探せ。

(民間伝承を集めた文献より)


・ストゥリビアという名はやがて、賢者の象徴となり、英雄譚、御伽噺にも数多く登場するようになる。

歴史書にも記されていることから、実在した民族である可能性も高い。

(辞典より)



私はその唇が、一言「殺せ」と言うのに耳を疑った。

死を目前にしながら、彼はその運命すら容易く受け入れた。信じがたいことに、若く、賢き青年である。

声色には寂しさが滲んだが、震えることはない。虚勢でなく、ただ穏やかに「殺せ」と、口にしたのだ。

物事を諦観するきらいのある青年ではあったが、まさか、自分の死すらも受け入れるとは誰も思うまい。


刃を向けた相手は、思わず武器を取り落とした。刹那、背後から飛んできた矢に貫かれるのすら、彼は微動だにせず……待っていたかのように受け入れた。


傷つき、息も絶え絶えになりながら、彼は一言呟いた。相棒の、名であった。

私は何としても彼を生かさねばと、自らに誓った。


燃え上がるような赤髪と、金色の眼差し。賢者の再来と謳われし青年の名は、レヴィと言う。






・王を頂点に奉りつつ、フェニメリルという国そのものの腐敗は根本が深い。

権力者は、こぞって王に媚びるため、下層を搾取する。王の思惑は何処に。

(王国の独裁について、とある思想家の著書より)


・我らがヴリホックは積年の汚辱を晴らすため立ち上がる。

正義の怒りを思い知るがいい。腐敗した玉座を叩き壊してくれよう!

(独立国家の声明文より抜粋)



玉座に腰かけ下層の人間を見下ろす視線は、確かに一国の王として相応しい威厳を持っていた。

身構える側近を手で制し、よく通る声色で律したのもまさしく王者の風格。若くして王になったとはいえ、十分な素養を持っていると感じさせた。

やがて私は彼の私室に招かれたが、その時のことは忘れまい。


「ねぇ、君。僕に教えてくれない? 君がいた国のこと」


幼子のように青く澄んだ瞳で無邪気に問いかける彼を、一国の王と誰が思うだろうか。

彼は王でなくハーリスと、あっさりと名を呼ぶことを許した。側近の視線をいたく感じ取りながらも、切なる願望のため名を口にすれば大層喜んでいた。

黄金色の長髪は美しく輝いていた。それこそ、御伽噺の人物のように。

1869年出版

『To beautiful flowers and free birds』


1872年出版

『Für blühende Blumen und Himmelvögel』


1908年出版

『咲いた花、そして空の鳥へ捧ぐ物語』


18??年出版

『Les fleurs sont tombées, les oiseaux ont volé』




1908年出版『咲いた花、そして空の鳥へ捧ぐ物語』(訳:赤松治五郎)を元に、ボク……花野紗和も、新たに翻訳を手がけたことがある。その時のことは鮮明に覚えているよ。

これより語るのはある物語が辿った軌跡と、歴史に埋もれた「真実」だ。


ボクと、「彼ら」が紐解いてきた足跡だ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ