0-9. 学校の図書館
さて、ここらでキミの介護担当クンの記憶を引っ張り出してこよう。
「ねぇ介護担当ってなに?っていうかどこで聞いたの?」
どうやら読者だったらしいね。今度感想でも聞いてみようかな。
「3000字くらいの読書感想レポート来ても知らないよ」
それはそれで楽しみだね。……物語の出会いとは、意図しないところで訪れる。彼は、あの物語をどう捉えたのだろう。
「勉強会をすると言ったのは誰だったか」
いびきをかいて爆睡する友人を横目に、赤毛の少年は大きくため息をついた。
「……アンジェロ、西洋史がまだ全く覚えられてないぞ」
「んんん、悪ぃなんかすごく眠……ぐー」
「……はぁ」
アンジェロと呼ばれた少年は、教科書を下敷きにして眠ったまま。……しかも、教科書に書かれている名前はアンジェロのものではない。
仕方なく、棚に教科書代わりの本を探しに行く少年の目に、一冊の本が飛び込んできた。
「……本の置き方が乱れすぎだろう……」
西洋史のコーナーに、物語。並べ直そうと著者名を確認する。
「……レヴィ、クライスト……」
ぽつりと呟き、ぱらりと中を開く。パタンと閉じ、少年はメモ帳を取り出した。
「……今度、本屋で探してくるか」
既に波乱に満ちた生に苦しんでいたこの少年の名も、レヴィと言う。
教科書の記述
この革命運動の成功により国王による帝政は廃止され、平等な社会の実現を目指し──……
共通項から興味を惹かれたのか、なるほど。
……そう言えばそうか。名前被りで外見被りなら、気にならない方がおかしい気もしてきた。盲点だったよ。
でも、西洋史のコーナーに文学を置くのも別に問題はない気がするのだがね……?いや、人それぞれか。