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『咲いた花、そして空の鳥へ捧ぐ物語』   作者: 譚月遊生季
序章 その物語について
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0-8. Eaglow-Ⅰ

・先天的に魔術の才がなくとも、後天的に付与させることは可能。肉体的な負担は、投薬により軽減される。なお、この処置を経た者達の平均寿命は30歳にも満たない。

(ヴリホック上層部の執務室にあった書類)




ザクス・イーグロウは南の国より来たと伝えられる戦士、ガイアス・イーグロウの息子である。ガイアスは武勇で名の知れた男であるが、ザクスがまだ幼い頃に戦場で散ったと本人が語っている。

後天的に魔術を付与された者達の群れの中、ザクスのみはそうではなかった。肉体の頑丈さと人並外れた体力が既に備わっていたからだと伝え聞いたのを覚えている。


多くの若き兵卒たちは彼を慕うが、私は彼に、かなり前から好印象を持っていない。


「ザクス、最近暴れ過ぎ。もっと冷静になりなよ」


友であるジャンが苦言を呈しても、


「てめぇはモーゼが消えたってのに冷静でいられんのか!?」


モーゼ。赤毛の賢人が以前名乗っていた名だ。

何を言おうと、頭に血が上っていて話にならない始末。ジャンは眉をひそめつつ、ついには諦めて引き下がる。このやり取りをここ数日で幾度目にしただろう。


「……アナタは、本当に周りの見えない方ですね」

「あ? 旅芸人に何がわかるってんだよ」


私たちのことは、常に彼の眼中にもない。だからこそ、私にも言いたいことが山ほどあった。


「いい加減にしてください。いつまでアナタは……」


ジャンに口を塞がれなければ、激高したザクスに殴られていたかもしれない。


「あんまり刺激しない方がいいよ。アイツ、かなり苛立ってるから」


ひっそりと、冷静な声色で伝えられた言葉。ジャンは、ザクスとその相棒であるレヴィ(当時はモーゼだが)と親友と呼べるほど仲が良く、更には周りの野蛮かつ屈強な男達相手でも上手に立ち回れるほど要領が良い。


「……モーゼは、見切りをつけたのかもね。すごく賢いし、前からフラフラ色んなとこ巡ってたらしいから」


ポツリと呟いた言葉に滲んだのは……底知れぬ不安。どうやら、彼も親友2人への複雑な心中を、完全に整理できた訳ではないらしい。


ヴリホック独立国。フェニメリルを打倒し、新たな時代を作るとうたう彼らの行為は、後の世に革命と伝えられるか、反乱と伝えられるか……どちらにせよ、血が流れることに変わりはない。

さて、レヴィの前はモーゼ、と名乗っている「設定」にしたらしい。当然、聖書から取ったのだろうね。わかりやすい。


乱れた世は、容易く友情すらも引き裂くものだ。

ボクやキミには縁遠い話だけどね。乱世というより、友情が。


「えっ黙って聞いてたら突然貶されたんだけど」


まあまあ。作業用BGMだとでも思って付き合ってくれればいいさ。


「長くない?いつ終わるのこれ?」


……まだ序章だね!





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