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結論から言えば、閉じ込められていた場所はすぐに判明した。定番中の定番、体育館の倉庫だ。でも、これも定番すぎるつっかえ棒代わりの箒をどけて開け放った先に、佳乃の姿はなかった。ただ、一冊の本が、倉庫の真ん中に転がっていただけだった。当てが外れたと肩を落とした隣を、孝己が駆けていく。本を取り上げくるくると手の中で弄んで、一言、「大変だ」と呟く。
「孝己?」
「慧一、悪いけどこの本持って図書室行って。まだ司書さんいると思うから。渡せば事情はわかると思う」
押しつけられた本は、放置されていたにも関わらずほんのりと温かかった。
「俺は母さんに連絡を取るから、図書室で待ってて」
「お、俺への説明は?」
「あと! 早く!」
急かされるように体育館を追い出され、言われるまま図書室へと走る。鍵が閉まっていたのでノックをすると、先生は気づいて開けてくれた。事情を話して本を渡すと、二、三頁を軽くめくるなり険しい顔になる。
「佳乃さんのお母様がこちらに来られるのよね?」
「はい、孝己が連絡取っていると思います」
司書さんと一緒に待っている間、ずっと考えていた。どうして孝己が、この本を見つけたあと佳乃を探さなくなったのか。どうして母親に連絡したのか。まさか、と思う。そんなの、あり得ない。現実的に、こんな発想は気が狂っているとしか思えない。そう、それこそ、妄想だ。
「先生、俺、佳乃を探しに行きたいんですけど」
もうこれ以上考えたくなくて、むしろ今までの考えを否定したくて、たまらずにそう提案してみると、司書さんは目をぱちくりとさせて、それから首を振った。
「いいのよ、居場所はわかっているから」
「……どこに、いるんですか」
その時、騒々しい足音が複数近づいてくると図書室の扉ががらり、と開いた。孝己に続いて入ってきた大人は二人。険しい面持ちの双子の父親と、そして。
「さぁて、うちのバカ娘は、一体何に入りこみやがったんです?」
腕まくりをしながら悠々と司書室に踏み入った、双子の母親だった。先生が恭しく一礼したのが不思議だったのを覚えている。おばさんは机の上に置かれた本に気づいたらしい、眉をひそめて取り上げると、一瞬視線をこちらに投げた。……俺?
「先生、奥の部屋借りていーですか? けーいち君はごめんだけどここで留守番ね。先生と二人はこっち。今回は手伝ってもらわないとだめだわぁ」
「あの、俺に、できることは」
後に続くように出そうとした足を、彼女の突き出した手が止める。そしておばさんは、きっぱりと言い切った。
「ないねぇ」
だから、まぁ、祈っててよ。
隣で孝己とおじさんが頷く。それから、先生を先頭に三人揃って司書室の奥の小部屋に入って行った。それを俺はただ見送る。これから何が起きるのか、何を祈ればいいのか、結局さっぱりわからないまま。
「慧一先輩、今ならわかりますよね。あの時、何が起きていたのか」
「……あぁ」
孝己から本を取り上げた時が初めてではなかった。二年前、俺は既に“つむろぎ”に関わっていた。佳乃が先に本の中に入り、それを家族総出で連れ戻しにいったのだ。おばさんが“つむろぎ”で、おじさんと、その時は孝己も普通の存在だが、俺のように補佐する目的でついていったに違いない。
それからしばらくして扉が開いて。
それから先生と、おじさんと、孝己と、意識のない佳乃だけがでてきて。
それから先生の指示で病院にいって。
それからうちの両親に事情を話して。
それから二年間、孝己と一緒に佳乃の面倒を見ながら、今日まで来た。
そうだろう?




