ステータス
八百万の神という言葉を知っているだろうか。自然のもの全てには神が宿っているという考え方だ。
この考えに漏れず、太陽の神、海の神、山の神などが存在する。そして人口物や実体のないものにも神が宿っている。トイレの神、学問の神、戦の神などだ。
さらに、新たなものが発明又は発現するとそれに対しても神が宿る。それは、電気の神、薬の神、音楽の神などだ。
僕と会話している彼、リチャードはそんな神々の一人。電子機器の神だ。
彼が生まれたのはだいたい戦後、それから時代の進行と共に力をつけていった。そして、彼の力はスマホの登場によって絶大なものになった。彼はその力を趣味である開発にを注いだ。
だが、悲劇が起きた。彼が外出中に家が原因不明に爆発。すべてが吹っ飛んだ。
それで僕の役目はその回収。自分でやればいいのではないかと思ったが、神が直接下界に干渉することはできないらしい。なので、僕を使って間接的に回収するとのこと。
開発には文字通り力を注いだため、力の大半を失ったようだ。よって、テンプレであるようなチートはほぼもらえなかった。唯一もらえたのはこのスマホ。無いよりはマシだよね?
今使える機能は、メール、電話(リチャード限定)、カメラ。アプリはさっきの「武器」、「換金」と「ステータス」の三つ。だけど、これらの機能やアプリは増やすことができるらしい。今は無理だけど。
まあ、回収の方は滅茶苦茶急がないかんわけではないから地道に頑張るとするか。
とりあえず東に行けばいいんだな。
「東ってどっち?」
『方位磁針の機能も入ってるから使ってくれ。』
このスマホ。リチャードが作ったらしい。電子機器の神だから当たり前かもしれないが、アプリも自分で作ったらしい。情報技術にも成通しているとは、ちょっと感心してしまう。
『あ、ステータスの説明をまだしてなかったな。開いてみろ。』
開くと僕のステータスが表れた。上の方にタブが二つあり、一つは「現在」、一つは「偽装」と書かれている。今は現在の方が表示されている。
《名前》神納八尋
《年齢》十七歳
《魔力保有量》500
《魔法適性》無属性(???)
《スキル》並列思考 異世界共通言語・文字
《固有スキル》神製携帯情報端末
《称号》回収者、異世界人
『これが今のお前のステータスだ。普通は専用の道具を使わないとできないが、お前はこれで見れる。』
「へえ、結局年齢は十七歳にしたのか。」
『まあな、お前も若い方が都合がいいだろ。…………でだ、正直言って、お前のステータスは他人に見られるとまずい。だから、偽装の方に当たり障りの無いステータスを書いておいてくれ。』
「了解、と言いたいところだが基準が分からん。それを教えて欲しい。」
『そうだな。スキルはまあいいとして、称号と固有スキルは完全にアウト。あと、魔力は一般人がだいたい1,000前後。そんなところだろ。』
「え、僕、一般人より弱いの?そんなんじゃすぐ死んじゃうよ。」
『その件は大丈夫だ。異世界人ってのは総じて成長速度が早いらしい。鍛えれば増えていく安心しろ。あと、お前の魔法についてだが、かなり特殊で解析に時間がかかる。それまでは危険だからできるだけ魔法を使おうとしないでくれ。』
「そうかい。なら頑張ってみますか。」
『頼むぞ。俺も忙しくなってくる。連絡は緊急時以外はメールで行ってくれ。あとさ、目立つことは避けてくれ。こっちの神に目をつけられると面倒だから。』
「了解。解僕もそのつもりだよ。目立つとろくなことないからね。」
その言葉と共に電話を切る。
このスマホ一応地球と繋がっているらしい。どうやったかは知らんが。
だから、掲示板への書き込み、アップロード等ができるそうだが正直今のところやる気はない。
「さてと、東に十キロだな。」
僕は電子コンパスを使い、歩き始めた。