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逃げてもしょうがないよね

よろしくお願いします

「逃げる」この言葉は状況によって二つの解釈がある。


一つ、自分では対処できないものに対して避ける又は背を向けること。とりあえず、悪い状況を回避するために行われる。この場合、後先を考えていないことが多い。


一つ、現状戦うことは勝つことは難しいと、このままだと全滅又は甚大な被害を被る場合、準備を整えるために後退すること。所謂、戦略的撤退。


では、僕が行っていることはどちらであるか、と問われれば−−−−−−−前者である。


ただ言い訳を言わせて欲しい。

誰だって熊に追いかけられたら逃げるよね?



「リチャード。もっとマシな場所に飛ばすことはできなかったのか。」


木々に生い茂る森を走りながら、スマホ越しに悪態をつく。


『仕方が無いだろ。今の俺には場所を指定できるほどの力がないんだ。無事に送ることが出来たことを褒めて欲しいくらいだぜ。』


喋りながらも「ハァハァ」という息づかいが聞こえてくる。どうやら僕を送ることに相当消費したらしい。


「だからって、僕が死んだら元も子もないでしょ。」


『そこはちゃんと自衛手段を準備してあるぜ。

「武器」ってアプリがあるだろ?それを開いてみろ。』


「開いたよ。で?」


『そのアプリはGPを使ってお前が元いた世界の武器を補給することができるんだぜ。リストを見てみろ。』


地球の武器ってことは銃器が使えるってことか。

相手は熊。しかも至近距離。なら、ショットガンが妥当だろう。ここは最強のショットガンと名高いAA-12を使おうかな。

よし、リストから、ってあれ?


「ショットガンは疎か銃火器が一切リストに載ってない。どういうことだ!?」


『え?ああ、そういうことか。』


「勝手に自己完結するな!説明してくれ。」


『いや、俺の力が不足しているもんで現代のレベルの武器は無理みたいだ。』


「じゃあどうすんの?大人しく熊に殺されろと?」


『いや、大丈夫だ。もう一度リストを見てみろ。』


言われた通りにするが、走っているせいで見にくい。あと、何が大丈夫なんだろう。


『あくまで現代の武器が無理なだけで、十五世紀頃までのやつならできるぜ。』


スマホの向こうでサムズアップしている姿が目に浮かぶ。自分は安全な位置に居るからって呑気な。つい殺意が芽生えてしまう。

その殺意を後ろから追ってくる熊に向けるべく、スマホから武器を探す。


十五世紀なので一応マスケット銃は存在するが、補給した時点では弾は込められてない、なので装填する時間がないためボツ。

クロスボウもあったが、熊に致命傷を与えるほどの威力のものは立ち止まって装填しないといけないためボツ。

色々と見たが、遠距離系の武器は弾や矢を別々に補給しないといけないらしく時間がないためボツ。


仕方が無いので危険だが近距離系の武器を見る。

ハルバード、ロングソード、メイス、と様々な武器があるがある武器の場所で僕の手が止まる。


余談だが、僕は以前。日本オタクの親父に連れられ、五年ほど達人の元へ剣術を学びに通っていた。


お分かりだろうか。僕の視線の先にある武器。それは、「日本刀」である。


僕は即決で補給を要請した。

初期からあるGPは1,500、対して日本刀は1,200GP。

何も考えずに操作してしまったため、数秒後に冷静ぬなり少しやってしまった気がするが後悔はしていない……いや、やっぱ後悔した。

今思い出した。熊に倒し方。槍にしときゃ良かった。


僕のそんな気持ちをよそに、十メートルほど先に箱…いや、ダンボール箱が現れる。

コレ、ビジュアル的にアウトじゃない?

違う今はそれどころではない。走りながらダンボール箱を回収する。あれっ、何これ軽い。


「リチャード。これ中身入ってないよ。」


『軽いから入ってないと思ってるなら大丈夫だ。お前が箱を開けると重くなるはずだ。』


よくわからないが自分を無理矢理納得させて箱を開く。すると、そこには日本刀があり、本来の質量が手を伝わってくる。


僕は日本刀を手に取り、ダンボールを捨てる。

この感触。懐かしい。親父、元気にしているかな。


逃げる足を止め、熊に向き合う。こちらの気配を感じ取ったのか、熊も三メートルほどの距離で足を止める。

バーストブリージング−−−−僕が親父に教えてもらった技術の一つ。鼻から吸い、口から吐く。これを小刻みに行なうことで体内に蓄積した疲労や緊張を回復していく。

その傍ら、鞘から刀を抜き正眼の構えをとる。瞬間、周囲を静寂が支配した。


先に熊が仕掛けてくる。右手を振り上げ張り手。それを刀で防御……ではなく斬り落とす。

突然のことで唖然とする熊。敵の前で隙を作るのはいけないよ。

僕はその隙を見逃さず喉を突く。力なく熊は崩れ落ちた。


『上手いもんだな。』


「親父には敵わないけどな。」


僕が感傷に浸っていると、


『そうだ。お前、GPかなり消費したろ?補充のしかたを教えてやる。「換金」ってアプリを開いてみろ。』


「開いたけど何も表示されないよ。」


『いや、それでいい。その画面にさっき倒した熊の死体を入れろ。』


「入れる?大きさ的に無理があるよ。」


『大丈夫だからやってみろ。』


またよくわからないが自分を納得させてやることにする。

流石に重くて持ち上げられないのでスマホの方を近づける。すると、あっという間に熊の死体が吸い込まれた。その姿はまるでドラ◯もんの四次元◯ット。

アプリを閉じGPを確認すると1,300に増えていた。


『それは名前の通りものをGPに換金するアプリだぜ。どんな金額になるか俺でもわからないから自分で傾向を掴んでくれ。』


「了解。これからどうしたらいい?」


『そうだな。とりあえず近くの人里で装備を整えたらいいんじゃないか?このまま東に十キロほどで大きな街があるようだし。』


「そうか。ならそうする。」


『じゃあ、頑張ってくれよ。』


さっきから僕がスマホ越しに会話している相手、リチャードは所謂神様である。そして僕が今いるここは地球ではない、異世界である。

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