トリップした私と
ほのぼの?れんあい?家族愛が一番いかも。
続きそうな予感。
少し思い出話になるが、目の前にいる私に似た黒髪黒目の娘が赤ん坊の頃の話し。
最近私の産んだ娘の様子がおかしい。
私リサ・キャリング旧姓松嶋理彩は、高校生の時に異世界にトリップしてしまった。
黒の巫女様とか言われて、世界の調和を守る存在として呼ばれたらしい。そして色々…元の世界に戻る云々あったり…したのを割愛させていただき愛する旦那こと宮廷薬師のリオン・キャリングとめでたく結ばれ第一子マリア・キャリングが生まれたんだけど…
「マリア…どうしてそんなにおむつを換えようとすると絶望した顔をするの?」
「…ばぁぶぅー」
「あうぅー」
「ほうら、いっぱいお飲み」
「ぶぶぅぅ」
「…別に目を背けなくても良いのよ」
「リサ、マリアに兄弟を作ってあげたいんだけど…」
「まってリオン」
「どうしたんだい?」
「ぁうー」
「マリアが起きてしまったのか、…どうしたリサ?」
おかしい。おむつを換えるときには泣きそうな顔になるし、授乳は私の胸から視線をはずす、生まれてすぐの時は泣く喚く叫ぶと寝不足になるくらい夜泣きしたのに夜も昼も泣かなくなった。マリアを生んだ後にご無沙汰だったリオンとの夜には、遠慮がちに蚊のように小さい鳴き声をあげる。まるで遠慮してるかのよう。
赤ん坊らしからぬ行動をとる娘。
よく眠ることを眠るが、最近はいはい・掴まり立ちと家の中を動こうとしている姿も見る。
まだ9ヶ月なのに。
…なんてなつかしい。
そんな娘も今年で6歳になった。
なんと驚き。
娘の魂は前世の記憶を持っていたらしい。と、そう娘から5歳になったとき告白された。
私もリオンも驚いたが、それも娘の個性としてとらえるようにした。だがその後の成長が恐ろしかった。
リアル見た目は子供中身は初老なんだもん。
前世の記憶では自動車事故でなくなった看護士さん(享年39歳)で名前までは思い出せないが、日常生活や行動についてははっきり覚えているらしい。
舌足らずな言葉遣いなのに、妙に語彙能力がありおかしく見えるときもある。赤ん坊の時は年相応に見えるように頑張っていたとも告げられたが、私がおかしいと感じたのはこのせいだったのかとわかり安心した。
そんな娘は次代の黒の巫女として5歳の時から城に行くようになり、そこでこの世界の医療に怒りを感じ医療改革を起こして王子の目に留められてしまった。
娘を薬師の娘としてではなく、一人の娘としてみてくれる王子にはありがたいが、まだまだ娘はお嫁には出すつもりもないので退散していただいた。
でもめげずに薬草を栽培する娘の手伝いをしているのを目撃され、リオンに冷たい目で見られたりもしている。
娘は今も薬草とにらめっこをしながら、なかなか毎日を楽しそうに過ごして居るので、案外この世界での生活も悪くはなかったのかな?と、そんな娘を見て娘のこれからに幸あれと思ってしまう。
大きなお腹をさすり、つぎ産まれる子はいったいどんな子供が産まれるか少し楽しみに待つそんな私の日常。




