秘密
実はオレ、めっちゃイケメンでモテるんです。
…いや、正確にはモテてたんです。
小学生くらいまでは…
しかーし‼︎みんな人間というものを学習して、高校生になってオレの中身を知ったものどもは、口々にいった。
顔だけ良くてもねーってさ。
いや、ビジュだっていいし‼︎
なんなら、鼻だってめっちゃスーってしてて、背だって高いし、いい感じに痩せつつ筋肉だってあんだぜ?
ギャグのセンスだって…ありそうな…なんか…モニョモニョ…だけど、いいじゃん‼︎
カッコいいなら、映えるやん‼︎
なんで、みんなオレよりカッコよくないやつと付き合ってんの?
交際したいなら、まずオレやんけ‼︎
なんでオレスルーして他のやつと皆付き合うのさ⁉︎
「オレがモテないのっておかしくね⁉︎」
「あたりまえの結果だろうね」
幼馴染のアリスは、冷めた顔で言った。
オレの横でお菓子をボリボリ頬張り、オレの部屋でくつろぐ幼馴染。
…
何があたりまえなのか、まったく意味がわからない。
「ウップ」
「きたね…」
「ごめーん」
アリスは早食いをするせいか、よくひゃっくりなのかなんなのかわからない音を喉から鳴らす。
そして、漫画を読み終えるといつも、オレの部屋からいなくなる。
でもオレの家には、いる。
しばらくすると、漫画を持って帰ってくる。
まぁ、なかなか帰ってこない時もしばしばあるが、いつものことだ。
そんなアリスは、最近モテる。
今までは、そんなだったけど最近垢抜けた?ってやつなのか知らんけど、とにかくモテる。
けしからん‼︎
なぜオレはモテなくてアイツだけチヤホヤされてるんだよ⁉︎
けっ、アホくさ
「アリス今日も告白されてたよな」
「あー」
「付き合うの?」
「まさか」
「なんで?今日告白してきたのって、人気ナンバーワンの蒼井くんじゃんか」
「わたしは、恋愛とかムリだから…」
「へー」
「舜は?だれとも付き合わないの?」
「オレは…付き合わないってか、だれもよってこねえじゃんか」
「たしかに。寄ってくるのってハエだけだもんねー」
「うるせー」
…
こんな感じで、オレたちは幼馴染をやっている。
そもそもオレとアリスは、なんでも言い合える仲だ。
そして幼馴染で同じクラス。
オレはアリスを一度も好きになったことは、ない。
たぶんアリスも同じだと思う。
「てかよぉ…ねみーよ」
「ねー」
…なぜだろう?
アリスは、よくオレの部屋でオルゴールの音楽を流す。
そりゃ眠くもなるよ…ってかさ、もしかしてアリスって…
オレは知ってしまった。
今、この部屋でアリスの秘密を…
ただ、それを知ったところでね…
次の日、アリスはまたモテていた。
アリスちゃん今日もかわいいなぁ♡ってさ。
アリスのヤロウ…めっちゃ笑顔で対応してるやんけ。
気に食わん。
「アリスちゃん、今日もかわいいね〜」
「ありがとう〜」
って、くだらんやりとりしてるんですよ。
まことにくだらん‼︎
…
くだらなすぎてオレはみんなに言ってやった。
「あ、みなさん、オレのアリスだからね?君たちよく聞いて。こちらのアリスさんは、オレのアリスなのでよろしく」
と、宣言した。
「は?どういうこと?ただの幼馴染だろ?」
一人の男子がオレに詰め寄る。
「だから、オレの彼女になったからよろしくってこと」
アリスは、目をみひらいた。
でも、反論はしなかった。
やっぱりか。
だって、オレはアリスの秘密を知っていますから。
その日から、アリスの秘密の特訓を開始した。
「おい、アリス。姿勢が良くないなぁ。オレに釣り合う女になるためには、姿勢が大事なんだ。ほら、背筋ピーン!」
アリスは、へ?みたいな顔をしていたが、大事なポイントなのだ。
その秘密は、放っておくと大変なことになりかねないのだ。
「ちょっとアンタ、あたしはあんたがアリスの彼氏なんて認めないから‼︎」
いきなり背後から現れてきたのは、瑠美姫だ。
こちらも同じクラスだ。
高校入学と同時にできた、アリスの友達瑠美だ。
「あー、なんだ瑠美姫か。オレは別にあんたの許可をもらうつもりはない。以上‼︎」
瑠美姫は、獰猛な生き物みたいな顔をしていた。
そもそもなぜに姫をつけているかというと、初対面の時から、なんだかオレにやたら命令口調だったり、すれ違い様にオレをしょっちゅう睨んできていたので、嫌味で姫呼びしてやっている。
そんな瑠美姫は、たぶんアリスの秘密を知らない。
たぶん…
続く。




