第四章:魔王の真意
ある夜、アステリアは異界へと召喚された。
魔王ルカインの前に立つ。
「貴様、我の期待を大きく上回ったな。だが、一つ聞かせてくれ。なぜ、我の力を使いながらも、秩序を乱さなかった?」
「だって、魔王様。あなたが私に与えたのは、復讐の力じゃなくて、正義の力だったからよ」
ルカインは、わずかに目を見開いた。
「正義? 我は魔王だ。正義など、塵よりも価値がない」
「でも、あなたの契約には、『均衡を乱す者を裁け』って書いてあったわ。つまり、あなたは、この世界の不正を正そうとしている。ただ、方法が過激なだけ」
ルカインは、長い沈黙の後、笑った。
「……貴様、初めて我の本心を見抜いたな。我は、かつてこの世界の神だった。だが、偽善に満ちた教会に追放され、魔王と呼ばれるようになった。我は、復讐したいのではなく、真の正義を取り戻したいのだ」
アステリアは微笑んだ。
「だったら、私たち、同じ目的よね」
「貴様……本当に面白い娘だ。我の使徒として、ではなく、共犯者として、共にこの世界を変えるか?」
「もちろん。魔王様と手を組む悪女──最高の組み合わせじゃない?」
二人の笑い声が、異界に響いた。