第三章:魔王の使徒、黒の魔女
アステリアは、王都を掌握した。
王は幽閉され、貴族たちは裁かれた。
彼女は、魔王の力を使いながらも、民衆のために法律を改訂し、貧民の救済を始めた。
「私は悪女だけど、愚かな支配者よりマシよ」
人々は、彼女を「黒の魔女」と呼び、恐れながらも尊敬した。
魔王ルカインは、異界から彼女の行動を見守っていた。
「面白い。貴様、復讐で終わらせなかったな」
「ええ。復讐は、私の始まりにすぎなかったの。魔王様、あなたは私に力を与えた。その力で、この世界を変えたいの」
「……我の使徒が、秩序を正すとはな。皮肉だ」
「皮肉でも、正義でも、構わないわ。私が信じる道を進むだけ」
ある日、新たな脅威が現れた。
聖騎士団が、アステリアを「魔王の使徒」として討伐に来た。
「悪女アステリア! 聖なる力で、貴様の罪を裁く!」
聖騎士団長のセシルは、かつてアステリアと学友だったが、彼女の「悪行」を信じて離れていった。
「セシル……あなたまで、私のことを信じられないの?」
「貴様は魔王と契約した! それだけで、悪と決まっている!」
「……そう。あなたたちは、見たものしか信じないのね」
戦いが始まった。
聖なる光と、黒き炎が衝突する。
アステリアは、セシルの剣を受け止めながら、叫んだ。
「私たちは、同じ世界を信じていたはずよ! なのに、なぜ私だけが悪になるの?」
「貴様が魔王と手を組んだ時点で、終わりだ!」
「じゃあ、教えて。魔王は、なぜこの世界に干渉するの?」
セシルは言葉に詰まった。
「それは……」
「魔王は、この世界の歪みを正そうとしているの。聖なる教会が、貧民を搾取し、戦争を煽っている。それも、神の名の下に!」
アステリアは、黒い炎を纏い、セシルの剣を砕いた。
「私は悪女。でも、あなたたちより、真実を見ているわ」
セシルは膝をついた。
「……貴様は、本当に変ったのか?」
「変った? いいえ。私は、最初からこうだったの。ただ、誰も見てくれなかっただけ」
戦いは終わり、聖騎士団は撤退した。
アステリアは、彼らを殺さず、記憶を残したまま解放した。
「真実を、教会に伝えて。そして、選んで。どちらの道が正義か」