3話
テオドール様が来てるなんて知らなかった
事前の手紙だって届いてない…
こんな姿なんかで、行けるわけがない
服を着替えて髪を整えて、カーペットを洗ってるとあっという間に1時間ほど経っていた
遅くなりすぎた、どうしよう
客間についてノックしようとすると中から声が聞こえた
――「テオがシアの婚約者だったら良かったのに…」
シンシア?何を言ってるの
――「あぁ、僕もそう思うよ」
テオドール様?どうして?
じわっと涙が滲んでるのを感じる
もういや、
私が何をしたって言うの?
私は足早にその場から立ち去った
コンコンと小さな自室のドアがノックされた
「お姉様、部屋にいるかしら?」
「どうかしたの?シンシア」
「テオドール様がお姉様を呼んでるの客間に来てね」と何処か嬉しいそうに浮足立っている
客間のドアを開けるとシンシアはドレスの裾をふわりと揺らしながらこちらに振り返り言う
「お姉様の婚約者シアにちょうだい?」
「え?」
「急で申し訳ないミシェルだが本気なんだ!僕は君よりシアのほうが好きだ」
以前は気弱そうに見えた目が意思の強そうに見えた
「いいでしょ?お姉様!」
「……うん」
「ありがとうお姉様!お母様にはちゃんとシアから言うからお姉様は心配しないでね!」
「…うん」
「話はこれで終わりですか?部屋に戻ってもいいでしょうか?」
「あ!引き留めちゃってごめんなさいお姉様!いいですよ!」
「では、これで失礼します」
自室のドアを固く閉めてそのまま壁に背中を預けて座り込んだ
「どうして、信じてたのに…テオドール様」