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第五章 目撃者

 そんな馬鹿な....


 一緒に歩いてたなんていったい誰が言ったのか。それとも、捏ち上げた話で私の対応に期待したのか。何れにせよ、私にはそんな事実は無い。 



「そんな事実無根の事を言ったのは誰なんですか?」


「まさか、それを教えろと言うんですか?」


「当たり前じゃないですか」



 私は怒鳴るように言った。 

 

 それを見て、浅村はニヤリとした。 


「何をそんなに興奮を。そんなに都合が悪い話だったのかなあ」


 あれ程注意してたのに、この程度の事で感情が出てしまったか。私はこの高ぶった反応を後悔しつつ、これであいつは私に的を絞るかも知れないという予感に不要な悪寒を感じた。第三者なら、「疾しいことが無ければ堂々と」なんて、そんな正義論を展開するだろうが、正義なんてこの世に存在しないことくらいは重々承知している。



 だが、それとは裏腹に浅村は意外にも食い下がらなかった。



「証言者を教える事は今は出来ませんが、とにかく、目撃されてるということで。また来ます、では」



 いかにも消化不良のようなわざとらしい口振りに、私はあいつに餌でも蒔かれたのだろうか、などと根拠なき深い不安がモヤモヤと立ち上ってきた。

どうするべきか。勿論、理屈では分かっているつもりだ。だが、見えない目撃者の目は今でも私を見張っているかも知れない。仮に目撃者の話が本当だとすると、いつから私に注目したのだろうか。 

 私自身、理解も納得も出来ない事が連続して起こっている。まだまだ続くかも知れないし、これで終わるかも知れない。だが、何れにしても殺人事件に絡んでいる事には違いないだろう。目撃者は、何を見たのか。私の知らない私の何を知っているのか。 


 私はハッとした。目撃者は楽しんでいる・・・・



 きっと、そうだ。私が困り果てる姿を見て嘲笑ってるんだ。だから、何もかも知っているくせに物事を小出しにしてやがる。何て卑劣な奴。私は歯軋りをするほどに悔しくなってきた。 

 ちょっと待って。ここまで考えてふと頭に浮かんだ事があった。もしかしたら、目撃者とは階下の奴なのではないか。 

 行方不明も嘘で、何処か違う場所に身を隠している。当然、これには浅村が絡んでいる事だろう。


 そう思うと、身に覚えの無いことまでが何故だか全てにつじつまが合うような気になってきた。 


 浅村と階下の住人。こいつらが私を狙う理由とは何なのか。 


 そもそも、私はレイプされた被害者である。狙われる理由などある訳も無い。だが、現実問題としてあいつらが私に殺人の罪を擦り付けようとしていることだけは明白だ。このままではジワジワと追い詰められて逃げ場を失い兼ねない。 

 どうしたらいいの・・・・

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