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聖女にはなれないよ

 「私は聖女になれないです!」

宣言してから、しまった!もうちょっと言い方考えるんだった、と思っても一度口から出てしまった言葉は取り消せない。恐る恐るみんなの顔を見ると、ポカンと口を少し開けてこちらを見ている人もいれば、皇帝陛下はそんな事言われると思っていなかったのか眼を見開いて黙っている。

 皇帝陛下の横にいる綺麗な顔の男性は、眉を寄せて少し口の端を上げて何かを堪えている様に見えるのは私の気のせいなのかな。

 とりあえず仕切り直ししないととコホンと咳をして、

ちゃんと私の気持ちを説明しようと口を開く。

 「すみません、いきなりお断りしてしまって。でも、私、元の世界では平凡な高校生の子どもで、国を救うとかそんな大事な役目を出来る自信がないです。魔法だって使った事もないし、私以外にもっと相応しい人がいると思うんです。だから、別の方を探してもらえませんか。」

と精一杯伝えてみる。


 すると、ずっと黙って聞いていた神官長らしき人が少し前へ歩を進め、頭を下げる。

 「少し発言をよろしいですか。」

と皇帝陛下へ向かって発言の許可を申し出る。

 「よかろう。」

と皇帝陛下から許可がおりると、私の方へ向き直り、

 「私は、神殿に仕える神官達の長をしております、オリバスと申します。聖女様、少し私からお話をさせていただいても良いですか?」と聞いてくれる。

 私が頷くと、

 「聖女様、突然召喚をされ混乱されるのはよくわかります。歴代の聖女様達も召喚時にはその様な反応をされていた様です。ですが、皆様この国に慣れて行くに従い聖女様としての役割を率先して果たされる様になりました。なので、早急に結論を出すのではなく、まずはこの国を知ってからもう一度考えていただけませんか?」と穏やかな口調で話しかけてくれる。

 説得力のある言葉…

 でも、それって結局私が聖女になるのが前提になってる気がするけど、とまだ納得しきれずにいると

 「聖女様、更にこのお話をするのは聖女様には酷かと思いますが…召喚の時には非常に多くの量の魔力を使います。その為、次にその魔法を使うには同じ様に多くの魔力を貯めなくてはなりません。魔力を貯める為にはそれ相応の時間が必要になります。なので、聖女様が別の方をとおっしゃられてもどうしても時間が必要になります。」

と申し訳無さそうに説明してくれる。

 その表情でなんとなく察したけど、私は確認の為に質問してみる。

 「それってどれぐらいの時間が必要なんでしょうか…?」

 「何年かかるかは分かりません。」

とまたも申し訳無さそうに答えてくれる。

 きっと、何年っていう言い方をしてくれてるけど、実際にはもっと多くの月日がかかるんじゃないのかな。

 ふと、私は気になっていたけど知らない方がいいであろう事を聞いてしまった。


 「今までの聖女様達はこの国を窮地から救った後どうなったのですか?」と。


 少しの沈黙の後、神官長であるオリバスが申し訳なさそうな表情を更に深めて、答えてくれる。

 「皆様、役目を終えた後は穏やかに過ごされておりました。」と。

 私はだんだん黒い気持ちが広がっていくのを感じながら、更に追求する。

 「それって元の世界には戻らずにこちらの世界に残ったって事ですか?」

 「そうです。」

 「帰らなかったのか、それとも帰れなかったのかどちらですか?」徐々に声が震える。

 「戻る方法が見つかっておりません。」

 とどめの言葉を聞いてしまい、言葉を失ってしまう。

 

 一気に黒い気持ちに占拠され自分で気持ちのコントロールが出来なくなる。

 そんなことってある?

 なんで?

 突然連れて来られて、勝手に聖女様って言われて、元の世界に帰る方法がわからないなんて。


 しばらく沈黙に包まれた後、皇帝陛下が口を開く。

 「聖女殿」

 「私は聖女じゃない!」

 咄嗟に私は遮ってしまった。そして、その時私の周りに風が巻き起こり、周りが少しざわつくけど、そんな事知らない。

 何で私が巻き込まれるの?この国と私は何の関係もないのに、何で?嫌だ、嫌だ、嫌だ、帰して!

と思うとどんどん黒い物が身体を広がっていき、自分でどうしようもない状況になりかけた時、肩を掴まれたのに気づく。ハッと顔を上げると、皇帝陛下の側にいたはずの綺麗な男性が側にきて私の肩を掴んでいた。

 「その気持ちに呑まれてはダメだ。」と言われる。

周りが私の距離を保つ様に引いて何か薄い壁の様な物を作っているのがわかる。

一体何が起こっているのかと思っていると、掴まれた肩を通して暖かい何かが身体の中に流れてくる。それは、不思議な感覚だけど、全然嫌な感じはない。

 荒んでいた心がどんどん穏やかになっていく感じだった。眼を閉じて少しの間その感覚に身を委ねた後、私の気持ちが落ち着いたのを感じたのか、肩から手が離れる。


 眼を開き綺麗な男性を見上げると、瞳の色が綺麗な夜色になっていた。召喚された時に見た色は金色だったのに、今は夜色なんだとボーッと思っていると、

 「そなたの感情次第でこの国は良くも悪くもなってしまうのだ。仕方がない事だが、肝に銘じて欲しい。」と言われる。

 どういう事?私の感情で何か変わるの?

更に私は混乱に陥るのだった。

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