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謁見の間に行きます

 学校からの帰り道に拾った不思議な白い石、お風呂で手を滑らせた時に落としたままなのかな。もし、あの石が元の世界に戻る何かの手掛かりになるとしたら、あの石がないとダメなんじゃ…どうしよう、と思っていると、


 コンコン、扉をノックする音がした。


 ミラが扉を開けると騎士が2人立っており、ミラとやり取りをしている。

 「光様、皇帝陛下、神殿長様との謁見の準備が整った様です。今から謁見の間に移動して欲しいとの事です。」と気遣いながら教えてくれた。

 怖い。これからどうなるのか考えると怖い。

 ここから逃げ出したい。

 でも、この世界の事が何もわからないし、どこへ逃げていいかもわからない。何も持たない今の私には言われる通りにするしかないんだよね。

 不安な表情をしていたのを察して、「光様、大丈夫です。皇帝陛下も神殿長様もとても穏やかな方です。ご心配なさらなくても、光様に酷い事をされる事はないはずです。」と言いながら、無意識に緊張で自分の服をギュッと握りしめていた私の手をミラが優しく包んでくれた。

 暖かい…

 怖くて不安だけど、少しだけ気持ちが落ち着き謁見の間へいく勇気が出た。ふぅ、と息を吐き出してから返事をする。

 

「わかりました。よろしくお願いします。」



 呼びに来た騎士に案内され謁見の間へ行く。

廊下の突き当たりに大きな扉が見え、扉を挟む様に騎士が配置されているのでそこが謁見の間なんだろう。扉に配置されている騎士へ私が来た事が伝えられると、扉を開けて中へ通してくれる。

 通された謁見の間はとても広く、床は綺麗に磨かれている白の大理石、両側の柱やかべの装飾が豪華で天井にも絵が描かれており、美術の授業で習ったバロック建築の実物ほこんな感じなのかなと思いながら真っ直ぐ前に視線を向けると、奥が数段高くなっており一番高い位置の椅子には多分この国の皇帝陛下であろう人が座っていてこちらを見ている。皇帝陛下の側には私が召喚されて際に見かけた綺麗な男性が立っている。

 反対側には皇帝陛下と同じ年齢程の男性が立っている。

皇帝陛下より低い位置には、神官だろう方が数名控えており、一番年齢が高そうな白髪の方がきっと神官長なのかなと推測してみる。


 私は皇帝陛下の座る玉座から少し見下ろされる形で向かい合う位置まで連れていかれる。

 一瞬じっと見てしまったけど、ハッとこういう時は高貴な人の顔は見てはいけなかったはずとすぐ下を向いて顔を伏せていると、連れてきてくれた騎士はすぐにさがり、私だけが前に取り残される形になってしまった。

 前からのすごい圧や周りの視線に息が詰まりそうになりながらその場に立ち尽くしていると、落ち着いた低いけど、威厳のある声で「そなたが今回召喚された者か?」との問いかけがあった。

 

 「はい」と聞き取れるか取れないかぐらいの小さな震える声で返事をするのが精一杯だったが、聞き取ったくれたのか、「突然こちらの世界へ来たこと、さぞ驚いたであろう。そなたの状況を知らぬままこちらの都合で召喚してしまいすまない。」とまさかの謝罪までしてくれる。

 びっくりして顔を上げると、少し眉を下げこちらを気遣う眼差しをしている。

 そういえば、ミラが穏やかな方だって言ってなと思い出す。

 皇帝陛下は続けて「私はこの国の皇帝、シューペルブ・ル・メイユール・クレールだ。そなたの名を教えてくれてぬか。」

 「私は園家光園家光(そのやひかる)といいます。」と伝える。

 すると、少し悲しげに微笑まれ「そうか、光という名か…初代聖女様と同じ名だな。」とおっしゃられた。

 少しその言葉が気になったけど、すぐに「光殿、そなたをこちらの世界へ召喚したのは、聖女としてこの国を救って欲しいからなのだ。」と爆弾発言をされた。


 やっぱりー!!


 ああ、今の私絶対ゲームか本の世界の登場人物になってる気がする。私は異世界物のゲームをしたり、本を読んだりあまりしてなかったから知識もないし、この話がど?の物語なのかわからないけど、きっとそうだよね。

 この場合なんて答えるのが正解なの?

いろんなパターンがあるはず。でも、やっぱりここは正直に無理ですと伝えるのがお互いにいいんじゃないのかな、といろんな事を考えていると、

 「驚くのも無理はないな。急に聖女としての役割を果たすのも大変だろう。神官長や神官達が光殿の支えとなってくれる。少しずつこちらの世界に慣れていくとよい。」

と勝手に話が進んでいく。

 慌てて、「待ってください、あの、えっと。私は聖女にはなれないです!」ともう少しオブラートに包んで伝えるはずが直球で伝えてしまった。


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