異世界に召喚されました
「はぁ…なんでこんな事になったの?誰か教えてよ…」
豪華な装飾が施され、端から端までいくには何十歩歩かないといけないんだっていうぐらいの広さの部屋、掃除に時間かかりそうだなと思うぐらい大きな窓、その窓辺に置かれた座り心地のいい1人掛けの椅子に膝を抱えて座り、私は途方にくれていた。
時は遡り1日前
ここではないどこかへ行けたら、誰かの特別な存在になれたらって思った事がある人は結構いると思う。
私、園家光もその内の1人だった。
毎日の日々に大きな不満は特にない。
家族の仲が悪い事もないし、健康で大きな病気もしたことない。今までの16年の人生で何か大きな問題が起こった事もなく学校生活も至って普通、周りからしたら何をそんなに不満に思う事があるんだって言われるんだろう。
でも、あまりにも何もないと人間それが幸せな事なのかわからなくなるのか不満を感じてしまうらしい。
よくある本やゲームの中によくある魔法が存在して魔物と戦ったり、貴族や平民などの身分制度が絶対的な世界を面白そう、こんな世界にいたら楽しいだろうなとか思って妄想にふけったりしている。
その日も同じ様な特に変わり映えのしない平穏な1日が途中まで過ぎていた。
高校からの帰り道、友達と今日の授業の事や来週からのテストの事を話しながら同じように毎日面白くないなぁと頭の片隅で考えていた。
友達と駅の改札で別れてホームへ向かう階段の途中、隅で何か光る物が視界の端に入り、視線を向けると綺麗な白い小さな石が落ちていた。
何故だかすごく気になって拾おうと手が石に触れたら、ほんの一瞬金色に光った気がしたけど、周りは誰も気がついていなくて気のせいかと思ってポケットに入れて帰った。
自宅に着いて制服から着替える時には石の存在は忘れてしまっており、そのまま宿題やテレビを見て過ごしていた。
自分の部屋に戻った時にふと気になって制服を見るとポケットの部分が光っており、石の事を思い出してポケットから取り出すとやはり小さく金色の光りを帯びている。
なんだろうと気になっていたら、階下から母親が「お風呂に早く入りなさい」と声がしたため、急いで石を持ったままお風呂場まで行ってしまった。
湯船につかりながら石を真上に掲げて見ていると、つるっと手が滑り石が落ちてきて、口に触れた瞬間大きな光りが発生し、眩しくて目をギュッと閉じて光りが収まるのを待っていたら徐々に光が落ち着いたから少しづつ目を開けてみた。そしたら、何故かよくテレビで見る様な外国の宮殿にあるダンスホールが目に入ってきた。
「いやいや、おかしい。目がおかしくなってるのかな」ともう一度目をギュッと閉じてみる。うるさくなる心臓を感じながらもう一度目を開けてみた。
やっぱり変わらない、全く頭がついていかない。一気にパニック状態になったけど、必死に状況を確認しようと無意識に周りを見回してみる。自分がへたり込んでいるのはダンスホールの中心辺りで何か床にはいろんな文字が描かれており、何かの儀式の様な雰囲気を感じる。
周りには教科書で見た事がある中世の貴族の様な人達やゲームで出てくる神官さんのような人達が一斉にこっちを見ている。みんな何故か口を開けて何故か私の顔というより全体を見てすぐに顔を晒してしまっており、どうしたのかと思っていると女性の神官さんが慌てて私に羽織物をかけてくれた。その時初めて自分がお風呂の途中だった事を思い出して、何も身につけていない状態だった事を理解し時間差で叫んでいた。
こんなに声を出すのはカラオケか学校の音楽発表会で合唱した時ぐらいだろうかと現実逃避してみる。
状況が変わるわけもなく、大声で叫んだ後気持ちが少し落ち着いたのか、周りを先程よりか冷静に見れる様になった。
周りの人の顔を見ると外国の人達なのか彫りの深い目鼻立ち、髪色や目の色はアニメに出てくるキャラクターの様に様々な色をしている。
どうしていいのかわからず呆然としていると、先程羽織物をかけてくれた女性が
「聖女様、お待ちしておりました。」
と何故か深々と頭を下げて私に向かって言っている。
聖女?一体誰の事を言っているのかと思いキョロキョロ見回してみるけど、もちろん私のすぐ側にはそれらしき人は誰もいない。
何も返事が出来ずにいると、別の年配の神官さんが声をかけてくれた。
「聖女様、この国を救う為に来てくださったあなた様の事です。非常に混乱されているかと思いますので、まずは落ち着ける様にお部屋に御案内させていただけませんか。」
このまま素っ裸の状態でこんな大勢の中にいる方がダメだろうと瞬時に頭が働いてくれ、私は頷いた。
「はい、よろしくお願いします。」