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Act.17 戸惑う氷地は悲嘆に暮れて・1

宇宙(そら)を漂っていた。


何もない、穏やかな宇宙(そら)


生まれたままの素肌ような感覚。皮膚から、細胞と細胞の隙間から、体を作る原子と原子の間から、全身に染み込んでくる。この感じは、思いは。


──そう、幸福、と呼んで良いだろう。


心の平穏、苦渋のない心。いや、心そのものが意味を持たない感覚。これこそが宇宙の真理──そうに違いない。


だが違う。何かが違う。何かが欠けている。


あたしの、溶けていく心が、最後の心が激しく訴える。


それは──。


“あたしにとって、掛け替えのないもの”


そう──あたしにとって、いちばん大事な・・・!


「──アディ・・・ッ!」


その自らの叫び声で目が覚めたのか、目が覚めたから声が漏れたのか。


跳ね起きたリサは、一瞬此処が何処だか分からず、なぜ此処に居るのかも分からず、ただ呆然としていた。目の焦点が合っていない顔付きのまま、ただ必死で考えを巡らせる。取り留めのない、言い様のない思いがただグルグルと、頭の(うち)を駆け巡る。


まるでどろどろに溶けた泥水を、ひたすら掻き回しているような不快感。


「あ・・・ア・・・アディ・・・?」


──それは誰? 誰の名前?


“あたしの、いちばん大切な人・・・”


──大切な人? 他人が大切?


“他人じゃないの。アディが大切なの・・・!”


──ああ、あなたの想い人?


そう問われた途端、リサは我に返った。


「アディ・・・ッ!」


慌てて周囲を見渡した。


「アディ・・・!」


1メートルほど隔てた隣の簡易医療処置用ベッドに横たわる、黒鳶(くろとび)色の癖の強い髪をしたテラン(地球人)の男性。


キャブレター(自動混合装置)のある、オープン・フェイスの酸素投与マスクを着けていた。大きく(はだ)けられたフィジカル・ガーメントの胸元には、幾つかのバイタル(生存情報)センサーが貼付され、右腕にはアーム機構に支えられた自動点滴投与装置が嵌められていていた。


「アディ・・・!」


安堵すると同時に、リサの胸中に不安感が一挙に湧き上がる。


思わず手を伸ばし、近寄ろうと身を翻した刹那。


奈落の底に落ちた──リサは本当にそう思った。


咄嗟に手を突き出したが遅かった。ゴン、と言う衝撃とともに、リサが、痛いッ、と思わず声を上げる。リサは手掛かりを失って、薄汚れた床の上に上半身から突っ込んだ。右足が残ったままでベッドから落ち、しかも額の上を(したた)かに()つけていた。


リサが寝かされていたのは、バイタル・ケア・ヴェゼル(救急支援搬器)だったのだが、脚車止めが掛かっておらず、下りようとした反動で動いてしまったのだ。


“ち・・・力が入らない・・・”


ううう、と唸りながらも、不細工な体勢から這うようにして床にへたり込む。


醜畜(しゅうちく)め・・・!”


言うことを聞かない自分の身体に呪いの言葉を浴びせながら、アディが寝かされている隣のベッドの基台に手を掛け、必死に身体を立て起こす。まるで赤の他人のような体の感覚に、なかなか地に足が着かない。


「アディ・・・!」


何度その名を呼んだ事か。


ベッドの端に手を掛け、渾身の力を込めて身を起こす。たった40センチ程が、こんなに高いとは思わなかった。


「アディ・・・」


ベッドの上に両の腕を乗せて寄り掛かり、床を膝で擦るようにして、アディの枕元に寄る。


「ア・・・アディ・・・」


リサの目から、涙が滂沱として流れ落ちる。


フィジカル・ガーメントの左脇腹一面と左上腕と右腿に、どす黒く変色した血糊がべっとり付いていて、怪我の酷さが余りに痛々しい。


リサの菖蒲(あやめ)色の瞳に映る、血の気も薄いアディの頬に、恐る恐る手を、その指を伸ばす。震える中指がアディの肌に触れた瞬間、意に反して反射的に、びくっと離してしまった。


だが確かに、感触はあった。リサが再び、そっと指を伸ばす。


あの時はアディの身体全体が金色に輝いて、存在感を喪失していた──あれは夢だったのか。だが触れるその頬は、凍り付いているように冷たい。ひょっとしたこのまま冷え切ってしまって、二度と息を吹き返さないのではないか、そんな恐怖がリサを震え上がらせる。


“アディ、お願い、目を開けて・・・!”


リサが縋るように、アディの胸に顔を押し付ける。リサの時間が、そこから止まった。


目の前のアディに、何度この生命(いのち)を救われた事か──思い起こすのはその事ばかり。だから不思議と、自分の命を落とす事に怖れは感じない。それよりもっと恐ろしいのは、アディに付いて行けなくなる事だった。アディに手が届かなくなる事、アディが再び自分の手を握ってくれなくなる事、そして何よりアディを失う事を。


“なのにあたしは、アディを、アディを・・・!”


誰でも良い──アディを救けて! あたしからアディを奪わないで・・・!


リサが自分の無力を呪い、不安の淵に追いやられた、その刹那。


不意にリサの左腕の通信機が、着信を知らせるバイブレートした。


びっくりしたリサが、一瞬ひっと悲鳴を上げ、全身に鳥肌が立った。


束の間、身を縮ませていたリサだったが、通信と分かって慌てて袖口裏側に収納してあるイヤフォン(受話器)に指を走らせたが、何故か無い。どこかで落としたのか、どうしよう──激しく気を動転しさせたリサだったが、既に耳に挿してあるのに気付いた。リサはそれほど冷静さを欠いていた。


駆り立てられるようにして、リサが通信機の回線を切り替える。


「・・・サ! 聞こえる? カミング(応答して)!」


雑音に紛れがちな声が、その耳に飛び込んできた途端、リサは思わず叫んでいた。


「──ネルガレーテ・・・!」


大きく息を吸い込んだリサが、改めてはっきりと声を上げる。


「ネルガレーテ!」


「リサ? リサなのね?」ネルガレーテの怒鳴り声は噛み付いて来るようだった。「大丈夫? 現状を報告──」


「ネルガレーテ! アディが! アディが!」


居ても立っても居られず、リサが飛び付くように声を返す。


「リサッ? どうしたのッ? アディに何かあったのッ?」


「アディを・・・救けて・・・!」


押さえ込んでいた感情が、止めどなく溢れ出す。リサはただただ、救けて、アディを、と涙声に返すだけだった。聞こえているであろう、通信機の向こうのネルガレーテも、余りのリサの狼狽振りに驚いたのか、声を失っていた。


「アディが彼奴(あいつ)らに・・・彼奴(あいつ)らに・・・!」


「落ち着いてッ! 落ち着きなさい、リサ!」


後先考えないリサの涙声に、ネルガレーテが珍しく声を荒げた。


「ネ・・・ネルガレーテ・・・!」


通信機のある左カフ(袖口)を握り締め、手の甲を額に押し当て縋るようにリサは声を上げた。


「──救けて、アディを! お願い! あたし、何でもするから! アディを救けてッ!」


貴女(あなた)らしくない!」ぴしゃりと言い切るネルガレーテの口調は尖ってはいたが、叱責と言うより諭しに近い。「アディが危ないのなら、尚更落ち着きなさい! 貴女(あなた)はそれが出来る女性(おんな)でしょ!」


「ネ・・・ネルガレーテ・・・!」


「良い? リサ、良く聞いて」ネルガレーテが噛んで含めるように、ゆっくりと話し掛ける。「こっちには私とユーマ、ジィク、全員居るの。(みんな)で聞いているわ。だから心配しないで。必ず2人を救け出してあげるから」


リサが、うん、と啜り上げるように返事する。


「それでアディは、今何処に居るの?」


「──あたしの・・・目の前・・・」


漏れ出るようなリサの声は、震えて弱々しい。顔を上げたリサが、何とか涙を拭き上げる。


「生きてるのね? 息をしてるのね?」


ネルガレーテの声と言葉に少しばかり落ち着きを取り戻したリサが、改めてアディを見遣る。慌ててアディの左カフ(袖口)にある、バイタル(生存情報)計測モニターを操作したが、勿論うんともすんとも反応しない。


「それで、貴女(あなた)たちは何処? トトのラボ(研究舎)?」リサの無反応を肯定と取ったネルガレーテが、少し早口に尋ねた。「──ああ、いや、ラボ(研究舎)は噴氷で消し飛んだって言ってたわね」


ここで初めて、リサは気が付いた。


アディが寝かされているのがトリートメント(処置)用のオープン・ベッドで、ヘッドボードに備えられたコンソール(制御卓)が、アディのバイタル(生存情報)をモニターしている事に。


“──此処・・・は・・・”


改めて(はし)る緊張感に神経を澄ませ、リサが辺りをゆっくりと眺め回す。


約6メートル四方の素っ気無い部屋は、壁と床が全て人工素材で2人以外に誰もいない。自分が寝ていた、そして今アディが横たわるのは備え付けの医療看護用ベッドで、壁面の一部にはモニターが収まっていて、傍らには簡素なトラウマ(外傷)診断機と、空になった抽斗(ひきだし)が出しっぱなしの薄汚れたワゴン型のトリートメント収納がある。


“──メディカル・ステーション(救護医療処置室)・・・?”


微かに消毒薬の臭いが漂うものの、特別な医療器材や機器は見当たらず、どちらかと言えば単なるインファーマリ(救護室)に近い。奥には隣室に繋がるスライド扉があるので、そっちが本来のメディカル・ステーション(救護医療処置室)かも知れない。


戸口脇の簡素なデスク上には、リサの着ていた銀の耐寒ジャケット、それに開けられたハード・ランセル(硬質背鞄)と、その中身がぶちまけられていた。その直ぐ下の床には、マチェット(大屶)の斬撃で引き裂かれたアディの耐寒ジャケットが、同じく血塗れのオーバーオール・パンツと共にボロ雑巾のように丸めて捨てられてあった。見る影もないほどぐすぐすに崩れ砕けている、猩猩緋(しょうじょうひ)を配したアディのプロテクタ(胸鎧)も、躑躅(つつじ)色を配したリサの砕かれたプロテクタ(胸鎧)と一緒に、床の上に塵芥(ごみ)のように放り出してあった。2人のヘルメットが無いのは、どうやら氷表に捨て置かれたらしい。しかも2人ともチェスト・リグを脱がされ持って行かれているので、一目で武器と分かる類いの物は取り上げられているのは疑う余地が無い。


つまりは、体の良い軟禁状態だった。


本来のメディカル・ステーション(救護医療処置室)には、凶具になりそうなものがわんさとあるので、(わざ)とこちらに運び込まれたのだ。隣室への扉も、おそらくはロックが掛かっているに違いない。


「──リサ? どうしたの? リサッ?」


沈黙が続くリサに、さすがのネルガレーテも、少し不安げな声を返して来た。


彼奴(あいつ)らに・・・捕まった・・・と思う・・・」


まだ少し渾沌としている自らの記憶を、リサは順序立てて思い起こそうとした。


“誰かの手で、運び込まれたのは間違いない”


リサもアディも、あの氷上に居た。


“そしてあたしは、あのウーニーに触れた途端、気を失った──”


咄嗟にリサが、自分の左カフ(袖口)を覗き込む。時間を確認すると、定かではないものの気を失ってから、恐らく30分から40分は経っている。


だが誰に・・・? 答えは言わずとも知れている。


彼奴(あいつ)らだ・・・!”


サンドラ・ベネスと、ボリスの兄貴と呼ばれていた、ドラグゥン(傭われ宇宙艦乗り)崩れの族輩(やから)


彼奴(あいつ)ら・・・?」ネルガレーテが一呼吸おいてから、嫌悪感を込めて言葉を継ぐ。「ホワイトスネイクとか言う、元ドラグゥン(傭われ宇宙艦乗り)の連中ね?」


「レギオ(編団)名は知らないけど、サンドラが一緒だった」


「間違いないわ。ゴーダム救難の折りに()りあった連中だわ」ネルガレーテが通信の向こうで、うーむと小さく唸った。「──捕まったのね? 2人とも」


“なら此処は、あの氷地に着陸した宇宙艦・・・か・・・?”


リサが反射的に、表情を強張らせた。


「──彼奴(あいつ)らの宇宙艦、だと思う」


「宇宙艦の中なのね? 2人だけ? 他には誰も居ないの?」


「うん・・・」リサは改めて室内を見渡した。「恐らく、インファーマリ(救護室)だと思う」


背後にある、外への出入り口の際に、アンビュランス・ポッド(可搬救急対処台機)が、室内に押し込むようにして置かれてあった。ポッド自体は後から放り込んだようだが、透明なキャノピーが掛かる寝台の上には、ミニチュア・エンジェルが、ぐったりしたように縮こまっていた。リサが、ウーニーと呼んでいた、額に小さな斑紋のある個体だ。


“どうする・・・?”


逃げ出したいのは山々だが、アディのこの状態では、とてもでは無いが連れ出せない。それに頼りとする武器の類いもない。


「それでアディの様子は? バイタル(生存情報)を取れる?」


「──ガーメントのエンベンデッド(内蔵)・システムがイカれちゃってて分からないの」リサがベッドのヘッドボードのモニターに目を走らせる。「けど、ちょっと待って」


体温35.2、呼吸28、血圧77と45、心拍128。診断システムには、テラン(地球人)/ショック指数1.66で中度の出血性ショック、とシグナス・ガラクト(白鳥座域標準語)で表示されていた。


数値を読み上げるリサの言葉に、意識はないけど当面は落ち着いているのね、とネルガレーテが呟く。出血で血液量が減っているせいで体温とともに血圧が低下し、酸素供給量も低下しているため、嫌気性代謝が増えて呼吸数が上がっているのだ。


「それならアディは、アディなら大丈夫」


殊更に自信あり気なネルガレーテの言い草に、リサが小さく、うん、と返事する。


「さあ、何があったか、ゆっくり話して。(みんな)、こっちで聞いてるわ」


ネルガレーテのその言葉に頷くと、リサは、トトの私設ラボ(研究舎)を発見した(くだり)から順を追い、トトの向かった先を推測し、大きなアイス・ケイヴ(氷窟)で所でトトを発見したしたものの半ば結晶化していた事、更にはそこで見た巨大なワールド・ツリー(世界樹)とクローリング・エンジェル(這う天使)の事を口にした。


ネルガレーテ、ユーマ、ジィクの3人が、えっと驚く声がして、リサが小さく息を継ぐ。束の間耳を澄ませたリサだったが、問い返してくる気配が無いので、トトから強烈な救出拒否に()って、一旦引き下がざるを得なかった所から喋り始めた。


帰還途中、いきなり襲撃を受けてリトラが不時着してしまった事、それでも何とか反撃に転じたもののアディと(はぐ)れ、更には氷冠の巨木林の中での攻防中にミニチュア・エンジェルを救け、アディが駆け付けてくれたものの重傷を負っていて、そこを再び襲われて追い詰められ、サンドラとドラグゥン(傭われ宇宙艦乗り)の族輩(やから)が姿を見せ、アディが結晶化し掛かったた所までを、口調に悔しさを滲ませてリサは一気に話した。


「──それで、次に気がついたら、あたし、ベッドの上で・・・」


入り口脇に置かれたアンビュランス・ポッド(可搬救急対処台機)の中で、ぐったりして動かないミニチュア・エンジェルを見ながら、リサは言葉を継いだ。


「慌てて起きたら、隣のベッドにアディが寝てたの」


「それで・・・ディは?」ネルガレーテからの通信に、雑音が混じるようになった。「確かに、結晶化・・・たのよね・・・?」


「そう・・・だと思う」リサはアディの顔を覗き込みながら頷いた。「けど今は何ともない。ちゃんと手も握れるし、少し冷たいけど体温も感じられるわ」


「それ・・・救けた・・・ちっちゃ・・・・・・ンジェル・・・ウーニー・・・け? その所為(せい)・・・間違いない?」


「えっ? 何て言ったの? ネルガレーテ」


思わずリサが、雑音に眉を(しか)める。


「とにか・・・今から・・・ちへ行くわ」


ネルガレーテの声が雑音に紛れる度合いが、ますます酷くなる。


「・・・から良く聞い・・・あなた・・・のイェレ・・・娘な・・・・・・最後ま・・・・・・かった・・・なドラグゥ・・・血を引く・・・・・・ら時計は動か・・・・・・さ・・・る?・・・望を持つ・・・時間は止め・・・・・・いの」


「解った、ネルガレーテ!」半分以上聞き取れないネルガレーテからの勇気づけに、それでもリサがはっきり頷く。「(みんな)が来てくれるまで、とにかくアディはあたしが守るから・・・!」


そこまで言って、ついにネルガレーテからの返信が酷い雑音に掻き消され、全く聞き取れなくなった。


不意に訪れた静寂に、リサが改めてアディを見遣る。


“アディ、直ぐに(みんな)が来てくれるから・・・! それまでは、あたし、絶対に傍から離れないから・・・!”


酸素投与マスクをしたアディの顔を、リサはいつまでもじっと見詰めていた。



  * * *



「──とにかく、今からそっちへ行くわ」


雑音が酷くなる通信に、ネルガレーテが早口で捲し立てた。


傍で通信に聞き入るユーマとジィクも、思わず眉根を寄せる。


「だから良く聞いて。あなたは、あのイェレの娘なのよ。最後まで諦めなかった、偉大なドラグゥン(傭われ宇宙艦乗り)の血を引く娘なの。だから時計は動かし続けなさい。解る? 希望を持つなら、時間は止めちゃいけないの!」


そこまで言って、リサからの応信が雑音に紛れてしまい、ついに聞き取れなくなった。


「糞ったれ!」怒りを爆発させたジィクが、ソファの横を蹴り上げる。「よくもアディを・・・ッ!」


「あのリサが、あれだけ動揺するなんて・・・」ユーマも顔を曇らせた。「かなり酷い追い詰められ方をされたみたいね・・・」


「ベアトリーチェ!」


回線を切り替えたネルガレーテが、通信機に怒鳴った。


「リサとの通信回線、雑音が酷いわ! 何か問題が出てるの?」


「──いえ、通信機材とシステムには異状は起きていません」ベアトリーチェの落ち着いた声が、さも冷静になれ、と諭しているようだった。「恐らくはジャミング(通信妨害)か、自然の電波障害だと思われますが、どちらかは判別不能です」


面妖(おか)しい」ジィクが吐き捨てるように言った。「今更にジャミング(通信妨害)か?」


「ちょっと、嫌な予感がするわね」


ユーマの言葉に、ネルガレーテが改めてベアトリーチェに指示する。


「そっちからでも、通じない?」


ネルガレーテの言葉からやや間があって、再びベアトリーチェの乾いた声が入る。


「10秒呼び出しましたが、明確な応答は検知できませんでした。通信品質が極端に低下していて、ラジオ(音声回線)が繋がっていても、搬送波と雑音を区別できません」


ベアトリーチェの言葉に、ネルガレーテとユーマが顔を見合わせる。


「──何にしたって、直ぐに行くんだろッ? ネルガレーテ!」


ジィクが勇んで声を荒げた。





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 written by サザン 初人(ういど) plot featuring アキ・ミッドフォレスト

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