8話 ろ過装置
今のロンドンは汚い。物理的に。
まず、トイレがない。ある程度裕福な人たちは便所を用意して、肥溜めにおいて、人を使って定期的に管理しているため、王宮でも糞尿垂れ流しなパリよりは貴族においてはきれいだ。しかし、人を使うのには金がかかるので、金持ち以外は糞尿を垂れ流しである。汚い。
そして、上下水道がない。ロンドンでは水はテムズ川から直接とっているが、やっぱり汚い。テムズ川の水は見るからに濁っている。汚い。
せめて、飲み水だけは、きれいにしていきたい。そこで、テムズ川の水をろかして、そこから飲み水などをとるようなシステムを作っていきたい。
といっても材料と作り方は夏休みの自由研究レベルである。
上から順に大きめの小石、夏用の古着、炭、夏用の古着、小石。この逆の順番で木枠に入れる。木枠には下だけ蓋をして、下の蓋にはきりでいくつも小石が落ちない大きさの穴を入れておく。
古着なのは予算の都合だよ。作りやすいほうが良いのだ。
試しに侍女にテムズ川の水をバケツ2つ分取らせ、片方をこれらの入った木枠に入れ、もう片方をなにも入っていない木枠に入れる。
すると、簡易ろ過装置にいれたほうは少しましな色になった。
「...と夢でマリア様が私にお教えくださったのです。」
未来から来たからとか言えないので、こんな風に言っておく。
いやどっちも意味不明だけど。
簡易ろ過装置の実験を、父と母に見せる。
「おおおおお!すごいぞメアリー!!メアリーはまさに神の子だな!!」
「素晴らしい...本当に素晴らしいですね!!」
ろ過装置ごときで神の子とは言いすぎな気もするが、ほめてくれるのはうれしい。父上が私のことをほめてくれるなんていつぶりだろう。とにかくうれしい。
「えへ...えへへへ」
素の時に出る気持ち悪い照れ笑いを浮かべた私。
「王宮の水をこのろ過装置を大きくしたものに通してから使うのはどうでしょうか」
「それはよい考えだ!!早速予算を通すぞ!!」
1527年10月、1つめのろ過装置が完成し、王宮の水に使われることとなった。
信心深い者たちは、私のことを神の子とたたえたという。
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