7話 決意
今は1527年、6月。こんにちは、メアリーです。経済学についての講義も進み、いろいろなことを吸収しています。
あと、ネーデルラントに新メンバーが一人増えました。皇帝の姉、レオノール様ですね。ことあるごとにお菓子を食べさせてきたり、アドバイスやら自分語りやらしてくる、優しくて気の強い、お母さんっぽい感じの雰囲気をまとってる人です。マルグリット様はもう40代後半で、ハンガリーまで交渉に行って病気になり、その後回復しましたが、後継ぎが必要だろうということで皇帝陛下が送ったようです。
あと、案の定カール5世とフランソワ1世は戦争を再開しました。というかフランスがドイツに攻めました。まぁフランス負けたんですけど。あとドイツではプロテスタントの力がだいぶ強くなったり、大規模な農民反乱がおきてたりします。でもカールくん戦ってるので諸侯に丸投げです。多分帰ってきたら皇帝の力はまた落ちてるでしょう。
で、調子にのったアゴは、フランソワ倒すマンことブルボン公シャルルにフランスの味方をした教皇を攻めます。で、シャルルは戦死して、無秩序状態になります。アゴは戦費というものをろくに払っていなかったらしく、ローマでは文化人・芸術家・金持ちはかなりの人数殺され、文化財はじめ金になりそうなものはすべて奪われ、教会は破壊され、ローマは壊滅状態といってよい被害を受けました。
皇帝陛下はわざとじゃないもん、ローマがこんなひどい目にあって悲しいよ。などという声明を出していましたが、給料を払わないと治安が落ちるぐらい考えればわかると思います。多分彼の性格的に本当にわざとじゃなかったんだと思いますけど。ローマを襲うのも、多方面作戦を展開して戦線を広げすぎたせいで給料がろくに払えなくなるのも。多分無意識に使いすぎちゃうんですね皇帝陛下。
こんなん見てると歴史でヘンリー8世がやってる国教会設立はかなりの英断だと思うんだけど、それだと母上が離婚させられることになるのでかなり嫌なの。母は優しくて、強くて、誰よりも父を愛している人。アン・ブーリンになんか勝てるわけないはずなのに。
ところで、婚約の誘いが全然来ないのってレオノールに言ったら、そんなのおかしいっていってて、侍女に調べさせたら、私と婚約したいという申し出は一杯来てるけど、父が全部つぶしているんだって。
自分のことなのに、自分で考えられない。父の考えに従うしかない。
これっておかしくない?
もし、これが「常識」だというのなら、私はそれに従う気はない。
だって私は、未来の女王だもん。
歴史における父が国教会を設立したように、常識は変えることができる。
そう、権力があり、それに賛成する勢力がいれば。
知識は十分ではないかもしれないけど多く手に入れられた。
外の世界を知ることができた。
あとは自分で、動いていくしかない。
よし、こうなったら、イングランドに、帰ろう。
こうして、王女メアリーは、イングランドに帰国することを決意した。
1527年、8月。父の許可を取り付け、私はいまロンドンにいる。
評価やコメントなどをしていただけると大変うれしいです。