表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/16

5話 アン・ブーリンの疑惑

こんにちは、フランス語の単語の羅列をオーバーリアクションで補いつつなんとか会話させています。語学は同世代の中でも苦手だと思うメアリーです。マルグリット様の見習いとして実用的な学習、具体的には語学とか、マルグリットたちの仕事する様子の見学とかをはじめて2週間ほどがたちました。今は1526年、5月の末。


「予算...面倒....足りない....」


お金の計算はそれなりにできるものの、予算内に収めるのってとっても大変。どれも必要な気がして。


「予算内に収めようと考えられていて素晴らしいと思います。予算を考えずあれもこれも通してしまう方も多いですので。」


まじか。王様は裕福だから、そういう感覚がない人が多いのかも。そう考えると祖父は立派な人だったんだな。ドケチで有名だけど、真剣に予算について考えていることの裏返しでもあるしな。


「話は変わりますが、オスマン帝国のスレイマン1世が6万人をつれてハンガリー・ボヘミア王国のベオグラードにむけて侵攻するとのことです。こちらからも援軍を出すべきでしょうか。出すとしたらどれくらい出すべきでしょうか。ハンガリー・ボヘミア王国で出せる兵力は3万人だと王妃のマリア様が言ってました。」


歴史だとぼろくそに負けるんだよね。だから援軍は出すべきなんだけど、あんまりにも出しすぎるとフランスに背後を突かれる。そして今決断しないと、今すぐに出せる兵力じゃないと、間に合わない。ここからベオグラードまではフランスを突っ切っても2か月はかかるからね。


「私は出すべきと思う。この戦い、大切、本当に。2万人出す、最も良い。」


「そんなに出してフランスにでも攻められたらどうするんですか....」


「マリア様、皇帝陛下、あなたにとって、大切。ヨーロッパにとって、大切。キリスト教にとって、大切。フランス、戦いすぎた。フランス、ネーデルラント攻める、難しい。」


「2万人ですか...私もそのくらい出したいのですが最大兵力が5万人だと考えると、すこし多すぎる気がしますね。長丁場だし戦場が遠いので1万人を出そうと思います。」


とりあえず1万人の兵力を徴収することにしたらしい。私に聞いたのは最終確認で、もう腹は決まってたのだろう。まにあうか知らんが頑張ってほしい(他人事)。


--------------------------------------------------


ところ変わって、ここはロンドン。


「ところで、ハンガリー・ボヘミア王国からまた援軍要請がきているが、俺は無視すべきだと思う。オスマンはまさかイングランドまでは来るまい。」


「オスマンがイングランドに来たとしても、多分我々みんなこの世にはいませんよね。無視でいいでしょう。」


「その通りでございます陛下」


ということでイングランドは1人も兵を出さないことも決まった。


国王との議会が終わり、結婚解消反対派は1か所に集まった。


「アン・ブーリンは陛下と結婚なされようとしているが、これは無茶苦茶である。英邁なヘンリー8世陛下にはもちろんこの愚かな行為をやめていただく程度の理性はあると信じているし、その働きかけも行っていく。」


トマス・モアが低く、よく響く声で続ける。


「しかし、ヘンリー8世陛下に自発的にやめていただけなかった場合を仮定した対応もするべきだろう。」


『すると、どのようなことをするべきなのでしょうか?』


「私は、アン・ブーリンはフランスのスパイなのではないかと疑っています、確証はありませんが。」


レジナルド・ポールが続ける。かなり大胆な発言であったために、周りからはざわめきが聞こえてくる。


「確証はありませんが、私は状況からこうフランスは考えてもおかしくないと踏んでいます。まず、ご存じのように、皇帝陛下がスペイン王を兼ねており、非常に強大な権限を有しております。


加えて、長く続いたイタリア半島をめぐるフランスとスペインの争いは、スペインの大勝で終わりました。スペインの力が、皇帝陛下の力が、このままでは増すばかりであります。王妃様はスペインの出。なのでスペインに真っ向から敵対することは難しい。


フランスとしては、イングランドを日和見な国から、フランス寄りの国にしていきたい、少しでも味方を増やしたいという考えがあるはず。


そしてアン・ブーリンは長くフランス宮廷にいて、ロンドンに来たのは1525年の11月です。これはフランスが去年の2月に大敗してから作戦をたて、作戦を立て直すのに、ブーリン一家を懐柔するのに、十分な時間ではないでしょうか。


陛下が王妃様と結婚解消なされれば、スペインを敵に回すのは避けられない。日和見では済まなくなる。これは、この国の防衛にとって、大きな問題になる。


フランスとは友好関係になれるのなら良いのではないかと考える方もいらっしゃるかもしれませんが、スコットランドは代々フランス寄りの国です。加えて、今の陛下にはメアリー王女以外お子がいらっしゃらない。スコットランドとイングランドであれば、フランスはスコットランドを選ぶ可能性が高いです。つまり、イングランドはスコットランドとの戦いという点で、孤立する恐れがある。


賢い皆様であれば、お分かりいただけると信じております。」



評価やコメントなどをしていただけると大変うれしいです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ