0話 転生
始発は今日も混んでるよななどと他人事のように、眠そうな顔で自転車を走らせる。始発で学校に向かう。終電で帰る。ドアドアで片道100分。どうせ今日もその繰り返し。もう5時28分か。電車の発車はあと4分。次は30分後。このままいくと確実に遅刻。7時半の朝練に間に合わない。自転車をめいいっぱいこぐ。5時30分。このまま全速力でこげばまにあう。
次の瞬間、私は見たこともない城?にいたのだった。
私の名前は如月悠乃。32歳独身で子供べやに住んでる。東京の某私立中学校の社会の先生。吹奏楽部の顧問でもある。好きなことは歴史上の人物を調べること。萌えるんだよね。うん。
ってなんで自己紹介してんのよ。パニックにもほどがあるでしょ。
「ここは、どこ?私はだあれ?」
「お嬢様!!!おかえりなさいませ!!ここはロンドン、あなた様はイングランド王女メアリー様でございます!」
「今はいつ?」
「1523年の12月にございます!!!」
なんかテンション高いなこのやせたおばさん。か弱そうな見た目なのに、声のテンションがやたら高い。
ってそんなこと言ってる場合か!私は、王族に転生してしまったのか!転生って本当にあるんだ!まじか!ってイングランド王女メアリーって誰だ?いっぱいいるぞおい。
「というか、あなたは誰?」
「私はマーガレット・ポールと申します。よろしくお願いいたします、お嬢様!!」
ゆったりとやせたおばさんはひざまずいた。さっきのハイテンションはどこにいったんだ。
というか、お嬢様ってそんな丁寧に扱われるのか。なんとなくそういうイメージはあったけど、前世はお嬢様でもなんでもないただのアラサーだったから温度差にびっくりする。こういうのにも慣れていかないと、なのかな。いい意味で多少図々しいのがお嬢様、なのかなぁ。知らないけど。
周りの人によると、私は三日三晩高熱にうなされて会話できなかったらしい。
「私の父はなんて名前でしたっけ?」
「あなたの父上は、ヘンリー8世陛下でございます!!」
「えっはいくぁwせdrちゅjきおlp、ありがとうございます。」
「ありがとうございますはいらないです。王女らしくあってください。」
ということは私はヘンリー8世の娘メアリー、つまり後のメアリー一世かぁぁぁ。
前世の歴史では、父ヘンリー8世が母キャサリンを見捨ててアン・ブーリンと強引に結婚した結果、母と引き離され城に閉じ込められておかしくなって、カトリック狂徒の女王になって罪のないプロテスタントまで殺し、君主としてもよいところがなく、死後命日が祝日になるというろくでもないメアリーかぁ。(私の偏見が入ってます)いや、メアリーがくそなのの9割はヘンリー8世のせいだと思う。
目標は、家族仲良く生きること。幸せになること。ざっくりだけど、これが一番。
「・・・このようでは王女様は大変かも知れませんねぇ」
やせたおばさんはどこかへ行きながら、小さくつぶやいた。
私は誰なのか。どのような人間がいるのか。どのようなことが起こるのか。いろいろ問いただしたいが、あまり直接いろいろ聞くと疑われそうなので周りから聞いたり、人の話から情報を集めることにした。
今は1523年冬。ちなみに彼女は今7歳である。
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