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最後の夏  作者: 羅針盤
2/15

8月1日

ある夏の日、ひどい倦怠感と頭痛に襲われ起きた。

この症状から見るに軽い熱中症だろう。時計を見ると長針が真上から少し右に傾いていた、部屋は酷く蒸し暑かった。


「エアコン、タイマーにしてたかな」


蝉が鳴いている。

ミンミンゼミだかアブラゼミだかが猛烈に鳴いていた。

熱中症と蝉の声、まさしく夏の風物詩だ。


きっと天才と呼ばれる人はもっと早くから起きるのだろうと思った、でも私には無理だろう。壊滅的に早寝も早起きも出来ないからだ、いや出来ないのではなくやる気がないと言った方が正しいだろう。何かを成し遂げたい気持ちはあれど、そこまでの努力が出来ない。ただ、わがままを言って喚いているだけなんだ。


今日は何をしようか。いつもは何をしていたんだろうか。何故か夏休みに入ってからの記憶、いや今年は時期が遅れているなんて言われた梅雨入り宣言あたりからだろうか、全く何も覚えていないのだ。……それだけ何も無い平凡な生活を送っていたのだろう。



リビングには誰も居なかった。寂しさを紛らわすためにつけたテレビでは何だか有名らしい人が喋っていた。


「人生は何度だってやり直せる!何回だってスタートボタンを押していいんです!遅くなんて無い!」


吐き気がした。熱中症だろうか、それともこの胡散臭い夢物語の戯言のせいだろうか。


恵まれている人や神に愛された天才がいくら言っても凡人には響かない。実際にやり直せるものもあるかもしれない、でもスポーツや芸術分野などでは如何に幼少期に基礎作りをするかが大切であると私は思う。そのような分野では、いくらスタートボタンを押せどスタートラインに立とうと何も進まないのだ。


「結局、スタートボタンが無いのと同じだ」


水を1杯飲んだ。考えたくなくて、考えたら人生に

諦めたような気がしたから。

水は味がしなかった。でも何杯も飲んだ、紛らわすためか喉が異常に乾いていたからか、私には判断できなかった。



テレビではCMが流れていた。


「遊園地か」


そういえば今年の家族旅行は何処に行くんだろうか。私が受験の年で上2人は社会人、共働きの両親じゃ軽々と旅行に行けるようなものではないだろう。家族以外と行くとしたら……

有難いことに思い当たる人物がいた。彼に連絡をして次の記念日はそこに行こう。私の気持ちは前向きに晴れやかになった。

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